禎克君の恋人 3
上谷に声を掛けられたのは、三月前の、入学式後のことだった。
「よお、来たな。金剛は、てっきり城聖高校に行くんだとばかり思ってたよ。この辺だと、あそことうちがいい勝負だからな。」
「あの……?」
「あ。ごめん、バスケット部二年の上谷彩(かみやひかる)だ。監督に金剛が入るって聞いて、すっげぇ楽しみで、待ってたんだ。」
「ありがとうございます。見学したとき、ここがチームワーク良いと思ったんで……。」
「まあ、部員が少ないからな。だが、監督が頑張ったんで、今年の一年には結構いい人材が揃ってると思うぞ。ほら、初瀬中の明神とかさ。」
「そうですね。」
「……おい。それだけかよ。噂通りの無愛想だなぁ。だがな、全中選抜(全国中学生選抜)のポイントガードの金剛が入ってくれれば、うちもインターハイ出場も夢じゃなくなると思って楽しみにしてたんだ。行こうな、インターハイ。(全国大会)」
「はい。よろしくお願いします。」
思わず頭を下げた。
「丁寧だなぁ……。もう少し、くだけてもいいぞ。人見知りか?」
「……普通だと思いますけど。」
「いや、固いって。」
くしゃと笑ったら、上谷の片頬にくっきりと印象的なえくぼができる。
同じ中学からの連れはいなかったが、この先輩となら、たぶんやっていけると思った。
*****
「一年の部屋は、二階なんだ。判るか、金剛?」
「はい。部屋割り表貰いましたから。あ……っと。」
階段で落とした荷物の横ポケットから、かさと乾いた音を立てて、何かが滑り落ちた。
「なんだ?……写真?」
「あ、それ、ぼくのお守りなんです。」
「へぇ……。ずいぶん古いものだな。写ってるの金剛……と?」
「昔、仲の良かった友達です。」
上谷が拾って見つめる古い写真は、いつか舞台を見に行ったときに、二人を並べて劇団員が撮ってくれたポラロイド写真だった。色も変わってしまったが、捨てられなくてパウチしていつも持っている。
「実は……これを持って臨んだ試合は、これまで負け知らずなんです。だから練習中も持ってれば怪我とかしないかなって思って、いつも持ってます。気休めだと思いますけど。」
「そうか。金剛のゲン担ぎなんだな。おれも、大きな試合の時に必ず穿くソックスがあるんだ。元の布の方が少ないくらいのツギだらけだけど、捨てられないんだ。知ってるか?こういうの「ライナスの毛布」って言うんだぜ。心の拠り所っての?」
「……聞いたこと無いです。」
「ははっ、おれのも受け売りだ。ま、大事なお守りを、俺のつぎはぎソックスと一緒にされちゃ、かなわんよな。」
上谷は声をあげて笑った。
実は高校を決める時、禎克は仲間とあちこち見学して回った。
スカウトしてくれた他校との練習試合を見に行ったとき、上谷が何度も綺麗な弧を描いてボールを沈めるのを見て目が釘付けになった。
「すごい……。綺麗なフォームだなぁ……。」
その後、点差の開いた試合を見ながら、きっと自分なら、もっとあのシュートを生かせるのに……と思った。自分なら瞬時にパスコースを探し出し、もっと楽にフリーでシュートを打たせてやれるはずだ。その自信はあった。
センターも強いし、上谷の居るこのチームなら、きっとインターハイまで行けるだろう。そう思って、ベスト4どまりだったこの高校の誘いに乗った。
バスケ三昧のさあちゃんの生活です。
ひそかに大二郎くんの写真を、お守りにして持っています。しかもパウチまでして大切に。
少しは覚えているのかな。
つか……この先輩ってなに? (*´・ω・)(・ω・`*) ね~
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
こういう感じのお話は書いたことなかったので、ちょっとどきどきです……(〃゚∇゚〃)
拍手もポチもありがとうございます。励みになっています。(*⌒▽⌒*)♪ 此花咲耶
