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純情子連れ狼 12 

双葉を隼と周二に託した朱美は、その頃、思い詰めた目をして、中国マフィアの巣食うビルを見上げていた。

「ここね。」

自分なりに調べ上げて、やっと見つけた場所だった。

華美な総刺繍の赤いチャイナドレスに肉感的な身を包み、派手な化粧をした朱美は軽く黒髪をかき上げた。とても子供を産んでから、まだ一年経っていないとは思えない抜群のスタイルだった。
太腿に暗器を仕込んでいるが、細身の刃物は表には響いていない。ある決意を秘めていた。

「張……」

ここに目指す仇が潜伏している。

会ったことのない美しい女豹が、正面玄関から堂々と入って来たのを警備の数人が認めたが、誰も咎めなかった。誰かが小さく誘うように、口笛を吹いた。
朱美は口笛を吹いた男に、艶然と微笑み投げキスを贈った。
その派手な様子を眺めて、おそらく退屈した男が馴染みの女を呼びつけたと彼らは思っている。関西から落ちてきた張はただの鉄砲玉だったが、張に襲撃を命じ大仕事を成功させた兄貴分の趙は、既に破格の待遇を受けていた。外出は制限されているが、出前や女を呼ぶなどは自由だった。
組長がなくなり代が変われば、墨花会の大幹部の座が転がりこんでくる。張の手柄を独り占めにした趙の気が大きくなるのは、当然だろう。中国人マフィア同胞にとっても、趙は成功者だった。

ロビーに、ヒールを打ち付ける高い靴音が響く。

「張はどこかしら?……ああ、こいつら日本語通じないのね。面倒くさい。在哪里有張?」

「来見了。(会いに来たわ)」

男たちは張と聞き、顔を見合わせた。ここにいるのは、その兄貴分の趙だ。だが、朱美の零れる色香に頷くと奥のエレベーターを指さした。うっかり帰らせて、後で叱咤される方が面倒だ。

「……是4樓的内部的房間。(4階の奥の部屋だ。)」

「明白了。謝謝。(わかったわ。ありがとう。)」

蕩ける笑みを贈った女は、たむろしていた男たちに軽く手を上げた。
その姿はどう見ても、彼らには決して手の出ない高級コールガールだった。
シュッ……
*****

背後で、何か黒い影が走った気がして、朱美は振り向いた。

「ぐっ!」

「ぐぁっ……」

「げっ!」

突然、先ほどまで視線に熱を込めた男たちが、小さく声を発してその場にくたりと人形のように沈んだのが見えた。

「……えっ!?何……?刺客?」

黒革のジャンプスーツにサングラスで顔を隠した三人の男が、的確に急所を突き倒していた。思わず朱美も、身構えてしまう。

「馬鹿野郎、朱美っ!何一人で突っ走ってんだ。」

「え?周ちゃん?こいつら撃ったの?」

「このくらいの相手に、ぶっぱなすかよ。手刀で十分だ。」

「……つか、何よ、その格好。まじ、受けるんですけど。」

「仕方ねぇだろ。木本が形から入りてぇって言うから。ほら、トム・クルーズのミッションなんとかのあれだよ。こいつの付き合ってる蒼太ってやつが好きなんだよっ。」

「ミッション・インポッシブルです。周二さん。」

「そんなことは、どうだっていいんだって。」

サプレッサー(減音器)の付いた銃を背負ったのが、木庭組の木本だと知り、緊張を失った朱美は、ふっと気が抜けてその場に崩れそうになった。玄関近くに設置してある防犯カメラは既に叩き壊されていた。ぬかりはない。

「おまえも面倒くさいやつだな。はなっから、ちゃんと話をすりゃあ、手を貸してやったのに。ほら、肩につかまれ。」

「張一人くらいあたしでも何とかなると思ったのよ。それに戦争は小さな方が良いわ。情けないけど、今回の抗争は墨花会の内輪もめだもの。多分、相手は英の身内を全部バラすつもりよ。」

「墨花会の血統を、全部無くして自分が丸ごと頂く気なんだろ?だけど、言っとくがな、朱美の尋ね人はここにはいねぇぞ。鉄砲玉の張って奴を捜してんだろ?」

「ええ。」

「ここにいるのは、張の上前をかすめている兄貴分の男だ。実行犯の張って奴は、若頭が昔面倒を見てたちっぽけな組に放り込まれてた。敵も馬鹿なりに少しは考えて、身柄を隠したみてぇだな。俺等が引きずり出して拘束してあるから、煮るなと焼くなと好きにしろ。身柄はばあちゃんの所だ。」

松本の用意した車に乗り込み、急いでその場を去りながら、朱美は驚きを隠せなかった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

「あ・うん」の呼吸で木庭組は動いているようです。参謀はこうではなくてはね。(〃゚∇゚〃) ←名前だけ出演の蒼太はおっさん木本の、若い一途な恋人だったりします。
やはり、墨花会と関わりのあった朱美。双葉の元へ早く帰ってこれますように。
(`・ω・´)ま、俺がいるから大丈夫だな。
|゚∀゚)ほんと……?
■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ


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4 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

>  『お・おはよう、き・木本さん、…くん。さて 今回の君の任務だが…』
> と、きっと 蒼太は 緊張しながらも 嬉々として このセリフを録ったに違いない!

