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紅蓮の虹・12 

様子を伺いながらの食事は、進まなかった。

何で、昨夜親父と名乗ったやつが、今日は若いんだ?

赤毛の女は、そのままなのに。

「わたしの名は、イレーネよ。」

目が合って、その女は言った。

「あなたが赤毛なのは、わたしの影響ね。」

「殉教者・聖セバスティアヌスの介抱をした聖女と同じ名前なの。」

ふ~ん・・・何だそれ。

知らないし~・・・


「わたしの虹、君の記憶はまだ封印されたままだ。」

「食事が終わったら、少しずつ飛んでみよう。」

「あ、俺。この後、学校に行きます。」

「せめて高校くらいは出ておかないと、けっこう世の中厳しいんで。」

正直言って、この脳みそがゼリーでできているようなつかみどころのないやつと、距離をおきたかった。

噛み合わない会話に疲れたし、新人戦の10月までにやるべきことはいっぱいあった。

「あなたは、虹に何の話もしていないの?」

イレーネが呆れたように、ため息を吐いた。

「時間がないのよ。」

「やっとここまで育ったのに、覚えてないなんてあんまりだわ。」

「わたしの虹は、わたしが近づくと逃げるんだ・・・」

今朝の話?

何で、そんなに傷ついた顔をするわけ・・・?

何?

俺、そんなにひどいことをした?

「きっと、わたしは嫌われてるんだと思う・・・」

「どうすればいいんだろう・・・」

うつむくなよ~・・・


「わたしの虹は、きっと、わたしと一緒にいたくないんだ・・・」

「やっと、会えたのに・・・」

ぽとりと、スープに涙が落ちた。

え~い、もうっ!

わかったよっ!

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