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最愛アンドロイドAU 7 

水浸しの原因が、発覚した。
泡をまき散らしながら、洗濯機が激しく振動し、ありえない音を立てていた。
グワングワンという音と、大量の泡に慌てて音羽はコンセントを抜く。

「あっくん!これは……一体、どうしたの?」

あっくんは、結露を拭き顔をあげた。うるうると瞳が濡れている。

「ご主人さま。ごめんなさい。あっくんは、洗いものをしようと思いました。」

「うん。全自動だよ?洗濯物を放り込んでスイッチ入れるだけだね。」

失敗するはずもない。

「わたしは、お手伝いロボットですから家事は全般こなせるはずなのに、どうしてうまくいかないのでしょう?ご主人さまの衣類と、シーツと、汚れてしまったキッチン用品をすべて入れて洗剤を投入し、スイッチを入れたらこんなことになってしまいました。」

「キッチン用品?」

「はい。魚を焼いたレンジグリルを、外して洗おうと思ったのです。」

「洗濯機に入れたのか……。」

泡にまみれた洗濯機を眺め、笑うしかなかった。
あっくんの機能は、どうやらモニターを必要とするだけあって、まだ未完成な点が多いのだろう。あっくんの知能(陽電子頭脳)は、洗い物は全て同じカテゴリーに位置したらしい。
物を洗うのに洗剤が必要なのは理解できても、素材ごとに洗い方が違うのが分かっていないのだろうか。
しかも洗濯機のふたが何度も開いて、中身が飛び出すのであっくんは、新聞や雑誌を縛るビニールひもを見つけて懸命に洗濯機を縛っていた。
それはもう、驚くほど見事な亀甲縛りに……。

「こっちの機能は、充実してそうだな。」

足元に転がる洗濯洗剤の空容器が、大量の泡の原因を物語っていた。音羽は、兄に電話を掛けた。

「もしもし……。あ、兄貴?ちょっと、いいかな。お手伝いロボットなのに何もできないって、あっくん……AUが落ち込んでるんだけど、対処方法とかあるなら、教えてやってくれないかな。いや、別に問題点があるわけじゃないんで、研究室には電話しなかったんだけど……。」

「ああ……。それは、仕方がないな、音羽。一つずつ気長に教えてやってくれ。」

「教えるのは構わないんだけど、何だか酷くしょげちゃって……、結露だって本人は言うんだけど、どう見ても涙にしか見えなくて、どうにも止まらなくて可哀想なんだよ。」

「何か、目に見える異常でもあるのか?」

「いや、ちょっとアンドロイドAUの機能について、知りたいと思っただけだ。」

「それは……。え~と……。アンドロイドAUに搭載しているディスクが、どうやら新妻モードだったようだな。オプションの中身はなんだった?」

「スケスケネグリと、ありえないデザインのぱんつだ。」

「ああ……。それでわかった。そのアンドロイドのディスクは、幼な妻モードだな。一部のマニア向けというか……。いっそ、返品するか?」

「返品……?」

ああ、その手があったかと、ふと視線を巡らせばあっくんは「返品」という単語に敏感に反応してこちらを向いた。

「もし、そうしたらどうなるんだ?」

「ディスクを抜いて、異常がなければもう一度モニターに出すことになるな。商品化するにはもっとデータが必要だから。少しでも異常があれば、廃棄処分だ。高熱炉で跡形もなく、焼くことになる。」

「焼く……って。」

ぴくりとあっくんの身体が震えた。高性能アンドロイドAUには、今の会話がどこまで理解できているのだろうか。

音羽はあっくんを見つめていた。

耳元では、兄の音矢が廃棄されるアンドロイドの行方を告げていた。内部に人の骨格のように金属が内蔵されるアンドロイドは、ただの燃えないゴミとして処分されることはない。人体に模した骨格は、裁断処分には向かず特別な炉で焼いた後は、産業廃棄物として処分される。シリコンもまた、燃やされると有毒ガスを発するため、必ず回収されるらしい。
どれほど愛していても、共に棺に入り墓に入ることは叶わない……というわけだ。

あっくんも、音羽を見つめていた。

伸ばした指が自然に絡む。
ひどく心もとない愛おしい存在。どう見ても人にしか見えないアンドロイドに、音羽は一目見た時から惹かれていた。

「もしもし!もしもし……」

電話は部屋の片隅へ放り投げられた。幼な妻モードの何もできないあっくんと、駆け落ちするのもいいかもしれない。地の果てまで迫害される、祝福されない恋人同士のように……




(`・ω・´)音羽:「あっ君は守るからね!」

(*⌒▽⌒*)♪AU:「ご主人様~」

( *`ω´) 此花:「浮世離れした者同士だな。ありえねぇ~……」

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4 Comments

此花咲耶  

ねむりこひめさま

ねむちんの萌えポイント…_φ( ..)φ_両手メモ〜!」
ばれそうでばれない、あっ君の秘密……(〃▽〃)
ねむちんの描いてくださったあっ君を眺めていると、お話が進みます。
余計なエピソードも入ってしまう……あ、余計じゃなかった重要なエチだった。
(*ノ▽ノ)キャ~ッ!頑張ります。
コメントありがとうございました。

2011/09/26 (Mon) 12:53 | REPLY |   

ねむりこひめ  

亀甲縛り~~~~~~!
幼妻~~~~~~!
駆け落ち~~~~~~!

萌えだくさんで、どうしましょう~~~!
あっくん、本当に可愛いわぁ~♡

2011/09/26 (Mon) 00:35 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

chobonさま

> 幼妻モードなのに亀甲縛りはできるんですね。

(*ノ▽ノ)キャ~ッ!たまたまです~

> それ絶対に意図的でしょ⁈
> いや、モチロンあっくんじゃなくて、此花さんの……(´・_・`)

此花は、純情可憐な乙女なので亀甲縛りも菊花縛りも、胸張り縄も知りません。
できれば、ちかちゃんをぐるぐる巻きにしたいです。(`・ω・´)
白い肌に赤い縄目が似合いそうです。

「えぇい!きりきり歩けっ!」…と、言ってみたいです。ほたるくんをかばって、三尺高い獄門台に上がるチカちゃんと、救い出せずに見つめるあーちゃん。最後の瞬間まで視線はしっかりと絡んで…ってね、お話がすぐできちゃいます。(*⌒▽⌒*)♪

コメントありがとうございました~~!

2011/09/26 (Mon) 00:13 | REPLY |   

chobon  

幼妻モードなのに亀甲縛りはできるんですね。
それ絶対に意図的でしょ⁈
いや、モチロンあっくんじゃなくて、此花さんの……(´・_・`)

2011/09/25 (Sun) 21:38 | REPLY |   

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