星月夜の少年人形 14
思わず優月が「あ…っ。」と声を漏らす。
それだけで、鼓動が跳ねて胸が痛くなる。今顔を見られたら、絶対真っ赤になっていると思う。耳まで血が上って行く気がした。
羽藤に付いてマンションの一室に入った。重い扉を押すと、毛足の長いラグの上に、月明りで作られた窓枠の影が落ちている。その向こうに広がる夜景に、思わず優月は声を上げた。
「星雲みたいだ、すっごい夜景!うわ~・・・」
ベランダに走り出た優月は眼下に広がる夜景を、まるで銀河のようだと喜々として見つめていた。
「すごいなぁ・・、この間ニュースに出てたハッブル宇宙望遠鏡が撮した星雲の写真みたいだ。何だっけ・・・確か、マゼラン星雲?」
「へぇ…優月君は星に興味があるの?」
「興味があるというか、見上げればそこにあったから何となく・・・。一人の時間が長かったから、星の図鑑を片手に、星座を覚えたりしました。」
「テレビっ子じゃなかったんだ。」
「テレビ・・・うち、母と二人暮らしの時は、なぜだか無かったんです。貧乏だったからかな~・・・くしゅっ・・・」
家にテレビがなかったのは、本当は違う理由だったのだが二人ともそこには気が付かなかった。晩春の夜風は冷たく、優月は小さくくしゃみをした。
優月の薄着に気が付いた羽藤が、部屋へ入るように促した。
「おいで。星が好きならいいものを見せてあげる。少女趣味だって笑わないでくれよ。」
「羽藤さんの少女趣味?なんだろう・・・?想像がつかないなぁ・・・。」
呼ばれて続き部屋に入った優月は、「わぁ~~…」と歓声を上げた。
リビングの天井に広がる満天の星空に、思わず魅入ってしまう。ぽかんと口を開けて天井を見つめる優月だった。
「羽藤さん、ぼくもね。あんな家庭用プラネタリウムって、いつか欲しいなぁって思ってました。すごく、羨ましい。」
「そう?良かった、子供っぽいって笑われるかと思ったよ。」
「お小遣いで買うには、ちょっと高かったから、塔矢にサンタさんに頼めって言ったんですけど、塔矢はアンパンマン列車が欲しくて計画は失敗しちゃったんです。で、今は戦隊ものが好きだから、ぼくの野望はきっと今年も叶わないな。」
目を輝かせて、ゆっくりと回る銀河に夢中になっている優月は、あれが薔薇星雲かなぁ・・・などと言いながら、ずっと天井を見つめている。
「羽藤さん、星月夜って知ってる?」
「知ってるよ。・・・なんか、不思議だね。絵も好きなの?優月君の好きな物って、僕とかぶっている気がするね。星月夜はゴッホ?」
「ううん、ゴッホの星月夜って綺麗だけど、すごく寂しいから・・・。ぼくの好きな絵には、夜空に恋人同士が浮かんで抱き合っているの。白い馬がいて、幻想的な絵なんだけど…タイトル違ってるかな。あと、薔薇の花とかもあったかな・・・?」
羽藤が検索する画面を、じっと見つめた優月は「あぁ。この青い色だ…」と、呟いた。
「でも、ちょっと思っているのとは違うみたい。勘違いかな・・・。」
画面に広がった、マルクシャガールのリトグラフには、透明な青い夜空に新郎新婦が抱き合っている姿が描かれていた。
ヾ(。`Д´。)ノ 羽藤:「ここまで来て、まだキスひとつってどういうこと~~~~!!」
(ノ_・。) 優月:「やっぱり、羽藤さん、ぼくみたいな子供じゃだめなんだ・・・。」
(`・ω・´) 羽藤:「君がいいんだ。」
(*⌒▽⌒*)♪優月:「ぼくも~~!」
♪ψ(=ФωФ)ψ此花:「ふふふふ・・・・」←ろくなやつじゃない。
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