風に哭く花 1
「おはよう係」という別名を持つ、登校してくる生徒たちへの声掛け係に推薦されて、翔月は断りきれなかった。
小学生ならともかく高校生にもなって、朝の挨拶運動なんてかったるいにもほどがある。目立たないし、生徒会ともクラス役員とも縁がないのに、なんでぼく……?……と心の中で思っていても、翔月は嫌ですとはっきり口に出来なかった。
「よっしゃ~、更科で決まりな。」
「ラッキー!」
「良かった~、ありがとう、更科君。」
周囲は露骨に、面倒事から逃れられた嬉しさに沸いていた。
翔月がおはよう係になったと聞いて、生徒会長でもあり野球部キャプテンでもある幼馴染の荏田青児(えだせいじ)は、翔月を呼び出すとロッカーを足でガンと蹴った。
二人きりで話をしたいとき、隣のクラスの青児は、職権を利用し生徒会室に翔月を呼んで話をする。
翔月がちらりと見ると、青児はかなり怒っていた。
「青ちゃん。もう決まったんだ。」
「……ったく。おれが同じクラスだったら、ちゃんと止めてやったのに。」
「なんで断らないんだよ。朝、低血圧で起きられなくて、辛いんだろ?おはよう係何て、運動部の朝練よりも早く登校しなきゃいけないんだぞ。また、貧血で倒れるぞ。それでなくても、丈夫じゃないのに。」
「……何とかなるよ。」
「なぁ。翔月は、いつも視線を落として、誰かと目を合わすこともないだろ。今度みたいに気に入らないことがあっても言い返さないしさ。体よく利用されたってわからないのか?」
荏田青児は翔月に文句を言うときは、いつも饒舌だった。まるで年上の兄のように、翔月に接していた。
「いくら大人しいって言っても、限度があるんだよ。大体さぁ、翔月は嬉しいとか悲しいとかの感情表現が乏しすぎる。中学の時は、そんなじゃなかった。もっと笑ってたよ。一体どうしたんだよ。」
「どうしろというの……?」
「我慢しないで、嫌な時は嫌だって言えって言ってるの。最近の翔月見てると、おれ、何か歯がゆくてイライラすんだよ。何考えてるか、わかんなくてさ。」
「なんで、青ちゃんがイライラするの?ぼくのことなんて、どうせ他人事じゃん……?」
そう言うと、青児は黙りこくって悲しそうな顔になった。
ごめんね、青ちゃん……と、翔月は心の中で、背を向けた青児に詫びた。
青児の言いたいことはわかる。
青児が、翔月のことを本当に心配してくれていると、翔月にはちゃんとわかっている。
例え弟のように思っているのだとしても、自分の事を大切に思っていてくれているのは確かだった。
新しいお話しでっす。(`・ω・´)
うじうじしている翔月くんと、しっかり者の青児くんは高校二年生です。
(´・ω・`) 翔月「おはよう係になった……」
( *`ω´) 青児「ちゃんと断れ!」
(つд・`。)・゚+翔月 「だって……」
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