星月夜の少年人形 20
「ああぁーーーっ・・・」
優成に穿たれた優月の身体が、のけぞって跳ねた。
優成が引き寄せて胸を合わせると、お互いの鼓動も一つになるような気がする。
優生の首に両腕を巻き付けた優月が、優成の胸に頭をこすり付けた。腕を上げたら、脇に薄く骨が透けるほど華奢な優月だった。
体を入れ替え、そっと負担を掛けないように、優月を抱え上げた。
「優成さん・・・優成さん・・・ぼく・・・。」
優月が、「どうしよう・・・」と、同じ言葉を口にした。
優月の中に猛った物を埋め込んだまま、優成が静かに大きく息を吐く。何を困っているのかと、優成が聞いた。
優月は何も答えなかったが、顔を埋めた胸に温かい涙が零れて来るのを感じた。
「優月君。・・・辛かった?ごめんね。そっとしたつもりだったんだけど、怖かったかな・・・。」
胸でかさと髪の毛が揺れた。
「・・・気・・・もち、良かった・・・。初めてだったのに、感じちゃったって・・・変なのかな・・・?」
「そんなことあるものか。感じ易い子で、僕はすごくうれしいよ。ありがとう、優月君。」
「ぼくも。優しくしてくれて、ありがとう・・・。」
濡れた瞳を上げて、優月ははにかんでふっと笑った。何もできない自分が、優成を満足させられたなどとは思わないけれど、少なくともがっかりさせなかったみたいだ。何もわからなくても大切に扱ってくれたのは分かる。それが嬉しかった。
事後に違和感がなかったと言えば嘘になるが、抽送にさえどれだけの時間をかけてくれたか、白々と明けかけた空が物語っている。
天井に回る星座が、違う色に見えた。
*******
優月は優成の胸で、束の間ぐっすりと眠った。
優成が痿えた分身をそっと引き出したことも、温かいおしぼりを作って、身体中あちこち拭いてくれたことも、強張った全身を確かめるようにさすってくれたことも、気を失ったような眠りに落ちた優月は知らなかった。
優成は、素直で可愛い年下の恋人を大切に抱えて腕を伸ばし、二人で見上げた一夜限りの星月夜のスイッチをオフにした。
やがて、目の下に薄い隈を作った優月が軽い寝息を立て始めてから、優成もやっと眠りについた。
ここ最近、煮え湧いたような難事に優成の会社は右往左往していたが、きっと乗り切ってみせると眠る優月に誓った。月曜になったら、再び神経の磨り減る交渉が続くだろう。
優月がくるりと寝返りを打つと、確かめるように優成の腕を抱きこんだ。
優成さん・・・と呼ばれた気がする。
額に張り付いた髪を払って、そっと口づけた。しんとした静寂の中で、丸くなって眠る優月に手を伸ばそうとして止めた。
肌のあちこちに散る、薄紅の吸痕に大人気なかったな・・・と、小さく呟いた。
甘い汗の匂いを嗅いで、今だけは優月を手に入れた幸せに酔おうと思う。
*******
物音を感じて、目を開けると優成の腕の中に優月はいなかった。
「優月君?」
ただ一夜の夢のように、優月の姿は優成の目の前から消えた。荷物が無いのを認めて、慌てて、携帯に手を伸ばす。
「優成さん?・・・もう、起きた?あのね、昨日ベランダで電話してた人と、逢う約束してるから行って来るね。」
「今、どこ?送ってあげるよ。身体きついだろう?」
電話の向こうで、くす…と、優月が笑った気がする。
「ちょうど、真下だよ。ベランダから、のぞいてみて。」
なるほど、下でぶんぶんと小さく手を振る優月が見えた。
「ゆっくり休んでね。行ってきます。」
優月は手を振って、どこかぎこちなく出かけて行った。
それから先、優成が優月の携帯に何度電話しても、元々持ち主などいなかったように、誰も出ることはなかった。
・・・笑顔だけを残して、優月は優成の前から消えた。
(ノ_・。) 「優成さん・・・さよなら・・・。」
(´・ω・`) 「優月くん。どこへ行くの・・・?」
拍手もポチもありがとうございます。
励みになりますので、応援よろしくお願いします。
