わんことおひさまのふとん 8
「おまえ、ジョゼフィーヌに似てるな。」
「似てないよ。だって、俺は母ちゃんに似てないからって捨てられたんだもの……。」
「何言ってんだ。そっくりじゃねーか。そこの御神鏡覗いてみな。」
白狐さまの祠(ほこら)の中で、ぼうっと輝く鏡を覗いて俺はひっくりかえりそうになった。
「かあちゃんっ!?」
「かあちゃんだっ!かあちゃん!…会いたかったよぉ~~~え~~~ん……・」
思わず、その場で俺は母ちゃんを思って慟哭した。
鏡の中の母ちゃんは、ふわふわとした銀色の髪に少しメッシュで金色が入っている、とても綺麗な女だった。琥珀色の大きな瞳からは今にも涙が溢れそうになっている。
ほら、母ちゃんが泣くから、俺だって……つられて泣くじゃないか……。
あの日別れたきりの、細くて綺麗なふわふわの母ちゃんがそこにいた。
「かあ……ちゃ~~ん、うっ……うっ、え~ん……・」
でも、よしよしと俺を抱きしめて宥めてくれたのは、母ちゃんではなく、いたいけな小犬(俺)の前でがんがん交合していた狗神と祠の白狐さまだった。
「おまえ、ジョゼフィーヌにそっくりのいい女…じゃねぇ、いい男になったじゃね~か。何せ、優性遺伝のハーフだから当たり前か。」
「ちがわいっ!おまえなんかっ。かあちゃんと俺たちを棄てたくせにっ!」
ふっと細くなった男の視線は、優しかった。
「そうだよな~、そう思われても仕方ねぇな。」
「なんで、大事なことを言わないかね、この男は。捨てたんじゃないだろう。あれは、狗神になる為の掟で必要だったんだって、言ってやればいいのに。仔犬が誤解したままじゃないか。」
「自分、不器用ですから。」
向こうの方で、情事の後の色気がしたたっているような白狐さまが、扇情的な仕草で膝を立てて指先で俺を呼んだ。
「おいで。仔犬。」
俺は目を見開いたまま固まっていた。
「筆下ろししてやろう。犬妖でも狗神の子なら、もう大人になっているはずだろう。」
「で……でも、まだ俺、乳離れも済んでない仔犬だし……。」
おいでって……鼻血がぶ~っと出そう……。い、いただいちゃっていいんですか?
俺はちらと、父ちゃんの方を見た。苦み走った超男前の顔で、父ちゃんはこくりと頷いた。
かっこいい~……ではなく、どうしよう。
「ナイト。大人の階段昇って来い。」
「でも……」
俺、まだ、片足上げておしっこできないようなちびなのに。
夏輝の指をおっぱい代わりに吸ってないと、なかなか眠れない甘えん坊の小犬なんですけど……いいですか?
白狐さまの閉じかけた後孔が早くおいでと、妖しく俺を誘う。
「据え膳喰わぬは男の恥」と父ちゃんが一言発し、本能が俺の足を進めた。
「白狐さま、いただき……よろしくお願いします。」
白狐さまの前に出ると、身体が竦む。
この上なく妖艶な表情を浮かべて、白狐さまは俺を胸に抱っこした。
「狗神、後ろから抱えて持ってろ。」
「そうだな。初めてだから、うんと優しくしてやってくれ。」
経験のない俺は、白狐さまと父ちゃんのされるままになっていた。
人型の俺は毛のないつるつるの姿で、父ちゃんの膝の上に抱っこされて、白狐さまと向き合った。
白狐さまの祠の中に重ねてある、羽二重のお布団をたたんで父ちゃんは寄りかかり、俺はその懐にすっぽりと抱かれている格好だった。
父ちゃんが後ろから俺の膝に手を掛け、白狐さまに向かって後ろ足を開いた。
白狐さまの前で、俺の前しっぽはぴくりと震えた。
夏輝の前しっぽみたいに紅色に染まり、ふるふると勃ちあがって行く。
「と……父ちゃん……、俺、俺……父ちゃんに……父ちゃん……。」
父ちゃんに巡り合えて、言いたいことは山ほどあったはずなのに、何も言えなくて、俺はただ「父ちゃん~」と馬鹿みたいに繰り返しているだけだった。
▼・ェ・▼……何か、おれ大人の階段登ってる……。
ランキングを外れているのにも関わらず、お運びいただきありがとうございます。
ご意見感想お待ちしております。 此花咲耶
