わんことおひさまのふとん 9
「ナイト。息を吐いて、力を抜きな。」
「う……う……ぅ。」
「怖くないぞ。元々、俺たちを作った神さまはな、誰も独りでは生きてゆけないように生き物を作ったんだ。」
「神……さまが?」
「ああ。ナイトも一人ぼっちになった時、胸に風が吹いただろう?夏輝と出会ったとき、陽だまりに居る気がしただろう?」
「う……ん……夏輝は、俺のおひさまのふとん……なんだ。」
俺の開いた足の間で勃ちあがった前しっぽに、白狐さまの白い手が触れ緩く上下していた。
「父ちゃんもな、つがう運命の相手を一生懸命捜して、ジョゼフィーヌに巡り合ったのさ。あいつは本当にいい女だった。仔犬をあの細い身体で5匹も産んでくれたしな。」
父ちゃんは、男前に母ちゃんとのなれそめ話をしていたが、俺はそれどころじゃなくなっていた。知らずに腰が小さく前後する。
「仔犬……、かわいいぞ。」
「ううっ……し、白狐さま。力が抜ける……よぉ。」
白狐さまの濃い緑の深淵の瞳が、じっと優しく俺だけを見つめていた。
ぱくぱくと声にならない、細い悲鳴がひゅっと喉の奥で鳴った。
「きゃ……あっ、やっ……だ。はなして……。」
白狐さまの小さくて綺麗な顔が、俺に向かってふっと微笑むと足の間に降りてゆき、指で俺のおしっぽを揺らすとぱくりと食べた。
「く、食っちゃ駄目~、おしっぽ、いっこしかないんだもん。もう、祠におしっこしません……おっきいほうも、ちびりま……ああぁぁーーーーっ!」
「お前、神域でおっきい方もちびったのか。」
「え~ん、ちょっとだけちびった~……。」
父ちゃんが呆れたように、ため息を吐(つ)いた。
だって仕方がないじゃないか。噂では、白狐さますごくこわい奴だって聞いてたんだもの。荼枳尼天の神使、白狐がとんでもないことをやらかして、祠に封印されたってみんな噂していたよ。おしっこくらいちびるよ。本当は、怖いからここには来たくなかったけど、俺の「おひさまのふとん」夏輝が泣くから……。
夏輝に笑って欲しかったから、勇気を振り絞って神頼みに来たんだ。
「……だから、ああーーーーーっ!」
「おしっこ……でる……白狐さま、俺、おしっこでる~~~。」
白狐さまがあわてて、俺のおしっぽから離れたけどもう遅かった。
俺のおしっぽから、ぴゅって出た白いおしっこは、白狐さまの顔に……。
うわあ!やっちまった~!
「ご……めんなさい。うわぁ~~~ん。」
「……仔犬。よりによって、神使の顔に顔射とは恐れを知らぬにも、程がある。」
「きゃああぁ……ごめんなさ~~~い!」
「……どうしてくれようかの。」
ふっと綻んだ艶めかしい白狐さまの美しい笑顔が余りに綺麗で怖くて、俺はその場で失禁……違うっ!失神してしまったんだ。
*****
「さすがは狗神長次郎の血を引くものだな。筆下ろしで気をやるとは。」
「ふっ……、見た目は母親に似ているようなんだが、まぎれもなく中身は俺みたいだな。洩れるフェロモンが半端なくすげぇ。」
「父親に似て、さぞかし精力絶倫なんだろうよ。」
「褒め言葉と受け取っておこう。来いよ、あれっぽっちの精気じゃ物足りないだろう?何しろお前は、荼枳尼天の使いのくせに、あいつのお気に入りの男の精力を食らい尽くして腎虚(抜け殻状態)にしちまったんだからな。まったく困った色狐だ。」
「向こうが勝手に惚れてきただけだ。仕方ないだろう。わたしのせいではない。おかげで、封印されてこの祠から離れられない。迷惑な話だ。」
「そうだな。今はこうして俺が訪ねて来るのをじっと待ってる……待たせたな?」
「う……ん……。待ってた、長次郎……。」
ちびの俺をもてあそんだくらいじゃ物足りない、精力旺盛な白狐さまは、それからもう一度父ちゃんに長い銀糸の髪を揺らしてあんあん言わされ、湯上がりたまご肌並みの「つやつや」「ぴちぴち」を手に入れた。
どうやら万物の精気は、信仰心と同じくらい白狐さまのビジュアルに影響を及ぼすらしい。
白狐さまも綺麗でいるには努力が必要なんだ。しつこい相手が、神さまの情夫だったなんて気の毒な話だよね~。
ついでに、思いっきり頂いてしまって腑抜けになったのは気の毒だったけど。
「腰が抜けたやつって、たぶん自業自得だな。」
俺は、また一つお利口になった。
▼・ェ・▼……おれ大人の階段登った~……。
ランキングを外れているのにも関わらず、お運びいただきありがとうございます。
