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Café アヴェク・トワで恋して31 

生活に疲れた母親は、不安定だった。
久しぶりに会った長男を、別れた夫と勘違いするほど酒に酔っていた。
下着姿の酔った母に、兄は眉をひそめた。
化粧も崩れ、美しかった過去の面影はない。

「洋貴を取り戻しに来たんじゃないのね。あなた、黒崎の両親に言われてきたんじゃないのね?」
「俺は、あなたの息子です。もう27になりましたよ、お母さん。それに黒崎の家は、俺ではなく弟が継ぐことになりました。俺は祖父から生前贈与でもらった財産で、洋貴を大学まで進ませてやりたいと思っています。なりたいものがあるのなら、話は違ってくるけど、そうじゃなければ学歴はあったほうがいいから。」
「でも、この子、まともに中学も行ってないのよ。」
「知ってます。中学の先生に聞きました。偏差値も驚くほど低かった。ただ、まともに通っていない割には、不思議と成績がいいので、これからもう少し頑張れば何とか一番偏差値の低い公立高校に入れるかもしれないと、先生がおっしゃっていましたよ。な?洋貴。」
「うん……頑張ってみる……」

結局、兄は弟のために家庭教師を探し、尾上は何とか公立高校に入学できた。
忙しい兄は、弟のために時間を割き、何度も相談に乗った。
そのころの尾上は、兄と会って話をするのが楽しかった。
色をなくして灰色だった世界に、兄が少しずつ色を戻してくれるような気がする。
勉強の合間に、差し入れてくれたケーキにぱくついた。

「うっま!おれさ、テレビとか週刊誌とか、ほとんど見てなかったの。お兄ちゃん……兄貴さ、結構有名人なんだね。驚いた。俺の友達も、名前知ってたよ。」
「運も良かったんだよ。全部実力じゃない。他にも腕のいい職人は世界中にいるからね。」
「でもさ、一流になるとストレスもたまるんだろ?昔から、兄貴は名家の自慢の長男で、いつだって王道を行くって感じだったもの。大丈夫?ある日突然、パンクしたりしない?」
「そうだなぁ。心配しなくても、大丈夫だよ。大人になると、ストレスは上手く発散できるようになるんだ。ガス抜きはうまくできているんだよ。」
「ふ~ん……」
「俺もお前が思っているような、聖人君子じゃないってことさ。女の子が喜ぶお菓子を作っていても、中身はどうやって好きな子を落とそうかと考えてたりする。男なんて、誰でもスケベ根性の塊だろ。違うか?」

弟は爆笑した。

「ウケる。兄貴のこんなうまいケーキ食ったら、どんな子だってすぐ落ちるよ。凄いよなぁ。俺も兄貴みたいに才能があれば良かったのにな~。」

一瞬、兄の顔が曇ったのに尾上は気づかなかった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
すぐそこに見えている着地点が遠い……気がします。
しかし、このちんの書く母親って、だめなやーつが多い気がする……(*つ▽`)っ)))や~ね。←見本

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