(〃ー〃)ば、ばれてる……←蒼太
イーサン・ハントに似ていると、ひそかに思っている蒼太なのです。120パーセント割増なのね。
>
> 蒼太のラブコールが効いたのか 木本も 気合十分に頑張ってますね。
> もちろん 周二も!

(`・ω・´)いつまでも、ヘタレのままでいられないからな。

> 案じていた割に 事は すんなりと進んでいるようで 良かった~♪
> でも 安心するには まだ早いですよね。
> どこで 何が起こるか 分かりませんもの キョロ(∇ ̄ ;)(;  ̄ ∇)キョロ

あ、探してる~。事件の匂いは、さぶちゃんの鼻で嗅ぎ付けてもらいましょう。

> 『…なお この(DVD)テープは 自動的に消滅する。
> … ふぅ 終わったぁー、緊張したぁー上手く 録れたかな?...ゴソゴソ、ガサガサ...
> 木本さん、愛してるから 頑張ってね~♡(*ノωノ)キャ…』と、スイッチオフを忘れ 
> その後も 延々と その様子は 映っていたのを 蒼太は知らない
> そして そのテープが もちろん 自動的に消滅しない事も...
>
> 「これは 俺の大事なお宝にするぜ、蒼太(´▼ω▼)y─┛ニヤ...byebye☆

(〃゚∇゚〃) きゃあ~。うれしいss仕立てのコメントです。
子猫の目をした蒼太は、きっと嬉々として吹き込んだんだろうなぁ……

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2013/10/08 (Tue) 20:10 | REPLY |   

此花咲耶  

nichika さま

> さすが朱美さん 組育ち 肝が座っているゎ よ!姉御肌

 ヾ(〃^∇^)ノお~ほっほ。nichika さんに褒められましたわ。

> 周二くん いつになく良いぞ  木本さんが背後で策略を練ったんでしょうね  「ミッション・インポッシブルです」 周二くんなら「「ミッション・インポッ」ってぁ かみそう... ガッ☆`Д´)ノ  すまぬ、、

( *`ω´) 「こら~。インポッ……で噛むのかよ。あのな~、ミッション・インポッ……あっ……」
[壁]ω・)チラッ←どうやら、噛んだらしい……残念すぎる。
>
> しかしバックに流れるBGMは さぶちゃん( ̄●● ̄) (お借りしました笑)
> 煮る・焼き・蒸す・揚げるなり 好きにしよう🎶

もうさぶちゃんにしか見えない絵文字……(〃゚∇゚〃) 「さぶちゃん、好き~、かっこいいよね~」

かっこいい感じで進めたいです。(`・ω・´)……でもBGMはさぶちゃんなのだ。 (´-ω-`)
コメントありがとうございました。 ヾ(〃^∇^)ノ

2013/10/08 (Tue) 20:00 | REPLY |   

けいったん  

M.I.P

 『お・おはよう、き・木本さん、…くん。さて 今回の君の任務だが…』
と、きっと 蒼太は 緊張しながらも 嬉々として このセリフを録ったに違いない!

蒼太のラブコールが効いたのか 木本も 気合十分に頑張ってますね。
もちろん 周二も!

案じていた割に 事は すんなりと進んでいるようで 良かった~♪
でも 安心するには まだ早いですよね。
どこで 何が起こるか 分かりませんもの キョロ(∇ ̄ ;)(;  ̄ ∇)キョロ

『…なお この(DVD)テープは 自動的に消滅する。
… ふぅ 終わったぁー、緊張したぁー上手く 録れたかな?...ゴソゴソ、ガサガサ...
木本さん、愛してるから 頑張ってね~♡(*ノωノ)キャ…』と、スイッチオフを忘れ 
その後も 延々と その様子は 映っていたのを 蒼太は知らない
そして そのテープが もちろん 自動的に消滅しない事も...

「これは 俺の大事なお宝にするぜ、蒼太(´▼ω▼)y─┛ニヤ...byebye☆

2013/10/08 (Tue) 16:34 | REPLY |   

nichika  

あらカッコいい!

さすが朱美さん 組育ち 肝が座っているゎ よ!姉御肌
周二くん いつになく良いぞ  木本さんが背後で策略を練ったんでしょうね  「ミッション・インポッシブルです」 周二くんなら「「ミッション・インポッ」ってぁ かみそう... ガッ☆`Д´)ノ  すまぬ、、

しかしバックに流れるBGMは さぶちゃん( ̄●● ̄) (お借りしました笑)
煮る・焼き・蒸す・揚げるなり 好きにしよう🎶

2013/10/07 (Mon) 22:09 | EDIT | REPLY |   

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