星月夜の少年人形 17
余りに子供っぽい行動をする優成に、優月はとうとう吹き出してしまった。
その場で笑い転げる優月を、見守る優成の視線はとても優しい。
「そんなに、おかしいかなぁ・・・。」
「だって、羽藤さん・・・。優成さんったら大人のくせに、ぼくが塔矢にするようなことをするんだもの。」
優成は不満げに優月に告げた。
「塔矢くんの事、可愛くてたまらないって言ってたじゃないか。可愛いから抱き上げたり、おんぶしたりするんだろ?」
それはそうですけど、一緒にはなりませんよ・・・と、笑う優月の方がまだ優位に立っていた。
しょんぼりとした優成が、叱られた塔矢と同じ顔をしている気がする。
「優成さんのやることがあまりに、ぼくの持ってたイメージと違うから、ちょっと驚いた。」
「そう?どんなイメージ?」
「若いのに自信家で、仕事がすごく出来て挫折を知らない感じ・・・かなぁ。」
「とんでもない。毎日、挫折ばかり味わってるよ。優月君が飯を食おうって言ってくれなかったら、きっと飲み屋でくだ卷いていたと思うな。仕事のトラブルで、正直気持ちが折れかかっていたから助かった。」
思わず、「トラブル」と口にしてしまう。
優成はボディソープを泡立てると、立たせた優月を洗い始めた。耳の横から喉元、腕を手繰り脇腹へとスポンジが伸びる。
肩を掴まれ軽く向きを変えられると、背中を上下し始めた。
「ちょっとだけ、足開いて。」
「え・・?あっ・・・」
内腿を滑り昇ってくるスポンジを思わず、手で押さえた。
「優成さん。ぼく、自分で洗います。だめです、あの・・・だめです。」
狼狽する優月に、余裕の表情で眺める優成が悪戯っぽくささやいた。
「ね。・・・あそこ、おっきくなった?」
優月は聞くなり黙りこくって、もう一杯肩から湯を掛けると、さっさと湯船を後にしようとする。
「優月君?」慌てて、優成が後を追った。優月は入り口でバスローブを引っかけたまま座り込んでバスタオルに顔を埋めていた。
焦った優成が、ぐしゃぐしゃと濡れ髪をかき混ぜる。大人気なかったと、自分でも思う。
真摯に、「好きです」と告げた自分を子ども扱いされて、優月はきっと傷ついていると優成は思っていた。
「ごめん・・・。ごめんね。優月君、君をがっかりさせるつもりはなかったんだよ。あんまり反応が瑞々しかったんで、ついからかうようなことをしてしまった。悪かった。」
バスタオルに顔を埋めてしまった優月の顔を上げさせようと、優成は必死だった。こちらも、バスローブを引っかけたままの姿で脱衣場に座り込んでいた。
「優月君・・・?ねってば、怒ってる?」
ふと顔だけを横にして、見つめる優月の目が、くっと三日月になり優成は思わずほっとした。
「怒ってなんて・・・嬉しかっただけです。どうしていいか分からなくなっただけ・・・だってね、優成さんはお父さんの会社の社長さんで、憧れの人だったから。急に親しくなったでしょう?いいのかなって・・・。」
「いいのかなは、僕の台詞だよ。嬉しくて舞い上がってしまったのは、僕の方だよ。12歳も上ってね、結構、僕の年になるとシビアだからね。」
優月は今、16歳だ。優生は一回り上で、28歳になる。今は若いつもりでいるが、話も合わなくなるだろうしね…と、優成は経験上の話をした。
「例えばだけど、優月君が48歳くらいになってね、ある程度の役職にもついて、がんがん働き盛りの時、ぼくは定年を迎えるんだよ。ちょっと切ないね。」
「そんなこと、ぼくは考えないよ。」と優月が、真剣に向き直った。
「優成さんは、ぼくにとってすごく尊敬できる大人だよ。お父さんもね。年齢なんて、重ねるほど経験値が上がるってことでしょう?そう思ってるけど…違う?」
優成は優月の頭にバスタオルを乗せると、ぐしゃぐしゃと滴を取りバスローブごと抱きしめた。
「優月君、ありがとう。勇気が出たよ。」
「勇気・・・?」
「君にきちんと一緒に居てくださいって言う、勇気だよ。」
優成が手を伸ばした優月の風呂上りの肌に、髪から落ちた滴が転がり床に落ちた。
(´・ω・`) 遅くなりました。
優成と優月の時間は、ずいぶんゆっくりと流れているようです。
いよいよ・・・かな~。
拍手もポチもありがとうございます。
励みになりますので、応援よろしくお願いします。
