【狂おしい秋・学園の狂騒・7】
文化祭当日、父兄席に木本と松本がいるのを見て、周二は噴きそうになった。
普通の親父にしちゃ、えらく目立つな、あそこ・・・と思ったら木本だったのだ。
どうやら蒼太に絶対来てねと、誘われたらしいのだが木本の姿を学校でみるのは周二が小学校以来なので、どこか新鮮だった。
多くの来賓の前で壇上に上がっても、生徒会長、樋渡蒼太は揺るぎのない自信に溢れていた。
おそらく、挫折と言う文字を知らないでここまで来たのだろう。
年上の恋人との仲も、今は順風満帆に見えた。
隼は結局、まるで芝居心もないので、お姫さまの恰好だけさせられて、希望者と写真を撮・・・られまくっていた。
「白雪姫」
「シンデレラ」
「赤ずきん」
「眠り姫」
30分単位の数々のコスプレで、沢木隼はまるで本物の儚い女の子の演じるお姫さまになって、そこにいた。
さすがに生徒会長の童話の朗読は当然却下となり、周二は密かに胸をなでおろした。
演劇部の女子の手でメイクされた隼の顔は、どうみても毛穴もない肌理の細かい陶器(ビスク)で出来た人形のようで、アイラインは引いたものの自前睫毛はばさばさ、マスカラを塗っただけだというと、他の女子が驚いて卒倒しそうになっていた。
口を聞かなければ、オートマタドール(超絶精巧な中世の機械人形)だといっても誰も不思議には思わないだろう。
石華石膏(アラバスタ)の肌とは、こういうのを言うのだろうと思う。
薄くラメ入りパウダーをはたいただけなのに、なめらかな艶のある透き通るような白い肌に、滲んで浮くようにほんの少しの赤みがほんのりと恥らうように差す。
密かに周二も驚いていた。
薄化粧一つで、隼が生きた人形になってしまった・・・
衣装を着る前そうっと腕の中に抱えたら、思い切り妄想の中で、あんあん言わせてしまった。
周二の妄想の中で、シンデレラになった隼は散々に虐められた。
かぼちゃの馬車の中で、二人の御者に前後から弄られ、もう舞踏会で王子さまに逢えないと涙ぐんだ。
「いや、いや。王子さまに一目お会いしたかったのに・・・」
「どうしよう。こんなに感じやすくては、ダンスも踊れない。」
奪われたパニエの下の、ぴんくのぞうさんが悲しみの余り、薄い涙を零した。
逃げようとして、ドレスが足に絡まり捕らえれて、再び御者の腕の中に倒れこんだ。
「いやあっ。周二、く・・・ん・・・たすけ・・てっ。」
「・・・やめた。あいつのコスプレこれ以上見てたら俺、萌え死ぬわ・・・。」
執事は喫茶室に逃亡した。
「ふう~・・・」
疲れてため息を小さくついた隼だったが、並んだ人にもうお終いです、とは口にできなかった。
慣れないコンタクトに目が疲れて、とうとう今は外してしまって、殆ど周りが見えていない。
金髪のかつらをつけて、フリルやリボンの貸衣装を着ると、女の子にしか見えないが隼には自分が見えていなかった。
どれだけ可愛くて、どれだけ嗜虐心を煽るかも・・・。
一緒に並ぶはずの女子が、全員沢木くん一人で良いんじゃないの~といって、逃亡してしまった。
「え・・・?ぼく、独りなの?こんな大勢並んでいるのに、誰か一緒に居てよ~・・・」
誰しも、引き立てられるのはごめんなのだ。
さすがに我に返った、周二くんなのでした。
隼ちゃんと写真を撮れるなら、文化祭も楽しそうです。いいなぁ・・・この、がっこ。
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
(pioさま鼻血ぷぷっの美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。きゅんきゅんの綺麗お子さまです~。おひめさまモードの隼ちゃんです。想像だけで、萌え死にそうです。
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