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星月夜の少年人形 16 

くるりと腕の中で向きを変えて、優月が明るく声を張った。

「羽藤さん・・・あ、優成さん。あのね、何かもう涙でぐしゃぐしゃになっちゃったから、ぼくお風呂に入りたい。いいですか?」

「そうだな。電気も点けずに、星を眺めているのもいいけど、取りあえず風呂に入って着替えようか?」

優成が立ちあがると背中の温もりが無くなって、優月は体温が奪われたような気がした。
風呂場へ湯を張りに行った優成が戻らないのを確かめて、優月は携帯を握り締めベランダへ出た。
優月の守りたいもの全てが、優月の出方次第だと秘書と名乗った男は言った。

「もしもし・・・。神村優月です。」

「はい、榊原です。」

名乗るなり、逢った時とはまるで豹変するように、温かみのある声に変わった。

「ああ、お待ちしていましたよ。優月君。」

猫撫で声が耳元に、響く。決心がついたんですねと、先を読む言葉に苛立ちを覚えたがどうしようもなかった。

「お話を伺います。まるで話が見えないから、詳しいことはそれから考えます。ですから・・・あの、お父さんの会社に迷惑をかけるようなことは、しないでください。」

耳障りな高い声で、顧問弁護士は笑った。

「お父さんの会社の事は、少し動きを止めただけですから、こちらが手を放せばすぐにうまくいくでしょう。社長という人がずいぶんやり手のようで、二の手、三の手と打って来るから、こちらもいささか対応が大変でしたよ。」

「優月くんの出方によっては、仕方がないからしばらく入院してもらうしかないかな・・・と、考え始めていたところです。良かったですね、間に合って。」

「なっ・・・!羽藤さんに酷いことをしたら、一生許さないから!どんなことをするつもりか知らないけど、ぼくの家族と周囲の人たちを、絶対に巻き込まないと約束しないと、ぼくにも考えがありますから。欲しい後継者もこの世からいなくなれば、どうしようもありませんよね?」

優月の声色に、尋常でないものを感じたのだろう。手のひらを返したように、電話の向こうの男は口調を変えた。

「守るべきものは違いますけど・・・そんなところ、会長によく似ておいでになりますね。では、ご足労をお掛けしますけど、社の方へおいでになってください。迎えは必要ですか?」

「自分で行きます。子供じゃありませんから。」

まだ、向こうは何かを話しているようだったが、優成の気配を感じて優月は通話を終えた。
何も知らない優成が、バスタオルを片手に手招きをする。

「優月君、電話だった?」
「あ、はい。学校の友達に。」

「もう、湯を張ったから入っちゃって。」と、風呂に誘う優成に、優月は精一杯の勇気を振り絞った。

「・・・い・・・い・・っしょに、入りま・・・せん・・・?」

「わっ~・・・!」

いきなり、パーカーの裾からすぽんと抜かれて、優月はその場にしゃがみ込み完熟トマトになってしまった。変な悲鳴を上げてしまって、自分でもおかしくなる。

「優成さん・・・。もう、子供みたいだ。」

「男なんて、誰だっていつまでも子供さ。一緒にお風呂に入るんだろ?ぼくは、今ジム通いしてて良かったって、すごく思ってるよ。優月君に、腹の出た所見せたくないからね。」

そんな風に言う優成は、父の言うには学生時代は大学でもボールを蹴っていたくらいのサッカー好きで、今も休みには暇を見つけて、友人とフットサルに出かけているらしい。アスリート並みに締まった優成の身体に、優月の方が恥ずかしくなってしまった。
細いばかりで、筋肉も薄くしか乗っていない身体を見られたくはなかった。
逃げるように湯船に浸かった優月を優成が出ておいでと誘う。

「おいでよ。洗って上げる。」

「や、です~・・・」

焦れた優成が、湯船に入るといきなり優月の脇に腕を入れ、ざっと持ち上げてしまった。

「うわ・・わ・・・、優成さん、な、何やって!」

じたばたした優月を見上げて、余裕の優成だったが足を滑らせて優月ともども、湯船に落下した。






ヾ(。`Д´。)ノ 優月:「もう~~~、いい大人が何してるの、優成さんったら!」

(*⌒▽⌒*)♪ 優成:「いや~、あんまりうれしかったんで、ついね~。もう少し、太ったほうがいいね。」

( *`ω´) 優月:「ぷんっ!」

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4 Comments

此花咲耶  

びびさま

> 優月くん、決意の一言!頑張ったね、凛々しかったよ(/ _ ; )

(*⌒▽⌒*)♪「頑張りました~」←優月
>
> 束の間のいちゃこらタイム。
> なんか甘くてちょっと切ないなぁ…
> 完熟トマトな優月くん、たまりませんな~ψ(`∇´)ψ

経験ないので優月は、どきどきです。ちょっと初めてのエチに時間がかかっています。
お互いを理解するのって、むつかしいですね~
>
> 羽藤さん、よろしくお願いしますねm(_ _)m
>
> 続き楽しみにしてます(*^_^*)

コメントありがとうございました。頑張ります。(*⌒▽⌒*)♪

2011/05/27 (Fri) 22:10 | REPLY |   

びび  

優月くん、決意の一言!頑張ったね、凛々しかったよ(/ _ ; )

束の間のいちゃこらタイム。
なんか甘くてちょっと切ないなぁ…
完熟トマトな優月くん、たまりませんな~ψ(`∇´)ψ

羽藤さん、よろしくお願いしますねm(_ _)m

続き楽しみにしてます(*^_^*)

2011/05/27 (Fri) 10:25 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

けいったんさま

> 辛い現実の中での 甘い 夢の一夜を ☆彡
> 心が 暖かく優しくなる思い出になって欲しいな。(*>人<)

思い出すたびに、きゅんとなる一夜であって欲しいです。(`・ω・´)←テクに問題あり。
>
> 愛する人たちを 守ろうとする優月が カッコイイ♪

非力ですが、一生懸命です。
>
> 優月と優成の ”優”の漢字が 同じなのは 偶然?
> それとも 何か 含みが?

(°∇°;) …見つかってしまった…くそぉ…
ほんとはね、何か理由を付ける気だったの。(ノ_・。) ばれちゃった~

(*^ω^)ノ" byebye☆

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/05/27 (Fri) 08:51 | REPLY |   

けいったん  

辛い現実の中での 甘い 夢の一夜を ☆彡
心が 暖かく優しくなる思い出になって欲しいな。(*>人<)


愛する人たちを 守ろうとする優月が カッコイイ♪

優月と優成の ”優”の漢字が 同じなのは 偶然?
それとも 何か 含みが?
(*^ω^)ノ" byebye☆

2011/05/27 (Fri) 00:13 | REPLY |   

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