純情子連れ狼 15
「そろそろ連絡してくるはずなんですが……一度、関西に足を運びますかね。」
各々が思案していると、空気を破って木本の携帯が震えた。
「はい、木本。ああ、親父さん……そうですか。」
「わかったのか?」
思わず聞いた周二に、木本は頷き返した。
「メール転送していただけますか?ここに皆、揃ってるんで。はい、朱美さんにもお伝えしました。……そのように。」
見つめる朱美に、こともなげに木本は伝えた。
「朱美さん。大門は、十三(じゅうそう)の店です。」
しれっと報告する木本に、朱美は驚いた。
周二もそれほど驚いた様子は見せない。想定の範囲内という様子だった。
「親父の所に、女からメールあったのか?木本。」
「はい。ヤサへの襲撃が有ったんで、繋ぎ用の携帯は親父さんに預けてきました。別口に送ってもらったんで、御覧になりますか?」
「貸して!は?……まこちゃん、元気~……?何よ、これ。馬鹿じゃないの?」
「ああ、そりゃ木本の女からのつなぎだ。まこちゃんは、ホストの時の源氏名だ。真人(まこと)ってんだ。」
「……ミワね、十三の「プワゾン」って言うお店で働くことになったの。指名しに来てね♡ミワちゃんの営業は1時までよ♡……。確かに、わかりやすく情報てんこ盛りだわ。これ、あんたの仕事?」
「はい。ミワちゃんは、一時前後に店に顔を出すようです。墨花の姐さんには、親父さんが連絡してくれましたから、そろそろあっちで片付いている頃だと思います。三日天下でしたね。」
「ミワちゃんって……あはは……そうね、大門は確かに美和(よしかず)って名前よ。あんた、使えるわね。木庭組を抜けて墨花会に来ない?うちの人に紹介するわ。調度、若頭の席が空いたところよ。どう?」
朱美は片目をつむった。
「生憎ですが、木本は木庭組が気に入ってますんで、捨て置いてください。」
「欲の無い男ね。気が変わったら、いつでもいらっしゃい。」
大門が使った兄貴分の趙の行方はしれなかったが、誰も気に留めていなかった。後ろ盾の大門を失い、迷走する趙に、誰も加担する者など無い。
僅か数日で、あっけなくけりの付いた抗争だった。
前組長の死を知ってのぼせ上った若頭が、分不相応な欲を掻いただけという、情けない顛末になった。誰の手にかかって若頭が絶命したか、それは明らかにされないまま表向き病死として終結した。奇しくも姐を喪主として、前組長と若頭の合同葬儀が執り行われることになるだろう。
再び、義理ごとのでかい金が動くことになる。大門が世話になった墨花会への、若頭としての最期の孝行、恩返しだった。
「組葬だから、あたしは龍水の代理で葬儀に出るわ。お母さん一人じゃ支度も段取りも大変だろうから、あたしは関西に帰る。周ちゃん、あの子に連絡してくれる?預けっぱなしで、悪かったわって伝えて。」
「わかった。直ぐに連れて来させる。何にせよ、片付いて良かったな。隼が喜ぶ。あいつは人の事でも自分の事と同じように抱えちまうからな。」
「いい子ね。周ちゃんに見る目が有って、良かったわ。伯父さんもあの子だったら、認めてくれるんじゃない?」
「ま~な。」
本日もお読みいただき、ありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
切れる男、木本は時々真面目なんだか、不真面目なんだかわかりません。
なんにせよ、敵の居場所が分かりました。こうなると、彼らの仕事は早いのです。(`・ω・´)
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