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紅蓮の虹・1 

ものごころついた時には、すでに「施設」ってところにいたので、いまさら、自分を可哀想とも何とも思わないよ。

俺がここにいるのは、腹がへったら飯を食う、みたいなあたりまえのことさ。

うんと小さな頃には、ある日山のようにプレゼントを抱えた、黒い服の上品な爺さんがあらわれて・・・

今風の言葉でいうなら、ほら「執事」っての?

そんな夢を見たことも有った。

「ぼっちゃま、お探ししました。」

とか、いいながらその場に、泣きくずれたりして。

なんて思ったこともあったけど、そんな夢見る子供の時代は終わった。

おれは、もうすぐ16歳になる。






経費削減とやらで、まるで金のない俺の「施設」に帰宅したときなぜだかその日は、食堂にクーラーがついていた。

おどろいたよ。

部活帰りの汗が、嘘みたいに快適に引いた。

テーブルの上には、料理自慢の食堂のおばちゃんが、気合を入れたてんこもりの料理。

「ああ、誰か養子の口が決まったのか・・・」

ここでは、お別れの日には、たいていそいつが好きなものが並ぶんだ。

誕生日には、ケーキくらい食うよって、見栄はってよそではいうけど、本当は一個分のショートケーキを買う金をもらって、一人食うだけの話だ。

まるごと一個のケーキで、クラッカーを鳴らしてお誕生日おめでとうなんて、少なくともここに住んでる俺等には関係ない。

それが、ここでの現実だった。

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