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紅蓮の虹・50 

「おはようございます。」


爺さんは、山田右衛門作の記憶を今も持っているのだと思う。


だって、いつもすごく大切そうに旗を眺めているもの。


聞きたかったが、勇気がなかった。


「こちらで、お召し上がりになりますか?」


「下りるよ。」


階下の食堂に向かった。


「爺さん。名前で呼ぶなら、なんて呼べばいい?」


「さあ、執事でしたら普通はセバスチャンとお呼びになるのではないでしょうか?」


「執事がみんなセバスチャンて名前だったら、おかしいよ。」


執事は、みんなセバスチャン。


アルプスに住む犬は、みんなヨーゼフ。


笑っちゃうよ。


「左様でございますか?」


悲しみを乗り越えた人はみんな強いのかな・・・?


逃げ帰った俺を、誰も責めなかった。


「山田さんて呼んでもいい?」


「・・・あいにく、この顔には合いませんから、爺さんでよろしゅうございます。」


「うん。」



顔を合わせるのは気まずい・・・。


何が気まずいって、コウゲイの腕の中でガキのように泣き疲れて眠ってしまったってことだ。


俺は、焦りまくっていたが、コウゲイは何の意にもかいさない風だった。


百合は運転手と、学校へ行ったそうだ。


良かった、この泣きはらした顔を見られなくて。


「さて・・・・」


「わたしの虹には、何か言うことがおありかな?」


コウゲイはやっぱり、少しいじわるだった。


「四郎には優しいくせに・・・。」


俺はすねた。

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