嘘つきな唇 6
幸せな余韻に浸りながら、頬を染めた里流がゆっくりと部室に戻ってゆく。
その時、自転車置き場の影から、火を噴く嫉妬の視線で背中を見つめる少年がいたのに、里流(さとる)は気付かなかった。
そこにいたのは、彩の遠縁でもある陸上部の織田朔良(おださくら)だった。
体育館裏の陸上部の部室に行くには、自転車置き場の脇を通らなければならない。
二人の交わす言葉を聞き、その場に立ちつくした織田朔良にとって、彩(ひかる)は幼いころから特別な存在だった。
「……なんで、あいつなんかと……どこがいいんだ、あんなやつ。ぼくの方が、ずっと前からお兄ちゃんの事、好きだったのに。」
以前、織田彩との話に出てきた遠縁の少年は、幼いころから彩を慕っていた。
進路も迷うことなく、彩の後を追ってこの高校に入学してきたくらいだ。部活は違っていたが家も近く、時々は夕ご飯も一緒に食べる家族ぐるみで付き合いのある親戚のお兄ちゃんだった。自分はいつも彩の特別な存在だと、朔良は勝手に思っていた。
だが近所の親戚のお兄ちゃんとして接してきた彩にとって、朔良は弟のような存在でしかない。朔良の熱い思慕は、野球三昧の彩には届いていなかった。
高校に入学して時々交わす会話の中で、野球部に昔の朔良のように身体の弱い下級生がいて、気になるんだという話を聞いた。だが、まさか話に出てきた後輩が彩の意中の相手になっているとは考えもしなかった。
彩の隣の自分のいるべき場所に、誰か違う奴が居て頬を染めて顔を見上げている。
そして、朔良は信じられない光景を目にした。
彩の方から里流に贈られたぎこちないキス……
「あーっ、もうっ……」
部室のドアを思い切り閉めて、苛立ちを隠さない朔良に、部室に居た陸上部員が驚いて顔を上げた。
「どうした?朔良姫、ご機嫌斜めだな。」
「うるさい!」
ガタイの良い上級生が、朔良を引き寄せると抱きすくめた。腕の中で朔良は逃れようともがいたが自由にならない。
「邪険にするなよ。可愛い顔が台無しだ。慰めてやろうか?」
「ぼくに構うな!放せっ。」
「俺にそんな口を聞くな、朔良姫。輪姦すぞ。」
「や……だぁ。」
思わず小さく悲鳴を上げて身を捩った朔良の腕が掴まれ、強引に膨らんだ下肢にあてがわれた。
「や……だったら。放せ……」
粗暴な島本なら、言葉通りにやりかねないと朔良は知っている。
出会った当初も、朔良は酷い目に遭わされていた。
当てた朔良の手を強引に上下させると、ぐんと島本の持ち物の質量が増えた。
「3日もたまってんだぜ。抜いてくれよ、朔良姫。ほら……」
朔良の手を掴んだ一級上の島本が、強張る朔良の耳元で低く笑った。何とか必死に逃れようとした朔良だったが、力では叶わない。抱きすくめられたまま朔良は島本の囁きにがくりと首を垂れ、抗うのを止めた。
「なぁ。野球部の「お兄ちゃん」を、ここへ呼んで来てやろうか?朔良姫がどんなふうにすれば乱れて哭くのか、一度ゆっくり見せてやってもいい。見てもらうか?」
「い……やだ。……やめて……言う事聞くから……」
「やっと素直になったな。気の強い朔良姫をいじめるのも好きだけどな、俺は従順な方がいい。逆らうなよ。」
震える声が、その場にがくりと屈した。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
彩のことをずっと慕っていた親戚の少年、朔良は不良と呼ばれる上級生の手の内にあるのです。
かわいそうにね~(´・ω・`) ←書いといて
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「お兄ちゃん……」
屈折した登場人物は好きなので、ちょっといじめっ子になってしまいます。(〃゚∇゚〃)
