最愛アンドロイドAU 2
「何だよ、これ!ただの家事ロボットに何で、こんなビジュアルと下半身が必要なんだ?おかしいだろう!?」
「あの……。博士はご自宅に戻られました。」
受話器の向こうが音矢じゃないのに、やっと気が付いてどっとテンションが下がった。
「せっかくのお手伝いロボットですから、お客様にも楽しんで戴こうと思いまして、当社もいろいろオプションを考えました。しばらくそちらでモニタリングをしてください。その上で不愉快なことがございましたら、その旨お伝えくだされば、こちらで速やかに対処、もしくは回収致します。」
「ああ……、わかった。すまない、ちょっと驚いてしまったんだ。悪かったよ、時差があるからそっちには迷惑な時間だったね。」
「いえ。こちらはいつでも大丈夫です。そのために担当者が当番制で常駐しておりますから。それでは早速、起動方法と初期設定についてご説明を……。」
分厚い説明書を眺めたら、ずいぶん簡単な操作で起動できそうだとわかる。音羽は自分で何とかやってみよう、わからなかったら連絡すると告げた。柔らかい声の相手に、どこかで聞いたような声だと思った。
「はい。それでは、作業の方を引き続きよろしくお願いいたします。アンドロイドとの素晴らしい薔薇色の時間をお過ごしください。」
それでは……と言って、電話は切れた。いくらなんでも、薔薇色はないんじゃね…?
「え……と。起動方法は……。」
内蔵された情報(雇い主の指紋と声紋)が一致すれば、起動すると書いてあった。マニュアルに従ってアンドロイドを包む薄紙を裂き、人で言うなら心臓部分にそっと右手を乗せた。これで、持ち主を認識するはずだ。
「すごいな……。」
想像通りの、手のひらを押し戻す弾力のある肌触りに、驚嘆した。
傍で見ても、余りに整った精巧な作りはどう見ても人間としか思えない。しかもかなりの美形だ。青緑色の玉石を縁どった睫毛の一本々が、綺麗に弧を描いていた。
ただ起動させるだけなのに、肌に直接触れた行為に音羽の心拍は上がり、手のひらは汗ばんだ。
そこには、緩やかなまろみもないと言うのに……。
「何で、温かいんだ……?やっぱりこいつ人間じゃないのか。エイプリルフールでもないはずだけど、兄貴にかつがれているとか……。どこかに、ドッキリ大成功とか書いてるんじゃないか。」
小さくごちたら、、ゆっくりと顔が向けられた。しばしばと瞬きが繰り返され……視線が絡む。
「……それは、ご質問ですか?ご主人さま。内蔵されたサーモスタットが、起動させたご主人さまと同じ体温になるように設定されております。わたしの現在の表面温度は36、2度です。二つ目と三つ目の質問への答えは必要でしょうか?」
自動人形は表情も変えず、淡々と馬鹿丁寧に語った。
マニュアルの次ページには、契約という言葉がでかいフォントで踊る。赤線でマークしてあるところを見ると、おそらく重要項目に違いない。半身を起こしたアンドロイドは、契約者である秋月音羽をじっと見つめていた。
「いや、いい。独り言だ。それより視線を外してくれ。日本人はシャイなんだ。」
「わかりました。ご主人さま。どうぞ契約作業をお続けください。」
「契約の言葉はこれか……。……“I, (Bride/Groom), take (you/thee) (Groom/Bride), to be my [opt: lawfully wedded] (wife/husband), to have and to hold from this day forward, for better or for worse, for richer, for poorer, in sickness and in health, to love and to cherish; and I promise to be faithful to you until death parts us.”病める時も健やかなる時も……って、まるで結婚式の誓いの言葉じゃないか。」
「イエス。」
「いや、だから違うって。今のは読み上げただけだから。契約文書にしちゃ、おかしいだろうって言ってるの!」
「先ほどの宣言で、契約は速やかになされました。ご主人さま。ダーリンとお呼びすればいいですか?それともハニーとお呼びすればいいですか?どちらでもお好きな方をお選びください。」
「だから~!君はお手伝いロボットで、おれの妻じゃないし、恋人でもない。わかるだろう?」
「死が我々を引き離すまで、わたしはあなたに誠実であると約束します。」
「ああ……、そこだけ聞いたらもっともな契約に聞こえるな……じゃなく!」
おれは、アンドロイドに背を向け、直通電話に飛びついた。
「もしもしっ!もしもしっ!!」
「はい。何かトラブルでもございましたでしょうか?」
「この契約書の文章なんだけど、おかしくないか?」
「……お掛けになった番号は、現在使われていないか、お客様のご都合で通話のできない状態に……ぴ~……」
「鼻をつまむな!ごまかさないで、ちゃんと答えろ~~~!!」
( *`ω´) 音羽:「なんだかこのアンドロイド、おかしいぞ~…」
(`・ω・´)AU:「ロボット工学の粋を集めた、正真正銘のアンドロイドでっす。」
(*⌒▽⌒*)♪此花:「コメディです。ちっさいことは気にしないでお楽しみください♪」
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先は遠い……(〃ー〃)
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