小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・87
頭の良いのは、佐伯さんの方じゃないかと言ったら、もっといっぱい褒めてくれる?と、楽しげに笑った。
「ねぇ、ナンパしてもいいかな?松原君、今、お茶する時間ある?」
「あるよ。ちょうど喉乾いてたんだ。ぼくのよく行く喫茶店でいい?すぐ、そこだから。」
長時間居座って、本を読んでも何も言わない行きつけの喫茶店が、すぐ近くにあった。
「ここなんだ、どうぞ。」
ドアベルが、客の来店を告げるが店主は中々やってこない。
「え・・と。マスターはいないな。パチンコなのかな。しょっちゅう、お客さんをほったらかしていなくなっちゃうんだよ、ここのマスター。」
この佐伯さんは不思議なんだけど、小さな頃から女の子になりたかった、ぼくの初恋の人だったりする。
ショートカットで一見少年のような快活な瞳で、佐伯さんはそのころの面影を残していた。
子供の頃は、佐伯さんは学級委員で、ぼくはいろいろと助けてもらったんだ。
きっと、見えないところでも色々力になってくれてたのだと思う。
昔。養護の先生が 、松原さんには、四之宮くんと佐伯さんがいるから大丈夫ねって、言ったのを思い出した。
「・・・あれ?何かちょっと会わない間に、佐伯さんの印象変わったかな?」
うふふ・・・と、含み笑いをした。
「すごいなぁ、松原君、気が付いちゃったんだ。」
ほら、ここ・・・と指で差した先に、昔有ったはずの大きなほくろが無くなっていた。
「あ、ほくろがなくなってる。」
「取ったの。小さな頃からすごく悩みの種だったけど、厚みがなかったから案外取るのは簡単だったのよ。」
手術痕もなく、皮膚科で数分の処置だったと佐伯さんは笑った。
「すごく綺麗になってる。良かったね。」
「松原君こそ、相変わらず綺麗・・・って、ごめん。いくら何でもこんな言い方、おかしいね。」
「いいよ。佐伯さんはぼくには特別な人だったから、許してあげる。」
「あ~、そんな上から目線で言うんだ。」
「うん。」
小中学校の同級生と言うだけで、会話は面白いほどスムーズに進んだ。
ドアベルがからんと鳴って、やっとマスターが帰って来た。
ぼくは佐伯さんのために、サンドイッチとコーヒーを頼んだ。
「ほら、四之宮君って、居たじゃない?いつも松原君を保健室に運ぶとき、そうっとお姫さま抱っこしてた大きな彼。」
「うん。」
「この間、たまたまテレビのスポーツ見てたら、オリンピックの最有力選手だって出ててすっごく驚いたのよ。」
そうなんだよ、頑張ってるみたいだね、時々メールが来るよと言うとそっか~、今も仲良しなんだと懐かしむような顔をした。
「四之宮は、ぼくのたった一人の大切な親友だからね。」
佐伯さんはくすりと笑ってあっさりと告げた。
「親友なのね。恋人じゃないんだ。」
「中学のときにね、松原君と四之宮君、男同士で付き合ってるんじゃないかって噂になってたの知ってた?」
「知ってたよ。笑っちゃったけどね。何だか、クラスの女子が面白がって漫画とか描いて回してたでしょ?」
大学ノートに描かれた、鉛筆書きの漫画が女子の間を回っていた。
「見せてもらったことあるけど、ぼくは漫画の中で、しょっちゅう四之宮に襲われてた。オンナノコみたいに。」
「段々、エスカレートして、終いにはらぶらぶ・・・だった?」
お願いだから、それはもう忘れてよね、と言って佐伯さんが苦笑した。
「あ、そうだ。あの子ね、あの漫画描いてた子、本物の漫画家になったのよ。すごいでしょ?」
「え?そうなの?だったら、今度ぼくモデル料の請求に行こう。」
「それは、止めた方がいいかも。下手すると、モデル料の代わりに、松原君もっとひどい話のモデルになるかもよ。今、彼女が描いてるのみたら、松原君気絶すると思う。」
「へぇ・・・何だか気になるなぁ。」
「男の子同士の恋愛ものなの。知ってるかしら、BLっていうんだけど。」
「う~ん、聞いたことはあるかもしれないけど、わかんないなぁ。」
取り留めのない会話が、妙に心地よくていつの間にか数時間も経ってしまった。
突然、はっと気が付いて、時計を見る。
「あ、大変!」
「ごめん、松原君。わたし、家庭教師のバイトが有るからもう行くね。時間押してた。」
「あ、うん。こちらこそ、何か懐かしくて引き止めちゃって、ごめん。」
メアド教えて貰ってもいいかな、と言うのでぴっと交換していたとき、佐伯さんが、会えて良かった~・・・と何気なくつぶやいた。
みぃくん、いつの間にか大学生にっ!(@-@)・・・いきなり、成長加速、トップギア。
お医者様になる道を模索し始めた、みぃくん。洸兄ちゃんの影響もあるようです。