コメント、感想等もお待ちしております。 此花咲耶
優成に穿たれた優月の身体が、のけぞって跳ねた。
優成が引き寄せて胸を合わせると、お互いの鼓動も一つになるような気がする。
優生の首に両腕を巻き付けた優月が、優成の胸に頭をこすり付けた。腕を上げたら、脇に薄く骨が透けるほど華奢な優月だった。
体を入れ替え、そっと負担を掛けないように、優月を抱え上げた。
「優成さん・・・優成さん・・・ぼく・・・。」
優月が、「どうしよう・・・」と、同じ言葉を口にした。
優月の中に猛った物を埋め込んだまま、優成が静かに大きく息を吐く。何を困っているのかと、優成が聞いた。
優月は何も答えなかったが、顔を埋めた胸に温かい涙が零れて来るのを感じた。
「優月君。・・・辛かった?ごめんね。そっとしたつもりだったんだけど、怖かったかな・・・。」
胸でかさと髪の毛が揺れた。
「・・・気・・・もち、良かった・・・。初めてだったのに、感じちゃったって・・・変なのかな・・・?」
「そんなことあるものか。感じ易い子で、僕はすごくうれしいよ。ありがとう、優月君。」
「ぼくも。優しくしてくれて、ありがとう・・・。」
濡れた瞳を上げて、優月ははにかんでふっと笑った。何もできない自分が、優成を満足させられたなどとは思わないけれど、少なくともがっかりさせなかったみたいだ。何もわからなくても大切に扱ってくれたのは分かる。それが嬉しかった。
事後に違和感がなかったと言えば嘘になるが、抽送にさえどれだけの時間をかけてくれたか、白々と明けかけた空が物語っている。
天井に回る星座が、違う色に見えた。
*******
優月は優成の胸で、束の間ぐっすりと眠った。
優成が痿えた分身をそっと引き出したことも、温かいおしぼりを作って、身体中あちこち拭いてくれたことも、強張った全身を確かめるようにさすってくれたことも、気を失ったような眠りに落ちた優月は知らなかった。
優成は、素直で可愛い年下の恋人を大切に抱えて腕を伸ばし、二人で見上げた一夜限りの星月夜のスイッチをオフにした。
やがて、目の下に薄い隈を作った優月が軽い寝息を立て始めてから、優成もやっと眠りについた。
ここ最近、煮え湧いたような難事に優成の会社は右往左往していたが、きっと乗り切ってみせると眠る優月に誓った。月曜になったら、再び神経の磨り減る交渉が続くだろう。
優月がくるりと寝返りを打つと、確かめるように優成の腕を抱きこんだ。
優成さん・・・と呼ばれた気がする。
額に張り付いた髪を払って、そっと口づけた。しんとした静寂の中で、丸くなって眠る優月に手を伸ばそうとして止めた。
肌のあちこちに散る、薄紅の吸痕に大人気なかったな・・・と、小さく呟いた。
甘い汗の匂いを嗅いで、今だけは優月を手に入れた幸せに酔おうと思う。
*******
物音を感じて、目を開けると優成の腕の中に優月はいなかった。
「優月君?」
ただ一夜の夢のように、優月の姿は優成の目の前から消えた。荷物が無いのを認めて、慌てて、携帯に手を伸ばす。
「優成さん?・・・もう、起きた?あのね、昨日ベランダで電話してた人と、逢う約束してるから行って来るね。」
「今、どこ?送ってあげるよ。身体きついだろう?」
電話の向こうで、くす…と、優月が笑った気がする。
「ちょうど、真下だよ。ベランダから、のぞいてみて。」
なるほど、下でぶんぶんと小さく手を振る優月が見えた。
「ゆっくり休んでね。行ってきます。」
優月は手を振って、どこかぎこちなく出かけて行った。
それから先、優成が優月の携帯に何度電話しても、元々持ち主などいなかったように、誰も出ることはなかった。
・・・笑顔だけを残して、優月は優成の前から消えた。
(ノ_・。) 「優成さん・・・さよなら・・・。」
(´・ω・`) 「優月くん。どこへ行くの・・・?」
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