最愛アンドロイドAU 6
緊迫した難手術が無事成功に終わり、音羽は祝杯をあげようと執刀した大学病院のチームに誘われた。誰もが近づきになりたいと願う、今の日本では最高峰と言われる面々だ。
だが、音羽はあっさりと断りを入れた。
「すみません。今日はずいぶん前からの約束事が有って外せないんです。次回は必ず参加しますから誘ってください。」
「え~っ、秋月先生、いらっしゃらないんですか?縫合のコツとかピッツバーグの話を聞きたかったのに。彼女とデートですか?」
一番若い外科医が、ひどく落胆した顔を向ける。彼にとって秋月音羽も、いつかはそうなりたいと思う憧れのスーパードクターの一人だった。
「いや。老人施設に入所している両親の所に面会に行くんだ。だから残念だが、今回は諦めるよ。芝くん……だっけ?今度、空き時間が有ったら声を掛けるから、一杯やろう。」
「はい!」
音羽は、成り行きで携帯電話の番号を交換した。
*****
「彼女だったら良かったんですけどね~……。」
一人ごちながら、車を飛ばす。美貌のアンドロイドは風呂場で機能停止したままエメラルドの大きな目を見開いて、音羽の帰りを待っているはずだ。
薄い胸に手を当てて、認識されるのを待つ。しばらくすると、瞬きが繰り返されヴィーナスの頬が上気する。そんな作業を、胸の内で反復するうち、大変な掃除の事も忘れて自然と口角が上がっているのに気が付いた。
「あ、そうだ、あっくんの洋服を買って帰らないと。」
街中を走っている時に気付いて、車を止めた。
金髪のマネキンが着ている、薄いオーガンジーのドレスが、アンドロイドに、きっと似合うだろうと思った。…いや、一応Tシャツにコットンパンツとかにしないと、暴れん棒が……いやいや。
「プレゼントですか?こちらは7号サイズですが、よろしいですか?」
「ええ。身長はぼくの肩位で、かなりの細身です。出来れば、同じサイズで何枚か見繕ってくれると助かります。着替えを何も持たずに、滞在することになってしまって……。」
店員は、胸の所に違うドレスを当てて見せ、音羽の脳内では白いドレスのあっくんが、くるりと回って微笑んだ。
「このドレスは、たぶんちょうどいいと思うけど……。出来ればもう少し、ユニセクスなものも欲しいんだけど?Tシャツとかあれば。」
何も考えずに、似合いそうなものがあるからと足を入れたその洋品店は、女性ものしか置いていなかったが、取りあえず音羽は一抱えの洋服を手に入れた。どのみち、あっくんのサイズは紳士物ではないだろう。
音羽は気付いていなかったが、知らず知らずのうちにうろ覚えで鼻歌などを歌っている。
「…会いたかった~、会いたかった~、イエス!君に~♪」
先ほどまでの神と言われたメスさばきからは想像もできない、音羽の行動だった。
上機嫌でドアを開けようとしたら、ドア周りが水浸しだった。
「え?……水出しっぱなしだったか?」
慌ててリビングに飛び込んだら、あっくんが座り込んでしょんぼりとしていた。
「あれ……あっくん。再起動してしまったのか?」
「はい。……再起動しました。」
「不思議なこともあるもんだな。それもチェック用紙に入れておいた方が良いね。そうだ、君に土産があるんだよ。」
顔を向けていぶかしげなアンドロイドに、買って来た服を渡した。
「わたしに……?こんなにたくさん。」
「ああ。眠るときはいいけど、プレミアムセットは余りに悩殺的すぎるだろう?外へも連れて行ってあげたいから、ちゃんとしたものを着よう。似合うと思うよ。」
「ご主人さま。ありがとうございます。「あっくん」はうれしいです。」
ガガガガ……!