その時、自転車置き場の影から、火を噴く嫉妬の視線で背中を見つめる少年がいたのに、里流(さとる)は気付かなかった。
そこにいたのは、彩の遠縁でもある陸上部の織田朔良(おださくら)だった。
体育館裏の陸上部の部室に行くには、自転車置き場の脇を通らなければならない。
二人の交わす言葉を聞き、その場に立ちつくした織田朔良にとって、彩(ひかる)は幼いころから特別な存在だった。
「……なんで、あいつなんかと……どこがいいんだ、あんなやつ。ぼくの方が、ずっと前からお兄ちゃんの事、好きだったのに。」
以前、織田彩との話に出てきた遠縁の少年は、幼いころから彩を慕っていた。
進路も迷うことなく、彩の後を追ってこの高校に入学してきたくらいだ。部活は違っていたが家も近く、時々は夕ご飯も一緒に食べる家族ぐるみで付き合いのある親戚のお兄ちゃんだった。自分はいつも彩の特別な存在だと、朔良は勝手に思っていた。
だが近所の親戚のお兄ちゃんとして接してきた彩にとって、朔良は弟のような存在でしかない。朔良の熱い思慕は、野球三昧の彩には届いていなかった。
高校に入学して時々交わす会話の中で、野球部に昔の朔良のように身体の弱い下級生がいて、気になるんだという話を聞いた。だが、まさか話に出てきた後輩が彩の意中の相手になっているとは考えもしなかった。
彩の隣の自分のいるべき場所に、誰か違う奴が居て頬を染めて顔を見上げている。
そして、朔良は信じられない光景を目にした。
彩の方から里流に贈られたぎこちないキス……
「あーっ、もうっ……」
部室のドアを思い切り閉めて、苛立ちを隠さない朔良に、部室に居た陸上部員が驚いて顔を上げた。
「どうした?朔良姫、ご機嫌斜めだな。」
「うるさい!」
ガタイの良い上級生が、朔良を引き寄せると抱きすくめた。腕の中で朔良は逃れようともがいたが自由にならない。
「邪険にするなよ。可愛い顔が台無しだ。慰めてやろうか?」
「ぼくに構うな!放せっ。」
「俺にそんな口を聞くな、朔良姫。輪姦すぞ。」
「や……だぁ。」
思わず小さく悲鳴を上げて身を捩った朔良の腕が掴まれ、強引に膨らんだ下肢にあてがわれた。
「や……だったら。放せ……」
粗暴な島本なら、言葉通りにやりかねないと朔良は知っている。
出会った当初も、朔良は酷い目に遭わされていた。
当てた朔良の手を強引に上下させると、ぐんと島本の持ち物の質量が増えた。
「3日もたまってんだぜ。抜いてくれよ、朔良姫。ほら……」
朔良の手を掴んだ一級上の島本が、強張る朔良の耳元で低く笑った。何とか必死に逃れようとした朔良だったが、力では叶わない。抱きすくめられたまま朔良は島本の囁きにがくりと首を垂れ、抗うのを止めた。
「なぁ。野球部の「お兄ちゃん」を、ここへ呼んで来てやろうか?朔良姫がどんなふうにすれば乱れて哭くのか、一度ゆっくり見せてやってもいい。見てもらうか?」
「い……やだ。……やめて……言う事聞くから……」
「やっと素直になったな。気の強い朔良姫をいじめるのも好きだけどな、俺は従順な方がいい。逆らうなよ。」
震える声が、その場にがくりと屈した。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
彩のことをずっと慕っていた親戚の少年、朔良は不良と呼ばれる上級生の手の内にあるのです。
かわいそうにね~(´・ω・`) ←書いといて
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「お兄ちゃん……」
屈折した登場人物は好きなので、ちょっといじめっ子になってしまいます。(〃゚∇゚〃)
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