風に哭く花 28
何故か確信が有った。
校舎裏の職員駐車場に、青児は駆けた。
「くそっ……」
いつか柏木は、翔月を捕らえて虐めた。
初めて翔月と思いが通じた日、めくったシャツの下に、赤くぷくりと腫れた痛々しい胸の小柱を見つけた。仰天した青児が相手は誰だと詰め寄った時、ごめんね……と、翔月は俯いて小さな声で打ち明けた。
とうに終わった話だと思っていた。
自分の腕の中で、赤く染まった目元で見上げた翔月は、何が有っても青児が好きだと頬を染めた。
「何が有っても……」
翔月はそう言ったはずだ。
何が有っても……?
違う。
「信じてね、何が有っても……」だ。
「翔月!!」
白い車体が裏門から出てゆくのが見えた。
今、手を離したら、もう二度と翔月が自分の元に戻ることはないような気がする。
懸命に追ったが、青児は間に合わなかった。
白い車体は、陽炎の立つ道路を音も無く走り去った。
「翔月――っっ!!」
*****
青児の呼んだ声は確かに届いた。
小さくなってゆく青児をルームミラーで確認すると、柏木はいいのかいと翔月に振った。
「荏田君が一生懸命走って来るよ。止めようか?うさぎちゃん。」
翔月の頬を、透明な滴が幾つも転がってゆく。
「そんな顔をさせるために、登校させたんじゃなかったんだけどなぁ……。俊哉が行かせろっていうから学校に連れて来たのに、うさぎちゃんはいつも何だか泣いてばかりだね。荏田君と喧嘩でもしたの?」
「……うっ……うっ……」
「大分素直になって喜んでいたのに……うさぎちゃんは、荏田君にはまだ素直になれないんだね。……帰ろうか。」
柏木の言う「帰ろう」が、どんな意味を持つのか、翔月はぼんやりと柏木の方に視線を送った。ぞくりと思わず震えたのは、恐怖のせいだけではない。
緩く縛められて、忍び込んでくる二人の長い指を想像した。
入り口をこじ開けて、しつこく肉襞の内側をこすられると、深いところで眠る快感の種が芽吹こうと疼く。
翔月の持つ嗜虐の質が、密やかに芽吹こうとしていた。
凌辱と羞恥の時間に、なだめられるように口腔を蹂躙され、この指が青児のモノだと思いながら吐精する瞬間、その場に青児はいない。
煽られながら、責められながら、征服者の腕の中で甘く溶けてゆく自分を感じていた。清潔な青児には似合わない、淫らな自分を恥じた。
「青ちゃ……ん……」
傍に居ない青児を求めて、翔月は泣いた。
青児の知らない、爛れた(ただれた)自分になってしまう前に、思い切り青児に愛してほしかった。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。(〃゚∇゚〃)
(´;ω;`) ←だんだん、わけわからなくなってる翔月
ヾ(。`Д´。)ノ ←自分に腹を立ててる青児
ヾ(〃^∇^)ノあはは~
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