禎克君の恋人 5
初日は散々だったが、それでもやがて禎克は、激しい練習に次第に慣れはじめた。
合宿も終盤の頃には、試合形式の紅白戦でも、少しずつ思い通りのパスが出せるようになっていた。
二人がかりでガードされながら、相手の隙をつきバックステップを入れてフリーになり、ついにパスを通した。
「先輩!」
「よっしゃ!ナイスパス!」
綺麗な放物線を描いて、禎克のパスを受けた上谷の3Pが決まった。
「ナイシュー!」
紅白戦相手の先輩から、拍手をもらった。
手荒い祝福を受ける。
「他の一年なんて、皆ついて来るだけで精いっぱいなのに、やるなぁ、金剛。さすが全中選抜。」
「最後のパス、もう少し精度上げれば、上谷のスリーだけじゃなくてさ、アリウープ狙えるんじゃないか?」
「狙えるな。いっちょ全国で、やってやろうぜ。」
「お前ら、浮かれて油断してると、金剛にレギュラー取られるぞ。気合入れて行けよ。」
自分ではまだまだ納得がいかない禎克は、専属コーチの高評価にも戸惑っていた。
「粗削りだけど、結構使えるじゃないか。高校バスケのスピードにも慣れるの早いな、金剛。良い試合勘持ってると思うぞ。」
「見かけによらず強心臓だしな、金剛は。ポーカーフェイスなのがいい。」
「見た目、おとなしそうなんで、合宿途中で泣きながら帰ったら、どうしようかと思ってたがな。」
「なんですか、それ……。根性だけはあるつもりです。」
明るいチームメイトとの会話に、何とかやれそうな手ごたえを感じていた。
*****
「金剛!手が空いたらこっち手伝え!仕事あるぞ。」
「はい!」
声を掛けてきたのは、二年生のマネージャーだ。
一年生には雑用全般が振り分けられている。
禎克は、洗濯洗剤の買い出しを任され近くのスーパーまで行くことになった。
「一人でおつかい大丈夫か~?一年生。」
「一緒に行ってやろうか?」
「チャリ有るんで大丈夫です。」
「迷うなよ。」
「地元ですから。」
「ばか。そこは「ひとりでできるもん」って、返すんだよ。」
夕暮れの風が熱のこもった身体には心地よかった。スーパーで目的の物を買い、袋に入れている時、ふと置かれたチラシの束が目に入った。
「あ……。」
トン……と鼓動が高く跳ねた。
「劇団醍醐……?」
割引券の艶めかしい花魁の姿に、懐かしい既視感を覚えた。
その姿に、見覚えがあった。
自分の持っているお守りの写真の背景に、同じポーズのポスターが写っていた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
拍手もポチもありがとうございます。励みになっています。
劇団醍醐が、ご当地再び参上!です。いよいよ逢えるかな~(*⌒▽⌒*)♪ 此花咲耶
にほんブログ村
合宿も終盤の頃には、試合形式の紅白戦でも、少しずつ思い通りのパスが出せるようになっていた。
二人がかりでガードされながら、相手の隙をつきバックステップを入れてフリーになり、ついにパスを通した。
「先輩!」
「よっしゃ!ナイスパス!」
綺麗な放物線を描いて、禎克のパスを受けた上谷の3Pが決まった。
「ナイシュー!」
紅白戦相手の先輩から、拍手をもらった。
手荒い祝福を受ける。
「他の一年なんて、皆ついて来るだけで精いっぱいなのに、やるなぁ、金剛。さすが全中選抜。」
「最後のパス、もう少し精度上げれば、上谷のスリーだけじゃなくてさ、アリウープ狙えるんじゃないか?」
「狙えるな。いっちょ全国で、やってやろうぜ。」
「お前ら、浮かれて油断してると、金剛にレギュラー取られるぞ。気合入れて行けよ。」
自分ではまだまだ納得がいかない禎克は、専属コーチの高評価にも戸惑っていた。
「粗削りだけど、結構使えるじゃないか。高校バスケのスピードにも慣れるの早いな、金剛。良い試合勘持ってると思うぞ。」
「見かけによらず強心臓だしな、金剛は。ポーカーフェイスなのがいい。」
「見た目、おとなしそうなんで、合宿途中で泣きながら帰ったら、どうしようかと思ってたがな。」
「なんですか、それ……。根性だけはあるつもりです。」
明るいチームメイトとの会話に、何とかやれそうな手ごたえを感じていた。
*****
「金剛!手が空いたらこっち手伝え!仕事あるぞ。」
「はい!」
声を掛けてきたのは、二年生のマネージャーだ。
一年生には雑用全般が振り分けられている。
禎克は、洗濯洗剤の買い出しを任され近くのスーパーまで行くことになった。
「一人でおつかい大丈夫か~?一年生。」
「一緒に行ってやろうか?」
「チャリ有るんで大丈夫です。」
「迷うなよ。」
「地元ですから。」
「ばか。そこは「ひとりでできるもん」って、返すんだよ。」
夕暮れの風が熱のこもった身体には心地よかった。スーパーで目的の物を買い、袋に入れている時、ふと置かれたチラシの束が目に入った。
「あ……。」
トン……と鼓動が高く跳ねた。
「劇団醍醐……?」
割引券の艶めかしい花魁の姿に、懐かしい既視感を覚えた。
その姿に、見覚えがあった。
自分の持っているお守りの写真の背景に、同じポーズのポスターが写っていた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
拍手もポチもありがとうございます。励みになっています。
劇団醍醐が、ご当地再び参上!です。いよいよ逢えるかな~(*⌒▽⌒*)♪ 此花咲耶
にほんブログ村
- 関連記事
-
- 禎克君の恋人 15 (2012/08/11)
- 禎克君の恋人 14 (2012/08/10)
- 禎克君の恋人 13 (2012/08/09)
- 禎克君の恋人 12 (2012/08/08)
- 禎克君の恋人 11 (2012/08/07)
- 禎克君の恋人 10 (2012/08/06)
- 禎克君の恋人 9 (2012/08/05)
- 禎克君の恋人 8 (2012/08/04)
- 禎克君の恋人 7 (2012/08/03)
- 禎克君の恋人 6 (2012/08/02)
- 禎克君の恋人 5 (2012/08/01)
- 禎克君の恋人 4 (2012/07/31)
- 禎克君の恋人 3 (2012/07/30)
- 禎克君の恋人 2 (2012/07/29)
- 禎克君の恋人 1 (2012/07/28)