ものすごい振動音を立てながら、脱衣場に置いてあった洗濯機が頭を振って歩いて来る……。
今朝とは違う、ありえない光景に再び音羽は目を剥いた。
「ぅ、うわあーーーーっっ!何じゃ、こりゃあーーーっ!」
(´;ω;`) AU:「洗濯機……」
(°∇°;) 音羽:「ひえ~~~っ……。」
拍手もポチもありがとうございます。
感想、コメントもお待ちしております。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。 此花咲耶
だが、音羽はあっさりと断りを入れた。
「すみません。今日はずいぶん前からの約束事が有って外せないんです。次回は必ず参加しますから誘ってください。」
「え~っ、秋月先生、いらっしゃらないんですか?縫合のコツとかピッツバーグの話を聞きたかったのに。彼女とデートですか?」
一番若い外科医が、ひどく落胆した顔を向ける。彼にとって秋月音羽も、いつかはそうなりたいと思う憧れのスーパードクターの一人だった。
「いや。老人施設に入所している両親の所に面会に行くんだ。だから残念だが、今回は諦めるよ。芝くん……だっけ?今度、空き時間が有ったら声を掛けるから、一杯やろう。」
「はい!」
音羽は、成り行きで携帯電話の番号を交換した。
*****
「彼女だったら良かったんですけどね~……。」
一人ごちながら、車を飛ばす。美貌のアンドロイドは風呂場で機能停止したままエメラルドの大きな目を見開いて、音羽の帰りを待っているはずだ。
薄い胸に手を当てて、認識されるのを待つ。しばらくすると、瞬きが繰り返されヴィーナスの頬が上気する。そんな作業を、胸の内で反復するうち、大変な掃除の事も忘れて自然と口角が上がっているのに気が付いた。
「あ、そうだ、あっくんの洋服を買って帰らないと。」
街中を走っている時に気付いて、車を止めた。
金髪のマネキンが着ている、薄いオーガンジーのドレスが、アンドロイドに、きっと似合うだろうと思った。…いや、一応Tシャツにコットンパンツとかにしないと、暴れん棒が……いやいや。
「プレゼントですか?こちらは7号サイズですが、よろしいですか?」
「ええ。身長はぼくの肩位で、かなりの細身です。出来れば、同じサイズで何枚か見繕ってくれると助かります。着替えを何も持たずに、滞在することになってしまって……。」
店員は、胸の所に違うドレスを当てて見せ、音羽の脳内では白いドレスのあっくんが、くるりと回って微笑んだ。
「このドレスは、たぶんちょうどいいと思うけど……。出来ればもう少し、ユニセクスなものも欲しいんだけど?Tシャツとかあれば。」
何も考えずに、似合いそうなものがあるからと足を入れたその洋品店は、女性ものしか置いていなかったが、取りあえず音羽は一抱えの洋服を手に入れた。どのみち、あっくんのサイズは紳士物ではないだろう。
音羽は気付いていなかったが、知らず知らずのうちにうろ覚えで鼻歌などを歌っている。
「…会いたかった~、会いたかった~、イエス!君に~♪」
先ほどまでの神と言われたメスさばきからは想像もできない、音羽の行動だった。
上機嫌でドアを開けようとしたら、ドア周りが水浸しだった。
「え?……水出しっぱなしだったか?」
慌ててリビングに飛び込んだら、あっくんが座り込んでしょんぼりとしていた。
「あれ……あっくん。再起動してしまったのか?」
「はい。……再起動しました。」
「不思議なこともあるもんだな。それもチェック用紙に入れておいた方が良いね。そうだ、君に土産があるんだよ。」
顔を向けていぶかしげなアンドロイドに、買って来た服を渡した。
「わたしに……?こんなにたくさん。」
「ああ。眠るときはいいけど、プレミアムセットは余りに悩殺的すぎるだろう?外へも連れて行ってあげたいから、ちゃんとしたものを着よう。似合うと思うよ。」
「ご主人さま。ありがとうございます。「あっくん」はうれしいです。」
ガガガガ……!
ものすごい振動音を立てながら、脱衣場に置いてあった洗濯機が頭を振って歩いて来る……。
今朝とは違う、ありえない光景に再び音羽は目を剥いた。
「ぅ、うわあーーーーっっ!何じゃ、こりゃあーーーっ!」
(´;ω;`) AU:「洗濯機……」
(°∇°;) 音羽:「ひえ~~~っ……。」
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