純情子連れ狼 １９
「ほら。双葉。母ちゃんが来たぞ。隼から離れて、母ちゃんのとこに行けよ。離れろって！」
「たぁーっ！」
「あっ、こら、暴れるなって。落ちるぞ、こら。」
「双葉ちゃん、ぼくのこと護ってるみたいだよ。ほら、周二くんと同じ強い目をしてるもの。かっこいいねぇ、双葉ちゃん。」
「ぷ～ぅ♡あ～ぃ。」
「……人相悪いぞ、双葉。言っておくけどな、隼は俺の……」
「かぷっ。」
「いっ、いててっ、噛むな、こら！くそ餓鬼～！」
「あはは……双葉ちゃん、頑張れ～！」
朱美の懐に戻った双葉を眺める隼は、うれしそうだった。
＊＊＊＊＊
店内にいた先代の妾は、全てを聞き蒼白になった。
その場に手を突き、隼に頭を下げた。
「ごめんよ、隼ちゃん。あたしの考えが、少々甘かったようだ。朱美の事は、何も教えない方が良いと思っていたんだが、とんだとばっちりだったね。まさか、隼ちゃんと双葉が狙われるなんて思わなかった。あたしの読みが甘かったよ。この通りだ。」
「ううん。もし聞いていたら、あの男の人が知ってるかって言った時、ぼくは上手く嘘をつけなかったかもしれない。教えなかったばあちゃんは、正しいと思うよ。ね、周二くん。」
「ああ。俺にも油断があったんだ。隼が危ない目に遭ったのは、ばあちゃんのせいじゃない。俺が迎えに行かなかったせいだ。くそ親父にも、ちゃんと報告する。」
突きつけられて、隼の肩を貫通したはずの弾は、奇跡的にベビーキャリアとシャツをかすり穴を開けただけだった。後、数ミリずれていたら、二人とも大怪我をするところだった。空を駆ける周二の放つ強大な気圧に、おそらく趙は手元を狂わせたのだろう。
ほんの少し赤くなっただけの肩に、妾はぺたりと湿布を貼った。
「そう言ってくれて、ほっとしたよ、隼ちゃん。本当にご苦労だった。怖い目に遭わせてしまったけど怪我がなくて、本当によかった。隼ちゃんに何かあったら、あたしは沢木さんにあわせる顔が無くなる所だった。」
「だいじょうぶ。少しくらいの傷は漢（おとこ）の勲章ですから。こういう危ない時の為に、大山流空手も習っているし。(｀・ω・´)」
「え？隼ちゃん、空手なんぞ習ってるのかい？」
周二は驚いた妾に向かって、小さくないないと手を振って見せた。
「通信だけどな。」
「先月、６級に昇級しました。」
「マジかよ。大山流空手って、一体どんなシステムなんだよ……いや、すげぇな、隼。惚れ直すぜ。」
「うふふ～。ほら。」
隼は柔らかいぷにぷにの力こぶに、力を入れた。
＊＊＊＊＊
「双葉を世話してて、学校を何日もお休みしちまったんだろう？勉強の方は大丈夫かい？」
「まだ、行事ばっかりだったから大丈夫。それにね、双葉ちゃんと一緒にいるのすごく楽しかった。ねー、双葉ちゃん♡」
「あ～ぃ……ちゃん～♡」
「隼ちゃん。いま、双葉何か言ったかい？」
「双葉ちゃん、なぁに？」
「あ～ぃ……ちゃん～♡」
「ちゃん～？それ、ぼくの事？」
「ぷ～ぅ♡」
「まぁ。隼ちゃんの事だよ。隼ちゃんが双葉ちゃんって呼ぶからかね、ちゃんとわかっているようだよ。」
「双葉ちゃん～♡」
「ちゃん～♡」
「ほらっ、ほらっ。周二くん。双葉ちゃんがぼくの事、ちゃんって呼んだよ！きゃあ～。」
「けっ。しとしとぴっちゃんかよ。朱美、いっそ双葉の名前変えて大五郎にしろよ。」
「殺すわよ、周ちゃん。」
「しとしと……って、なぁに？」
「あたしの好きな時代劇の、子連れ狼だよ。萬屋錦之介が渋くてね～、覚えてたのかい、周二。」
「ああ。ガキの頃、毎日見たくもないビデオ見せられてたからな。子連れ狼って呼ばれている拝一刀には大五郎ってガキがいてさ、帰らない父親を寺の軒下とか、あばらやで一人ぼっちで待ってるんだ。で、父親の姿が見えた時に、大五郎が思いを込めて叫ぶんだ。ちゃ～んってな。」
「ぷ～ぅ……ちゃん～♡」
「可愛い～、双葉ちゃん♡」
「なぁ、朱美。せっかく俺に似てるんだし、もう、こいつ置いて関西に帰れよ、俺の子だって言っただろ？親権、俺にくれ。隼に懐いているしな、二人で育てる。」
「駄目。この子は、正真正銘、英龍水の子よ。式をする前にこんなことになったけど、組の事はともかくとして、帰ったら籍入れるわ。周ちゃんも、本当は違うって知ってたんでしょ？」
「ま……っ、まぁなっ！どの道、従姉弟同士なんだ。顔が似てたって不思議じゃないだろ？」
「朱美さん。双葉ちゃんのおしりのほくろ、消えそうだよ。もう一回マジックで描く？」
「は～、マジック～？！……つか、隼は知ってたのか？俺だけかよ。」
うふふ～、周二くんのあんぽんたん～……と隼は笑う。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃ﾟ∇ﾟ〃)
ばあちゃんは隼が襲われたと聞いて、ものすごくショックを受けました。
でも、周二が守ってくれてほっとしています。後、残すところ二話とおまけになりました。
よろしくお願いします。
