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風に哭く花 2 

何故こんな風に、青児にそっけなく言ってしまうのか。
理由は簡単だ。
投げやりに見えるのは、もうとっくに諦めてしまっているからだ。
誰かに期待するような子供っぽい感情は、とうに捨てたんだと、翔月は必死に自分に言い聞かせていた。

なぜなら……翔月には、誰にも言えない秘密がある。
それは青児だけでなく、決して誰にも打ち明けてはならない秘め事だ。

口にはしないが青児は今も、翔月の事を何も知らない清らかな子供だと思っている。
あまり丈夫じゃない翔月を、誰に言われるでもなく毎日傍に居て、陰になり日向になりして大切に扱って来た。
まるで恋人同士みたいと、周囲にからかわれても、笑って気にせず離れなかった。

しかし青児が、穢れのない少年だと思っている翔月は、青児が現実には知らない大人の世界を、先に知っている。
それは望んだものではなく、何の予備知識もなく踏みにじられるようにしてこじ開けられた扉だったけれど。

*****

翔月の見た目は、女の子みたいに優しげで、小動物みたいにおどおどして可愛いかもしれない。れっきとした男子だが、少なくとも女子の恋愛対象にならないことは確かだった。青児だけでなく、周りは皆、咬みつかない愛玩動物か発育不良で年相応に見えない子供のように思っているだろう。ありがたくもない「可愛い」という形容詞は高校生になった今でも、幾度も翔月の上に降り注いでくる。

翔月は男らしくない自分の小さな白い顔も、華奢な身体も大嫌いだった。青児に迫られて、結局いつものように足元に泳がせた視線を落とす。
青児に本当のことを知られるのが怖くて、目を合わせられない。まして、秘密を打ち明けたり出来なかった。
心の底では物心つくころから青児が好きだったが、どんなに好きでも、もう翔月は青児のものにはなれない。青児の大切な翔月は、とうに他の誰かのモノになっていた。
俯いたきり、唇が震える。
……もう、いっそ打ち明けてしまおうか……と、思った時、ふと自分のシャツの袖口に目が留まった。

「あ……」

カッターシャツで隠れた手首から、赤いみみずばれになった縛めの痕が覗いていた。
ぷくりと熱を持った胸の突起が、シャツに擦れる度、痛いようなむず痒いような感覚が背筋を走る。

「もういい、好きにしろっ!翔月のバカ。」

「青ちゃん……」

生徒会室の扉を乱暴に締めて、幼馴染の青児は翔月を置き去りにした。
こんなにも近くに居るのに、こんなにも遠い。
閉ざされた頑なな扉に向かって、翔月は小さく咽んだ。
寂しい胸を抱えて、その場に一人うずくまるとひとしきり泣いた。

「青ちゃんっ……行かないでよ……」

「一人にしないで……た……すけて……」

もの言わぬ翔月の哀しみが、青児に届くことはない。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

(´;ω;`) 翔月「……青ちゃん……」

(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚そのうち、ちゃんと気持ちが伝わるといいね。

翔月の秘密は一体……?


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