人生にはいくつかの転機がありますけど、今がそのときのようです。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
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「ねぇ、ナンパしてもいいかな?松原君、今、お茶する時間ある?」
「あるよ。ちょうど喉乾いてたんだ。ぼくのよく行く喫茶店でいい?すぐ、そこだから。」
長時間居座って、本を読んでも何も言わない行きつけの喫茶店が、すぐ近くにあった。
「ここなんだ、どうぞ。」
ドアベルが、客の来店を告げるが店主は中々やってこない。
「え・・と。マスターはいないな。パチンコなのかな。しょっちゅう、お客さんをほったらかしていなくなっちゃうんだよ、ここのマスター。」
この佐伯さんは不思議なんだけど、小さな頃から女の子になりたかった、ぼくの初恋の人だったりする。
ショートカットで一見少年のような快活な瞳で、佐伯さんはそのころの面影を残していた。
子供の頃は、佐伯さんは学級委員で、ぼくはいろいろと助けてもらったんだ。
きっと、見えないところでも色々力になってくれてたのだと思う。
昔。養護の先生が 、松原さんには、四之宮くんと佐伯さんがいるから大丈夫ねって、言ったのを思い出した。
「・・・あれ?何かちょっと会わない間に、佐伯さんの印象変わったかな?」
うふふ・・・と、含み笑いをした。
「すごいなぁ、松原君、気が付いちゃったんだ。」
ほら、ここ・・・と指で差した先に、昔有ったはずの大きなほくろが無くなっていた。
「あ、ほくろがなくなってる。」
「取ったの。小さな頃からすごく悩みの種だったけど、厚みがなかったから案外取るのは簡単だったのよ。」
手術痕もなく、皮膚科で数分の処置だったと佐伯さんは笑った。
「すごく綺麗になってる。良かったね。」
「松原君こそ、相変わらず綺麗・・・って、ごめん。いくら何でもこんな言い方、おかしいね。」
「いいよ。佐伯さんはぼくには特別な人だったから、許してあげる。」
「あ~、そんな上から目線で言うんだ。」
「うん。」
小中学校の同級生と言うだけで、会話は面白いほどスムーズに進んだ。
ドアベルがからんと鳴って、やっとマスターが帰って来た。
ぼくは佐伯さんのために、サンドイッチとコーヒーを頼んだ。
「ほら、四之宮君って、居たじゃない?いつも松原君を保健室に運ぶとき、そうっとお姫さま抱っこしてた大きな彼。」
「うん。」
「この間、たまたまテレビのスポーツ見てたら、オリンピックの最有力選手だって出ててすっごく驚いたのよ。」
そうなんだよ、頑張ってるみたいだね、時々メールが来るよと言うとそっか~、今も仲良しなんだと懐かしむような顔をした。
「四之宮は、ぼくのたった一人の大切な親友だからね。」
佐伯さんはくすりと笑ってあっさりと告げた。
「親友なのね。恋人じゃないんだ。」
「中学のときにね、松原君と四之宮君、男同士で付き合ってるんじゃないかって噂になってたの知ってた?」
「知ってたよ。笑っちゃったけどね。何だか、クラスの女子が面白がって漫画とか描いて回してたでしょ?」
大学ノートに描かれた、鉛筆書きの漫画が女子の間を回っていた。
「見せてもらったことあるけど、ぼくは漫画の中で、しょっちゅう四之宮に襲われてた。オンナノコみたいに。」
「段々、エスカレートして、終いにはらぶらぶ・・・だった?」
お願いだから、それはもう忘れてよね、と言って佐伯さんが苦笑した。
「あ、そうだ。あの子ね、あの漫画描いてた子、本物の漫画家になったのよ。すごいでしょ?」
「え?そうなの?だったら、今度ぼくモデル料の請求に行こう。」
「それは、止めた方がいいかも。下手すると、モデル料の代わりに、松原君もっとひどい話のモデルになるかもよ。今、彼女が描いてるのみたら、松原君気絶すると思う。」
「へぇ・・・何だか気になるなぁ。」
「男の子同士の恋愛ものなの。知ってるかしら、BLっていうんだけど。」
「う~ん、聞いたことはあるかもしれないけど、わかんないなぁ。」
取り留めのない会話が、妙に心地よくていつの間にか数時間も経ってしまった。
突然、はっと気が付いて、時計を見る。
「あ、大変!」
「ごめん、松原君。わたし、家庭教師のバイトが有るからもう行くね。時間押してた。」
「あ、うん。こちらこそ、何か懐かしくて引き止めちゃって、ごめん。」
メアド教えて貰ってもいいかな、と言うのでぴっと交換していたとき、佐伯さんが、会えて良かった~・・・と何気なくつぶやいた。
みぃくん、いつの間にか大学生にっ!(@-@)・・・いきなり、成長加速、トップギア。
お医者様になる道を模索し始めた、みぃくん。洸兄ちゃんの影響もあるようです。
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