「似てないよ。だって、俺は母ちゃんに似てないからって捨てられたんだもの……。」
「何言ってんだ。そっくりじゃねーか。そこの御神鏡覗いてみな。」
白狐さまの祠(ほこら)の中で、ぼうっと輝く鏡を覗いて俺はひっくりかえりそうになった。
「かあちゃんっ!?」
「かあちゃんだっ!かあちゃん!…会いたかったよぉ~~~え~~~ん……・」
思わず、その場で俺は母ちゃんを思って慟哭した。
鏡の中の母ちゃんは、ふわふわとした銀色の髪に少しメッシュで金色が入っている、とても綺麗な女だった。琥珀色の大きな瞳からは今にも涙が溢れそうになっている。
ほら、母ちゃんが泣くから、俺だって……つられて泣くじゃないか……。
あの日別れたきりの、細くて綺麗なふわふわの母ちゃんがそこにいた。
「かあ……ちゃ~~ん、うっ……うっ、え~ん……・」
でも、よしよしと俺を抱きしめて宥めてくれたのは、母ちゃんではなく、いたいけな小犬(俺)の前でがんがん交合していた狗神と祠の白狐さまだった。
「おまえ、ジョゼフィーヌにそっくりのいい女…じゃねぇ、いい男になったじゃね~か。何せ、優性遺伝のハーフだから当たり前か。」
「ちがわいっ!おまえなんかっ。かあちゃんと俺たちを棄てたくせにっ!」
ふっと細くなった男の視線は、優しかった。
「そうだよな~、そう思われても仕方ねぇな。」
「なんで、大事なことを言わないかね、この男は。捨てたんじゃないだろう。あれは、狗神になる為の掟で必要だったんだって、言ってやればいいのに。仔犬が誤解したままじゃないか。」
「自分、不器用ですから。」
向こうの方で、情事の後の色気がしたたっているような白狐さまが、扇情的な仕草で膝を立てて指先で俺を呼んだ。
「おいで。仔犬。」
俺は目を見開いたまま固まっていた。
「筆下ろししてやろう。犬妖でも狗神の子なら、もう大人になっているはずだろう。」
「で……でも、まだ俺、乳離れも済んでない仔犬だし……。」
おいでって……鼻血がぶ~っと出そう……。い、いただいちゃっていいんですか?
俺はちらと、父ちゃんの方を見た。苦み走った超男前の顔で、父ちゃんはこくりと頷いた。
かっこいい~……ではなく、どうしよう。
「ナイト。大人の階段昇って来い。」
「でも……」
俺、まだ、片足上げておしっこできないようなちびなのに。
夏輝の指をおっぱい代わりに吸ってないと、なかなか眠れない甘えん坊の小犬なんですけど……いいですか?
白狐さまの閉じかけた後孔が早くおいでと、妖しく俺を誘う。
「据え膳喰わぬは男の恥」と父ちゃんが一言発し、本能が俺の足を進めた。
「白狐さま、いただき……よろしくお願いします。」
白狐さまの前に出ると、身体が竦む。
この上なく妖艶な表情を浮かべて、白狐さまは俺を胸に抱っこした。
「狗神、後ろから抱えて持ってろ。」
「そうだな。初めてだから、うんと優しくしてやってくれ。」
経験のない俺は、白狐さまと父ちゃんのされるままになっていた。
人型の俺は毛のないつるつるの姿で、父ちゃんの膝の上に抱っこされて、白狐さまと向き合った。
白狐さまの祠の中に重ねてある、羽二重のお布団をたたんで父ちゃんは寄りかかり、俺はその懐にすっぽりと抱かれている格好だった。
父ちゃんが後ろから俺の膝に手を掛け、白狐さまに向かって後ろ足を開いた。
白狐さまの前で、俺の前しっぽはぴくりと震えた。
夏輝の前しっぽみたいに紅色に染まり、ふるふると勃ちあがって行く。
「と……父ちゃん……、俺、俺……父ちゃんに……父ちゃん……。」
父ちゃんに巡り合えて、言いたいことは山ほどあったはずなのに、何も言えなくて、俺はただ「父ちゃん~」と馬鹿みたいに繰り返しているだけだった。
▼・ェ・▼……何か、おれ大人の階段登ってる……。
ランキングを外れているのにも関わらず、お運びいただきありがとうございます。
ご意見感想お待ちしております。 此花咲耶
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