励みになっています。
ご意見ご感想お待ちしております。 此花咲耶
「う……う……ぅ。」
「怖くないぞ。元々、俺たちを作った神さまはな、誰も独りでは生きてゆけないように生き物を作ったんだ。」
「神……さまが?」
「ああ。ナイトも一人ぼっちになった時、胸に風が吹いただろう?夏輝と出会ったとき、陽だまりに居る気がしただろう?」
「う……ん……夏輝は、俺のおひさまのふとん……なんだ。」
俺の開いた足の間で勃ちあがった前しっぽに、白狐さまの白い手が触れ緩く上下していた。
「父ちゃんもな、つがう運命の相手を一生懸命捜して、ジョゼフィーヌに巡り合ったのさ。あいつは本当にいい女だった。仔犬をあの細い身体で5匹も産んでくれたしな。」
父ちゃんは、男前に母ちゃんとのなれそめ話をしていたが、俺はそれどころじゃなくなっていた。知らずに腰が小さく前後する。
「仔犬……、かわいいぞ。」
「ううっ……し、白狐さま。力が抜ける……よぉ。」
白狐さまの濃い緑の深淵の瞳が、じっと優しく俺だけを見つめていた。
ぱくぱくと声にならない、細い悲鳴がひゅっと喉の奥で鳴った。
「きゃ……あっ、やっ……だ。はなして……。」
白狐さまの小さくて綺麗な顔が、俺に向かってふっと微笑むと足の間に降りてゆき、指で俺のおしっぽを揺らすとぱくりと食べた。
「く、食っちゃ駄目~、おしっぽ、いっこしかないんだもん。もう、祠におしっこしません……おっきいほうも、ちびりま……ああぁぁーーーーっ!」
「お前、神域でおっきい方もちびったのか。」
「え~ん、ちょっとだけちびった~……。」
父ちゃんが呆れたように、ため息を吐(つ)いた。
だって仕方がないじゃないか。噂では、白狐さますごくこわい奴だって聞いてたんだもの。荼枳尼天の神使、白狐がとんでもないことをやらかして、祠に封印されたってみんな噂していたよ。おしっこくらいちびるよ。本当は、怖いからここには来たくなかったけど、俺の「おひさまのふとん」夏輝が泣くから……。
夏輝に笑って欲しかったから、勇気を振り絞って神頼みに来たんだ。
「……だから、ああーーーーーっ!」
「おしっこ……でる……白狐さま、俺、おしっこでる~~~。」
白狐さまがあわてて、俺のおしっぽから離れたけどもう遅かった。
俺のおしっぽから、ぴゅって出た白いおしっこは、白狐さまの顔に……。
うわあ!やっちまった~!
「ご……めんなさい。うわぁ~~~ん。」
「……仔犬。よりによって、神使の顔に顔射とは恐れを知らぬにも、程がある。」
「きゃああぁ……ごめんなさ~~~い!」
「……どうしてくれようかの。」
ふっと綻んだ艶めかしい白狐さまの美しい笑顔が余りに綺麗で怖くて、俺はその場で失禁……違うっ!失神してしまったんだ。
*****
「さすがは狗神長次郎の血を引くものだな。筆下ろしで気をやるとは。」
「ふっ……、見た目は母親に似ているようなんだが、まぎれもなく中身は俺みたいだな。洩れるフェロモンが半端なくすげぇ。」
「父親に似て、さぞかし精力絶倫なんだろうよ。」
「褒め言葉と受け取っておこう。来いよ、あれっぽっちの精気じゃ物足りないだろう?何しろお前は、荼枳尼天の使いのくせに、あいつのお気に入りの男の精力を食らい尽くして腎虚(抜け殻状態)にしちまったんだからな。まったく困った色狐だ。」
「向こうが勝手に惚れてきただけだ。仕方ないだろう。わたしのせいではない。おかげで、封印されてこの祠から離れられない。迷惑な話だ。」
「そうだな。今はこうして俺が訪ねて来るのをじっと待ってる……待たせたな?」
「う……ん……。待ってた、長次郎……。」
ちびの俺をもてあそんだくらいじゃ物足りない、精力旺盛な白狐さまは、それからもう一度父ちゃんに長い銀糸の髪を揺らしてあんあん言わされ、湯上がりたまご肌並みの「つやつや」「ぴちぴち」を手に入れた。
どうやら万物の精気は、信仰心と同じくらい白狐さまのビジュアルに影響を及ぼすらしい。
白狐さまも綺麗でいるには努力が必要なんだ。しつこい相手が、神さまの情夫だったなんて気の毒な話だよね~。
ついでに、思いっきり頂いてしまって腑抜けになったのは気の毒だったけど。
「腰が抜けたやつって、たぶん自業自得だな。」
俺は、また一つお利口になった。
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