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紅蓮の虹・2 

あ、失礼しました。

俺ってば、まだ名乗っててなかった。

「はじめまして、秋月虹(あきづきこう)です。」

秋月は当時の市長さんの苗字で、虹は拾われたその日、大きな虹が出てたからっていうよくある話。

おどろくほど大きな虹で、片方の足元が切れていて空に向かう大きな動物のようだったって、施設長さんがいってた。

そんな風に、けっこう安易につけられた名前だけど、実はわりと好き。

人名には珍しいのかな。

いつも、一度で覚えてもらえるみたいだよ。

両親の顔も知らないんで、本当のところは分からないけど、少なくとも戸籍上の名前はこれだ。





・・・あれ・・・?

いつもなら、小学生連中がにぎやかにしているはずなのに、今日はやけに静かだ。

やっぱり、なんかあるんだ・・・

俺は、別れは唐突なほうがいい。

肩寄せあってるわけじゃないけど、一緒にいる時間があったやつと別れるのはときどき寂しい。

ときどきってのは、やっぱり相性ってのはだれにもあるもんだからさ。

いなくなってせいせいしたなんて言ってても、いなくなった空間は、わりに切ないものだからさ。

寂しがり屋って、わけじゃないけど。








施設長が、俺を呼びに来た。

「虹君に、お客さまだ。」

俺・・・?

「盆と正月が一度に来た」、ごちそうにしばしの別れを告げ・・・じゃなくて、俺に会いに来たというのは誰なんだ?

県大会で大活躍した、俺をスカウトに来たのか?

いやいや、肉離れで、ベンチにいた俺をスカウトに来るわけないか。

「失礼します。」

「おお~・・・!」

おお~って、外人みたいなリアクションだな・・・って外人さんだ。

「ナ・・・ナイス、ミーチュウ・・・?」

なんだか、ねずみの国の住人みたいだ、俺。

「お探し致しました。」

ちょっと、待て。

がきの頃の夢の中にあったぜ、こういう台詞。

次は、確か・・・

「お坊ちゃま」?

ほらね。

しかも、仕立てのいいスーツ・・・黒だぜ。

執事、来た~!

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