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落日の記憶 6 

公家華族として何不自由のない暮らしをしてきた、柏宮男爵家の二男、柏宮基尋は思い詰めた顔をまっすぐに父親に向けていた。

「もう、全てお話下さい。お父さま。基尋(もとひろ)は、何を聞いても驚きません。」

「……しかし。」

「よく考えた上で、お返事いたします。帝大病院に入院しているお兄さまの病院代のお支払いに、蔵の骨董品を二束三文で手放したのでしょう?お金が必要なのは基尋にもわかります。玄関の古伊万里の大皿もいつの間にか、無くなっていましたし……」

事実だった。ほっと大きな息を吐くと、柏宮子爵は大きなマホガニーの椅子に腰を落とした。それも豪奢な英国家具で、わざわざ鎌倉彫の職人を英国に留学させて、現地で作らせたものだ。
当たり前に湯水のごとく消費してきたこれまでの付が一気に噴出し、襲いかかってきているような気がする。大切な嫡男は戦地で大怪我をし気鬱のまま現在も入院中だ。元の健康な体に戻れるとはとても思えない。長女は成金に嫁がせた。そして、可愛いばかりの二男を預けないかと言って来たのは……
柏宮子爵は顔を覆った。

「お前をやりたくない……」

「お父さま。」

「例えお前が年齢よりも聡明なのだとしても、基尋はまだ元服の年にも満たない子供ではないか。あそこは華やかに見えるが……この世の地獄だよ。……男相手に男が身を売る苦界、本郷宮がお前をやらないかと言って来たのはそういう場所だ。」

基尋はその場に伏すと、父に向かって手を付いた。

「基尋は、大江戸に参ります。本郷の伯父さまにお願いしてください。どうか……このとおりです。」

「基尋……」

「お母さまの年始のお着物を、いつも通り三越で買うお約束をなさったのでしょう?お母さまに泣かれると、基尋も困ります。」

「しかし、徳子には何と話をすればいいだろう。」

「基尋は、しばらく欧羅巴(よーろっぱ)に遊学させたとおっしゃってください。」

そして父は、言われるままに基尋の小さな手を、本郷宮の手に渡した。
それほど、生活手段を知らない柏宮家は切羽詰まっていた。





(`・ω・´)←家で一番しっかり者の、基尋。12歳。

(´・ω・`) 「徳子になんて言えばいいだろうねぇ。」

親が駄目っこだと、苦労するねぇ……(ノд-。)こんなに大変なのに、新しい晴れ着作ろうとする母ちゃんってどうなの。
(〃 ̄∇ ̄)ノ「あら、いけなかったかしら~?」

本日もお読みいただき、ありがとうございます。
がんばれ、基尋くん。(*⌒▽⌒*)♪


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