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紅蓮の虹・4 

くそったれ!

まだ会ったことのない、父親がそこに来ていない事実に俺はむかついた。


結局、自分では来ないで迎えの爺さんに、全てをおまかせの、父親と名乗る奴の面を拝みに行くことにした。

だってさ・・・行かないっていったら、迎えの爺さんがいい年こいて泣きそうな顔するから仕方なく。

「坊ちゃまをお連れしなければ、旦那様に合わせる顔がございません。」

とか言うし・・・

お涙頂戴の感動場面なんて、ぜったい作ってやらない。

何もいわずに、一発にらみつけることにした。

俺の瞳は、母親の血のせいか力を入れると茶色が濃くなって赤い色に見えるらしい。

赤い髪と赤い瞳。

施設長には何も言ったことないけど、ぐれていた頃俺にはもう1つの名前があった。

(夜遊びを不良と言うのならだけど)

二つ名は

「紅蓮の虹」(ぐれんのこう)

かっこいいんだか、悪いんだか。

まあ、いかにも喧嘩上等って感じで、できれば人前で名乗りたくない名前だね。

喧嘩だけは負けたことがないんだよな。

ボクサーとかがさ、よく言うじゃん。

相手のパンチが止まって見えるっての?

実は、動体視力がいいんだとおもう。

努力とか苦手で、ボクシングをやってみようとは思わなかったし、それよりも時々見る夢の中の風景の方がリアルだった。

ま、夢のことだし、この話は自分でも笑ってしまうような話なんで、施設で一番仲のいい百合にも話したことはない。







・・・それにしても、こんな風になるから別れは、苦手だ。

「虹にいちゃ~ん・・・えぐっ、えぐっ・・・」

「もう~、おまえらステレオで泣くなって。」

ぐずぐず鼻をすする、双子の一年生。

こいつらが一番俺になついてた。

他のやつらは、こいつらを影でこそこそいじめていたのが気に入らなくて、うっかり殴ったら寄ってこなくなった。

ぶち切れたとき、目が赤く光ったといって、まじで怯えてた。

面倒くさくなくていいけど、それでも天涯孤独のさびしさっての?

知ってるつもりでいたから、本当はお兄ちゃんは心の中ではおまえらの、良き理解者だったんだぜ。

「まあ、短いつきあいだったけど、困ったときにはたずねて来い。」

他のやつらの、ほっとしたような表情に、実は内心傷ついた俺。

なんだよっ!

少しは寂しがってくれ!

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