コメント、感想等もお待ちしております。 此花咲耶
その場で笑い転げる優月を、見守る優成の視線はとても優しい。
「そんなに、おかしいかなぁ・・・。」
「だって、羽藤さん・・・。優成さんったら大人のくせに、ぼくが塔矢にするようなことをするんだもの。」
優成は不満げに優月に告げた。
「塔矢くんの事、可愛くてたまらないって言ってたじゃないか。可愛いから抱き上げたり、おんぶしたりするんだろ?」
それはそうですけど、一緒にはなりませんよ・・・と、笑う優月の方がまだ優位に立っていた。
しょんぼりとした優成が、叱られた塔矢と同じ顔をしている気がする。
「優成さんのやることがあまりに、ぼくの持ってたイメージと違うから、ちょっと驚いた。」
「そう?どんなイメージ?」
「若いのに自信家で、仕事がすごく出来て挫折を知らない感じ・・・かなぁ。」
「とんでもない。毎日、挫折ばかり味わってるよ。優月君が飯を食おうって言ってくれなかったら、きっと飲み屋でくだ卷いていたと思うな。仕事のトラブルで、正直気持ちが折れかかっていたから助かった。」
思わず、「トラブル」と口にしてしまう。
優成はボディソープを泡立てると、立たせた優月を洗い始めた。耳の横から喉元、腕を手繰り脇腹へとスポンジが伸びる。
肩を掴まれ軽く向きを変えられると、背中を上下し始めた。
「ちょっとだけ、足開いて。」
「え・・?あっ・・・」
内腿を滑り昇ってくるスポンジを思わず、手で押さえた。
「優成さん。ぼく、自分で洗います。だめです、あの・・・だめです。」
狼狽する優月に、余裕の表情で眺める優成が悪戯っぽくささやいた。
「ね。・・・あそこ、おっきくなった?」
優月は聞くなり黙りこくって、もう一杯肩から湯を掛けると、さっさと湯船を後にしようとする。
「優月君?」慌てて、優成が後を追った。優月は入り口でバスローブを引っかけたまま座り込んでバスタオルに顔を埋めていた。
焦った優成が、ぐしゃぐしゃと濡れ髪をかき混ぜる。大人気なかったと、自分でも思う。
真摯に、「好きです」と告げた自分を子ども扱いされて、優月はきっと傷ついていると優成は思っていた。
「ごめん・・・。ごめんね。優月君、君をがっかりさせるつもりはなかったんだよ。あんまり反応が瑞々しかったんで、ついからかうようなことをしてしまった。悪かった。」
バスタオルに顔を埋めてしまった優月の顔を上げさせようと、優成は必死だった。こちらも、バスローブを引っかけたままの姿で脱衣場に座り込んでいた。
「優月君・・・?ねってば、怒ってる?」
ふと顔だけを横にして、見つめる優月の目が、くっと三日月になり優成は思わずほっとした。
「怒ってなんて・・・嬉しかっただけです。どうしていいか分からなくなっただけ・・・だってね、優成さんはお父さんの会社の社長さんで、憧れの人だったから。急に親しくなったでしょう?いいのかなって・・・。」
「いいのかなは、僕の台詞だよ。嬉しくて舞い上がってしまったのは、僕の方だよ。12歳も上ってね、結構、僕の年になるとシビアだからね。」
優月は今、16歳だ。優生は一回り上で、28歳になる。今は若いつもりでいるが、話も合わなくなるだろうしね…と、優成は経験上の話をした。
「例えばだけど、優月君が48歳くらいになってね、ある程度の役職にもついて、がんがん働き盛りの時、ぼくは定年を迎えるんだよ。ちょっと切ないね。」
「そんなこと、ぼくは考えないよ。」と優月が、真剣に向き直った。
「優成さんは、ぼくにとってすごく尊敬できる大人だよ。お父さんもね。年齢なんて、重ねるほど経験値が上がるってことでしょう?そう思ってるけど…違う?」
優成は優月の頭にバスタオルを乗せると、ぐしゃぐしゃと滴を取りバスローブごと抱きしめた。
「優月君、ありがとう。勇気が出たよ。」
「勇気・・・?」
「君にきちんと一緒に居てくださいって言う、勇気だよ。」
優成が手を伸ばした優月の風呂上りの肌に、髪から落ちた滴が転がり床に落ちた。
(´・ω・`) 遅くなりました。
優成と優月の時間は、ずいぶんゆっくりと流れているようです。
いよいよ・・・かな~。
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