風に哭く花 29
「柏木先生の住所を教えてください。」
「そうは言ってもなぁ、荏田。一応、規則で、教職員の住所は生徒には教えないことになってるんだ。」
「先生には迷惑かけません。」
青児は食い下がっていた。
「翔月を迎えに行くだけです。翔月の母ちゃんは、親の介護とかで午前中はいないから、家に連れてかえっても誰も居ません。昔から、翔月が倒れた時は、おれの家で帰りを待ってたから、その方が安心だと思います。それに翔月は人見知りで気を使うから、先生の家になんかいったら、具合が悪くてもきっと我慢してしまう。」
「まあ、ちょっと待て。そうか、お前ら家も近所だったな。」
「はい。幼馴染です。翔月は、おれには本当のことを言うから……」
「さて……どうしたもんかな。まあ、他の誰かに教えたら問題になるだろうが、荏田ならいいか。……一応、柏木先生に直接聞いてみよう。」
個人情報の流出になるとかで、最近は教師間でも何かと面倒なんだと、担任は渋面のまま告げた。青児は早く柏木の腕から翔月を取り戻したくて、急いていた。
「……はい、はい。では、そのように。更科は今は、落ち着いてるんですね。わかりました。荏田にはそのように伝えます。」
青児は担任の電話をもぎ取って、翔月に触るなと叫びたい衝動に駆られたが、何とか耐えた。翔月が家に帰らず、あのまま柏木の元に居るのは確かなようだ。
「荏田。お前の言う通りかもしれない。更科はもう気分が良くなったとかで、病院には行かないと言っているそうだ。一応、大事を取って、柏木先生の自宅で休ませているから、迎えに来てやってくれとさ。駅東口から見えるマンション○○の408号室だそうだ。コンビニの真裏だから、わかるか?」
「わかります。古いマンションですよね。」
「ああ。もうすぐ建て替えするらしい。」
そんな話は、正直どうでも良かった。
*****
青児は一目散に、柏木のマンションへと向かった。
自転車を乗り捨てて、青児は柏木のマンションの階段を一気に駆け上がった。野球部の青児は毎日10キロは走るから、そのくらいの運動量で息が上がることはない。
408号室のプレートを見上げて、ベルを押すかどうか躊躇する。しばらく悩んで、ドアノブに手を掛けたら鍵はかかっていなかった。
思ったよりも扉は軽く、音も無く内側へと開いた。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
とうとう、柏木のマンションまでたどり着いた青児です。
一体、そこで翔月は何をされているのか……青児は許せるのか……
続く~~ ヾ(〃^∇^)ノ
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「青ちゃん、此花がいじめる……」
|ωФ)ψ 「うふふ……」
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