風に哭く花 25
互いに求めていながら、二人は互いの手を振り払ってしまう。
これまでも二人は、些細な喧嘩を何度もしてきた。
いつも青児が翔月を一方的に叱っているようにも見えた。
それでも少し時間が経てば何事もなかったように、元通りに翔月は寄り添った。部活に入っていない翔月は、教室かグラウンドでじっと野球部の練習が終わるのを待って、帰宅はいつも二人仲良く一緒だった。
その日、久し振りに逢った翔月は、別人のようにげっそりとやつれて面変わりしていて、級友たちを驚かせた。
「どうしたんだよ、更科。夏休み入って寝込んでたのか?」
「夏バテか~?やつれちゃって、ひでぇな、目の下の隈。」
「ん……」
その姿に、翔月を捕まえたら穏やかに話をしようと思っていた青児の決心は、あっさりとどこかに消え失せ、思わず怒声をあげた。
「ばか、翔月!何て顔してんだよ。ちょっと来い。話がある。」
「あ……」
生徒会室に引き込まれて、翔月は青児の詰問を受けた。
誰と何があったかなど、青児に報告できるはずもない。
「な……にがって?久しぶりだね……青ちゃんは真っ黒になってる。やけたね。」
「そんなことを言ってるんじゃない。休みに何が有ったか話してみろって言ってるの。何でもないなら言えるだろ?おれに内緒で、一週間何やってたんだ?」
「別に……塾に行くって、ちゃんと言ったじゃない。」
「おれが納得するような、まともな言い訳をしろよ?塾に行くと翔月はそんな風に、白い顔になるのか。何だよ、その手首。休み前より痩せただろ?」
「あ、暑いから……夏バテしたんだよ……。体力無いの、知ってるでしょ。」
「じゃあ、一度も携帯が通じないのは、どんな理由だ?一週間、ずっと家にも帰ってないのは何故だ?駅前の進学塾に、更科翔月と言う生徒はいないそうだけど?」
一瞬、驚いたように青児を見つめた翔月は、なんとか考えて言い訳を引っ張り出した。
「え、駅前の進学塾じゃないから……」
「おばさんには言ってないけど、この辺の奴が通う塾はみんな調べた。」
「……」
「それに、夏休み初めから合宿してる塾は、県内のどこにもない。塾だって言い張るなら言ってみろ、塾の名前。」
翔月に言葉はなかった。青児が家に来たことは母親から聞いて居たし、その日誰かの家に泊まったことは、もうすでに青児は知っている。それでも隠し通さなければと、思った。
「……一から十までみんな青ちゃんに報告しなきゃいけないわけ?ぼくにだって、青ちゃんに話せないことの一つや二つあるよ。いつまでも、お手々つないで仲良しこよしって年でもないでしょ。そこまで調べたなんて、まるでぼくのストーカーみたいだね。」
「心配して悪いか!」
青児の頬に朱が走る。気分を害させてしまったと、わかる。
翔月は思わず、視線を外した。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
どうなるのかな……(´・ω・`) 「青ちゃん……怒らせちゃった……」
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