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ずっと 君を待っていた・4 

「長いもの」嫌いの原因の一端について、ぼくがとうとう知ったのは、一週間後が16歳の誕生日という日だった。

親父が、いきなり俺に向かって深々と頭を下げた。

「頼む。何も言わずに、本家の祭礼に出席してくれ。」

「わゎっ・・・何?親父、改まって、どうしたの?」

頼まれなくても、本家の祭礼があるのはちょうど春休み中だし、遊びがてら行く気でいた。

「すまん、しかも言おうと思ってこれまで言えなかったことがある。」

何時になく、真剣な親父の顔にちょっぴり怖じた。

「・・・何なの?」

「実はな、おまえは稲田家から、本家の海鎚(みづち)の家に差し出される人身御供なんだ。」

「へ?・・・ごくうって・・・?ぼく、西遊記の猿なの。」

あ、顔色が変わったってことは、図星なのか?

「あほうっ!おまえは、どんだけ馬鹿なんだ・・・それは、孫悟空だろうがよ。」

「だったら、何だよ?ぼくに分かるように、きちんと説明してよ。」

親父は、お袋の方を向いてこんな馬鹿で、本家の方は本当に大丈夫なのかと、問うた。

「俺は、責任持てないぞ。他に代わりのものはいないんだぞ。」

「あら、何も知らないほうが初々しく見えるってこともあるでしょう?いっそ、あなた好みに染めてくださいってのも、有りだわ。」

あのー・・・ちょっと、よろしいですか。

夫婦の楽しげな会話に、口を挟むのもどうかと思うのですが・・・その台詞、どういう意味ですか?

二人は突然、黙り込んでしまった。

空気が不自然に、重いです。
ぼくには話が何も見えなくて、聞きなれない単語におたおたしてしまう。

とにかく。

学校には親戚で法事が有ると連絡し、部活の休みを貰って、明日からの春休みに本家に行くことになった。
そういえば、本家だとか分家だとか、知ってはいるけど余り深く聞いたことがなかった。
子供の頃に、木しか生えていない何もない田舎に行った記憶はあるんだけど、あれがそうだったのだろうか。

まあ、着替えは、スウェットとパーカーでいいかな。
本家に何があるのか・・・
それ以上考えるのをやめて、久しぶりの家族の小旅行に、ぼくの気分はすこしばかり浮かれていた。







最初書いてたとき「俺」でしたので「ぼく」に変えているのですが、時々不自然に残っていたりします。
どうぞ、生暖かい目で見守ってください。見直すたびに見つけてます。←見落としの天才っ。

お読みいただきありがとうございます。
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2 Comments

此花咲耶  

鍵付きコメントさま

退屈しないで、読めてますか~(*⌒∇⌒*)♪

2011/01/27 (Thu) 20:22 | REPLY |   

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2011/01/27 (Thu) 12:02 | REPLY |   

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