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純情子連れ狼 17 

一方、周二に呼び出された隼は、双葉を抱いて妾の店へと向かっていた。
周二の話だと、面倒事が思ったよりも早く片付いたらしい。やっと双葉が、母親の元へと戻れることになったと知り、足も軽かった。

「もしもし……周二くん?」

「隼か?けりがついたんだ。朱美も一緒に、これから直ぐにばあちゃんの店に行くから、双葉を連れて来てくれないか。すぐに松本を迎えにやる。」

「ううん、お迎えは大丈夫。近くまでタクシーで行くから、心配しないで。」

寂しい想いよりも小さな双葉の事を思うと、ただ嬉しかった。
急いで割烹に向かう隼は、ベビーキャリア(抱っこひも)の中で、足をばたつかせる双葉に話しかけた。

「もうすぐママに会えるね。双葉ちゃん。うれしいね~。早く行こう、ね~。」

「きゃ~♡」

*****

「おい、嬢ちゃんよぉ。」

「……はい……?」

音も無くすっと傍に張り付いた、黒塗りの高級車の窓が薄く開き、鋭い目つきの男が声を掛けてきた。
妾の店に続く細い道に入って来たのは、どうみても一般人の車両ではなかった。普通なら、対向できないような細い道に、車両は侵入しない。通り抜けは何とかできるだろうが、この先には、隠れ家的な妾の店の他に、数軒の民家があるだけだった。

「……ちょいと、尋ねてぇことがあるんだが。」

周囲に人がいないのを確かめると、一人の男が降りてきた。
堅気ではない邪な雰囲気を感じとり、隼は思わず後ずさった。

「……なんですか?道に迷ったんですか……?」

「いや。ちょいと聞くが、嬢ちゃんが抱いているのは、墨花会組長のガキかい?」

「……あなたは、誰ですか?」

「趙ってもんだ。あんた、この先の料理屋に行くんじゃねぇのか?俺達は墨花会の女を探しているんだ。」

仔細は何も知らなかったが、勘の良い隼はただならぬ雰囲気に、懐の双葉をぎゅっと抱きしめた。やり過ごさなければ……という思いで、ぶんぶんと首を振った。

「……知りません。誰かと間違えていませんか?ぼくは、この先の大通りに行くのに、近道を通っているだけです。ぼくは捜査一課の沢木という刑事の息子です。この子は家で預かっている親戚の子です。」

運転手が落ち着かない様子で、声を掛けた。

「違うんじゃないっすか、兄貴。それに大門さんが言ってた朱美と言う女は、黒髪ストレートのはずですよ。サツのガキなんぞにうっかり手を出すと、こっちもやばい。早く行きましょう。急いで高跳びしないと、それこそまずいっすよ。大門さんと、同じ目に遭います。」

「ああ?お前はまだ逃げられると思ってるのか?大門さんがしくじっちまった今、仕掛けた奴はどうせ一蓮托生でまとめて殺られるんだ。こいつも行きがけの駄賃だ。あの世に行く前に、どこかに連れ込んでしっぽり可愛がってやるよ。嬢ちゃんも、一緒に三途の川を渡ろうぜ、連れは多い方が寂しくなくていい……車に乗りな。」

「……いやです。ぼくは、急いでるんです。」

「こいつが見えねぇか?素直にならねぇと、二人とも怪我することになるぜ。言う事を聞くんなら、赤ん坊に手は出さないと約束してやるよ。」

「あっ!ふ、双葉ちゃんに触らないで。」

懐に、黒光りのする銃口が見えた。

「……周二くんーっ!」

小さく助けを求める悲鳴が迸った。
周二を呼べば、きっと助けに来てくれる……隼の思いは周二を呼ぶ犬笛になった。

「おい。何を言ってるんだ。さっさとしねぇか。」

「放してっ。」

くるりと背を向けた隼は、その場に双葉を抱え込み固く目をつむった。

「聞き分けのないやつだな。死にてぇのか?……もう俺には失うものはないんだよ。なぁ、いっそ今すぐ逝くか?」

背後で、向けられた銃の撃鉄が引き起こされる硬質な音がした。恐怖で頭が真っ白になったが、隼は双葉を守る為しっかりと深く抱きしめていた。抱え込んでさえいれば、自分の身で弾を受け、小さな双葉を護れると思った。
ふわりとその上から誰かが優しく覆いかぶさった気がする。

『ママ……!パパ!周二くん!双葉ちゃんを助けて……』

心の中で必死に呼びかけた時、ぱんと軽い音が響き、熱が隼の肩に集中した。

「あーっ……!」




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

隼ちゃん、いきなりのピンチです~。(´・ω・`) やばす~……
周二、間に合うのか?
ヾ(。`Д´。)ノ「こら~、此花。隼を危ない目に遭わせるんじゃねぇ!」

|゚∀゚) 「は~い。」


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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 趙か…まだ 残っていたもんね

悪党は死なず……なのです。

> 忘れてはいなかったけど、大門が あの世に行った今 まだ 悪足掻きをするなんて 思ってもみなかったよ~~ヾ(;≧ー≦)ノアワワワワ

趙は失うものがないので、もうやけくそになっているのです。なりふり構わず襲ってきました。

> 双葉ちゃんを守る為に 身を挺した隼!
> その彼に ふんわりと覆いかぶさったのは 誰?
> まさか! 
> 今回 大活躍のアイツか~~!?
> (。▼▼)o┳━*ドキュ──────ン☆( ̄ロ ̄;)oД`)彡...byebye☆

ふんわりと覆いかぶさったのは、隼の傍に居るママだと思います。何もできないけど、せめて傍で守りたいとおもっているはずです。
(`・ω・´)もちろん、俺が間に合うけどな!(。'-')(。,_,)ウンウン

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2013/10/13 (Sun) 20:43 | REPLY |   

けいったん  

(;´゚д゚`)アチャー…

趙か…まだ 残っていたもんね

忘れてはいなかったけど、大門が あの世に行った今 まだ 悪足掻きをするなんて 思ってもみなかったよ~~ヾ(;≧ー≦)ノアワワワワ

双葉ちゃんを守る為に 身を挺した隼!
その彼に ふんわりと覆いかぶさったのは 誰?
まさか! 
今回 大活躍のアイツか~~!?
(。▼▼)o┳━*ドキュ──────ン☆( ̄ロ ̄;)oД`)彡...byebye☆

2013/10/13 (Sun) 13:16 | REPLY |   

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