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「よお、来たな。金剛は、てっきり城聖高校に行くんだとばかり思ってたよ。この辺だと、あそことうちがいい勝負だからな。」
「あの……?」
「あ。ごめん、バスケット部二年の上谷彩(かみやひかる)だ。監督に金剛が入るって聞いて、すっげぇ楽しみで、待ってたんだ。」
「ありがとうございます。見学したとき、ここがチームワーク良いと思ったんで……。」
「まあ、部員が少ないからな。だが、監督が頑張ったんで、今年の一年には結構いい人材が揃ってると思うぞ。ほら、初瀬中の明神とかさ。」
「そうですね。」
「……おい。それだけかよ。噂通りの無愛想だなぁ。だがな、全中選抜(全国中学生選抜)のポイントガードの金剛が入ってくれれば、うちもインターハイ出場も夢じゃなくなると思って楽しみにしてたんだ。行こうな、インターハイ。(全国大会)」
「はい。よろしくお願いします。」
思わず頭を下げた。
「丁寧だなぁ……。もう少し、くだけてもいいぞ。人見知りか?」
「……普通だと思いますけど。」
「いや、固いって。」
くしゃと笑ったら、上谷の片頬にくっきりと印象的なえくぼができる。
同じ中学からの連れはいなかったが、この先輩となら、たぶんやっていけると思った。
*****
「一年の部屋は、二階なんだ。判るか、金剛?」
「はい。部屋割り表貰いましたから。あ……っと。」
階段で落とした荷物の横ポケットから、かさと乾いた音を立てて、何かが滑り落ちた。
「なんだ?……写真?」
「あ、それ、ぼくのお守りなんです。」
「へぇ……。ずいぶん古いものだな。写ってるの金剛……と?」
「昔、仲の良かった友達です。」
上谷が拾って見つめる古い写真は、いつか舞台を見に行ったときに、二人を並べて劇団員が撮ってくれたポラロイド写真だった。色も変わってしまったが、捨てられなくてパウチしていつも持っている。
「実は……これを持って臨んだ試合は、これまで負け知らずなんです。だから練習中も持ってれば怪我とかしないかなって思って、いつも持ってます。気休めだと思いますけど。」
「そうか。金剛のゲン担ぎなんだな。おれも、大きな試合の時に必ず穿くソックスがあるんだ。元の布の方が少ないくらいのツギだらけだけど、捨てられないんだ。知ってるか?こういうの「ライナスの毛布」って言うんだぜ。心の拠り所っての?」
「……聞いたこと無いです。」
「ははっ、おれのも受け売りだ。ま、大事なお守りを、俺のつぎはぎソックスと一緒にされちゃ、かなわんよな。」
上谷は声をあげて笑った。
実は高校を決める時、禎克は仲間とあちこち見学して回った。
スカウトしてくれた他校との練習試合を見に行ったとき、上谷が何度も綺麗な弧を描いてボールを沈めるのを見て目が釘付けになった。
「すごい……。綺麗なフォームだなぁ……。」
その後、点差の開いた試合を見ながら、きっと自分なら、もっとあのシュートを生かせるのに……と思った。自分なら瞬時にパスコースを探し出し、もっと楽にフリーでシュートを打たせてやれるはずだ。その自信はあった。
センターも強いし、上谷の居るこのチームなら、きっとインターハイまで行けるだろう。そう思って、ベスト4どまりだったこの高校の誘いに乗った。
バスケ三昧のさあちゃんの生活です。
ひそかに大二郎くんの写真を、お守りにして持っています。しかもパウチまでして大切に。
少しは覚えているのかな。
つか……この先輩ってなに? (*´・ω・)(・ω・`*) ね~
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
こういう感じのお話は書いたことなかったので、ちょっとどきどきです……(〃゚∇゚〃)
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