「たぁーっ！」
「あっ、こら、暴れるなって。落ちるぞ、こら。」
「双葉ちゃん、ぼくのこと護ってるみたいだよ。ほら、周二くんと同じ強い目をしてるもの。かっこいいねぇ、双葉ちゃん。」
「ぷ～ぅ♡あ～ぃ。」
「……人相悪いぞ、双葉。言っておくけどな、隼は俺の……」
「かぷっ。」
「いっ、いててっ、噛むな、こら！くそ餓鬼～！」
「あはは……双葉ちゃん、頑張れ～！」
朱美の懐に戻った双葉を眺める隼は、うれしそうだった。
＊＊＊＊＊
店内にいた先代の妾は、全てを聞き蒼白になった。
その場に手を突き、隼に頭を下げた。
「ごめんよ、隼ちゃん。あたしの考えが、少々甘かったようだ。朱美の事は、何も教えない方が良いと思っていたんだが、とんだとばっちりだったね。まさか、隼ちゃんと双葉が狙われるなんて思わなかった。あたしの読みが甘かったよ。この通りだ。」
「ううん。もし聞いていたら、あの男の人が知ってるかって言った時、ぼくは上手く嘘をつけなかったかもしれない。教えなかったばあちゃんは、正しいと思うよ。ね、周二くん。」
「ああ。俺にも油断があったんだ。隼が危ない目に遭ったのは、ばあちゃんのせいじゃない。俺が迎えに行かなかったせいだ。くそ親父にも、ちゃんと報告する。」
突きつけられて、隼の肩を貫通したはずの弾は、奇跡的にベビーキャリアとシャツをかすり穴を開けただけだった。後、数ミリずれていたら、二人とも大怪我をするところだった。空を駆ける周二の放つ強大な気圧に、おそらく趙は手元を狂わせたのだろう。
ほんの少し赤くなっただけの肩に、妾はぺたりと湿布を貼った。
「そう言ってくれて、ほっとしたよ、隼ちゃん。本当にご苦労だった。怖い目に遭わせてしまったけど怪我がなくて、本当によかった。隼ちゃんに何かあったら、あたしは沢木さんにあわせる顔が無くなる所だった。」
「だいじょうぶ。少しくらいの傷は漢（おとこ）の勲章ですから。こういう危ない時の為に、大山流空手も習っているし。(｀・ω・´)」
「え？隼ちゃん、空手なんぞ習ってるのかい？」
周二は驚いた妾に向かって、小さくないないと手を振って見せた。
「通信だけどな。」
「先月、６級に昇級しました。」
「マジかよ。大山流空手って、一体どんなシステムなんだよ……いや、すげぇな、隼。惚れ直すぜ。」
「うふふ～。ほら。」
隼は柔らかいぷにぷにの力こぶに、力を入れた。
＊＊＊＊＊
「双葉を世話してて、学校を何日もお休みしちまったんだろう？勉強の方は大丈夫かい？」
「まだ、行事ばっかりだったから大丈夫。それにね、双葉ちゃんと一緒にいるのすごく楽しかった。ねー、双葉ちゃん♡」
「あ～ぃ……ちゃん～♡」
「隼ちゃん。いま、双葉何か言ったかい？」
「双葉ちゃん、なぁに？」
「あ～ぃ……ちゃん～♡」
「ちゃん～？それ、ぼくの事？」
「ぷ～ぅ♡」
「まぁ。隼ちゃんの事だよ。隼ちゃんが双葉ちゃんって呼ぶからかね、ちゃんとわかっているようだよ。」
「双葉ちゃん～♡」
「ちゃん～♡」
「ほらっ、ほらっ。周二くん。双葉ちゃんがぼくの事、ちゃんって呼んだよ！きゃあ～。」
「けっ。しとしとぴっちゃんかよ。朱美、いっそ双葉の名前変えて大五郎にしろよ。」
「殺すわよ、周ちゃん。」
「しとしと……って、なぁに？」
「あたしの好きな時代劇の、子連れ狼だよ。萬屋錦之介が渋くてね～、覚えてたのかい、周二。」
「ああ。ガキの頃、毎日見たくもないビデオ見せられてたからな。子連れ狼って呼ばれている拝一刀には大五郎ってガキがいてさ、帰らない父親を寺の軒下とか、あばらやで一人ぼっちで待ってるんだ。で、父親の姿が見えた時に、大五郎が思いを込めて叫ぶんだ。ちゃ～んってな。」
「ぷ～ぅ……ちゃん～♡」
「可愛い～、双葉ちゃん♡」
「なぁ、朱美。せっかく俺に似てるんだし、もう、こいつ置いて関西に帰れよ、俺の子だって言っただろ？親権、俺にくれ。隼に懐いているしな、二人で育てる。」
「駄目。この子は、正真正銘、英龍水の子よ。式をする前にこんなことになったけど、組の事はともかくとして、帰ったら籍入れるわ。周ちゃんも、本当は違うって知ってたんでしょ？」
「ま……っ、まぁなっ！どの道、従姉弟同士なんだ。顔が似てたって不思議じゃないだろ？」
「朱美さん。双葉ちゃんのおしりのほくろ、消えそうだよ。もう一回マジックで描く？」
「は～、マジック～？！……つか、隼は知ってたのか？俺だけかよ。」
うふふ～、周二くんのあんぽんたん～……と隼は笑う。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃ﾟ∇ﾟ〃)
ばあちゃんは隼が襲われたと聞いて、ものすごくショックを受けました。
でも、周二が守ってくれてほっとしています。後、残すところ二話とおまけになりました。
よろしくお願いします。
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