風に哭く花 24
「見て、俊哉。うさぎちゃんは、こうされるのが好きなんだよ。だから、かまってあげないと……。ねぇ、俊哉は知ってる?うさぎってね……寂しいと死んじゃうんだよ。」
それは誰かの作り上げた嘘っぱちだ。
そう言いかけて、俊哉は言葉を飲み込んだ。
俊哉の知る柏木直樹は、過去に大切な人を失って自暴自棄となり、命を落としかけた。
それを知っている俊哉には、今もまだ血を流し続けている恋人が何をしようとしているのか、見守るしかなかった。
数回、青児を受け入れたことのある翔月の最奥は、色だけを強くして、固く柏木の指を締め付けていた。
青児以外の誰も受け入れたくないと、翔月が必死にそうしているわけではなかったが、柏木の目には幾度か繰り返した虚しい吐精前の抵抗に見えた。
深いところで蠢こうとする異物から何とか逃れたくて、翔月は必死に頭を振り哀願した。
「せんせい……、もう、やめて、ください。おかしくなるっ。放せっ……ああぁっ。」
逃げようとする腰を引き寄せて、柏木は翔月を覗き込んだ。泣きぬれた頬は、もうぐしゃぐしゃになっている。そっとタオルでふき取ってやると、柏木はふと悲しそうな顔をした。
「素直にならないと、辛いのは翔月くんだよ。うさぎちゃん……ここは?」
「ああーーっ!……」
狭い入口でしばらく抜き差しされていた指が、くっと深く差し入れられた。知らない内奥をこすられて翔月は瞠目した。
これまでに体験したこともない快感が、いきなり瞬時に沸点に到達し、押さえきることはできなかった。
「やだ――!見るなっ。ああっ、青ちゃんっ……青ちゃんっ……」
がくがくと小刻みに腰を揺らして、滑らかな腹に白い花が散る。
泣きながら震えながら、自分の腕の中で果てた翔月を柏木はそっと抱きしめた。
まるで失神したように、虚ろな目を向ける翔月に柏木はねぎらいの口づけを贈った。
「可愛いうさぎちゃん。早く身も心も自由になると良い。手伝ってあげる……」
その様子をじっと見つめていた俊哉は、ふっと一つ息をつくと寝室を後にした。
築年数が古く、両隣りと階下の部屋は空き室なのが幸いだった。翔月の洩れる悲鳴を聞く者はいない。
「ん?」
リビングの、二人が剥いだ翔月の衣類の中に、俊哉は何かを見つけた。
制服のポケットから転がり出た白いボールを見つけると、俊哉はしばらく「夏二回戦突破荏田青児」と書かれた文字を見つめていた。
やがて俊哉はPC画面を開くとアドレスを確認し、書かれた文字の下にボールペンで小さく何かを書き込んだ。
本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)
柏木の真意はどこに……?
俊哉は翔月の救世主となるのか……?
青児は翔月と元通りになれるのか……?
(´;ω;`) 「青ちゃん……」←ぴんちのまんま、M属性の翔月。
( *`ω´) 「くそ~、此花のやつ~」
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