純情子連れ狼 番外編 【恋する双葉】
「可愛い~♡どれも可愛い~♡双葉ちゃん、すっごく可愛い、ねー、周二くん」
「……つか、何だよ、てんこもり送ってきた双葉の写真。みんなコスプレ写真じゃね~か。朱美の趣味か?」
「双葉ちゃんの一歳のお誕生日記念だって。ほら、ちゃんとカメラ目線で写ってるの。歩けるようになったんだよ。」
「これが可愛いか?赤ちゃん写真館って、スタジオア○ス?男だったら、タキシードとか、羽織袴とか着せるんじゃねぇのかよ。パンフに土俵入りの写真とかも有んだろ?これじゃ、どう見たって……」
「え……?」
隼はきょとんとした目を向けた。
「女の子がふりふりドレス着るのは、当たり前です。変な周二くん。」
周二は愕然として、ソファから滑り落ちた。
「あいつ、女……だったのか。ガキの癖に眼光鋭いし、眉は太いし、てっきり……」
「双葉ちゃんはママに似たんだよ。朱美さんって、きりりとした美人さんだもん。楽しみだね。ほらっ、朱美さんが携帯に動画も送ってくれたんだ。見る?お誕生日前から、歩きはじめたんだって。よちよち歩きが、すっごく可愛いの。」
動画の中の、一歳になった双葉が、両手を伸ばして言葉を発した。
「ちゅんちゃん~♡」
「きゃあ~♡双葉ちゃん~。ぼくの名前呼んだよ~~。」
朱美の声が双葉にかぶる。
『大好きな隼ちゃん、お元気ですか?双葉は今も隼ちゃんの事を覚えています。大きくなったら、お嫁さんにしてくださいね~。』
「……だって。」
「けっ……双葉が嫁に行く年頃には、隼はおっさんだっての。」
「……おっさん……?(´・ω・`) ……加齢臭なの?」
「Σ( ̄口 ̄*)はっ……!」
「周二くん…… (´;ω;`) 返答次第で、わたくし、里に帰らせていただきます~。」
「いや、そうじゃなくてっ!隼の場合は……そうだ、華麗臭!………じゃなくて、え~と……年を重ねたら、お、男くさいじゃなくて、苦み走った漢になってそうだな~と思って。」
「苦み走った漢……?」
「え~と……ほら、漢のなかの漢って言う感じの……菅原文太とか……いや、違うな……高倉健……でもない。ほら、ちよが隼の事、コメントでかっこよかったって言ってただろ?おっとこ前だって。」
「うん……うれしかった。」
「後な、え~と……けいったんとnichikaの言ってた、あれだ。親の血を引く兄弟よりも~♪……」
「……さぶちゃん?」
「そう。あれって、隼のBGMにぴったりじゃね?」
「周二くん~!ぼく、さぶちゃん好き~(*⌒▽⌒*)♪」
「だ、だろ?そうだと思ったんだよ。漢には漢の音楽が必要だもんな。隼のテーマソングはさぶちゃんだな。」
「うんっ。」
ふ~……
周二は何とかごまかせた。
今度から、機嫌を取る時は「さぶちゃん」で何とかなりそうだ。
それにしても……と周二は思う。テレビでも良く見るモデルによく似た面差しの隼が、目指す漢の定義が今一つ解らない。
そのうち、通信空手で黒帯にでもなったら(なるかどうかもわからないけど)熊を倒す武者修行なんぞに出発するとか言いだすかもしれない。
双葉の動画を送ってもらったお返しに、さぶちゃんのBGMをバックに6級になった空手の腕前を披露して送ると言うのを、さすがに周二は止めた。
「隼。漢はな、少しくらい強くなったからって、簡単に腕前なんか披露するもんじゃないんだ。能ある鷹は爪を隠すっていうだろ?強さは誇示しない方がかっこいいぞ。ここぞと言う時まで、空手は封印だ。」
「そっか……能ある猫は、普段は爪を出さないもんね。誰かと喧嘩をしても、空手やってると、手足が凶器扱いになるそうだし。封印する!(`・ω・´)」
さすがに瓦なんぞ割ったら、お前の拳が割れるだろとは言えなかった。
……つか、能ある猫ってなに?
*****
いまだ病床に居る英龍水は、愛する妻子に柔らかな眼差しを注いでいた。
鉄砲玉の張の使った銃が、散弾銃ではなかったのが幸いして、数発食らっただけで済んだ。全て急所を外れていたのは、張のささやかな抵抗だったろうか。
視線に微笑みを返した妻は、籍を入れて名実ともに墨花会組長の妻の座についた。
自信にあふれた身重の妻は、傍らに寄った。
「龍水。何考えてるの?」
「今頃、大門は親父に叱られてるだろうな……って思ってな。」
「どうかしら。龍水が腹をくくって跡目を継いだのはおめぇの御蔭だって、褒めているかもしれないわよ。」
「そうだなぁ。親父は一度身内にしたやつは、何をやらかしてもとことん信じてたからなぁ。しっかり者のお袋が居たから、墨花会はここまで来たようなもんだって、しょっちゅう叔父貴たちが言ってる。尾張名古屋は城で持ち、墨花会は姐(あね)で持ってるんだと。」
「お父さんにはお母さんがいたように、龍水にはあたしがいるわ。」
「そうだな。やっと手に入れた俺の恋女房だ。朱美には色々迷惑かけた。双葉にも無理をさせたな。」
「双葉は強い子になるわよ。来年には弟か妹が生まれるしね。それに、恋を知った女は最強なのよ。」
「恋?おいおい、双葉は一歳になったばかりだぞ。」
テレビ画面に映ったあるCMを見て、双葉がダッシュした。
「ちゅんちゃん~♡」
「ほら。隼ちゃんって、この子に似てるのよ。」
「ああ、子連れ狼の隼ちゃんか。双葉の命の恩人だな。」
「ちゅんちゃん~♡」
「双葉。ね~、パパにもちゅうしてあげてよ。待ってるよ。」
「や。ちゅんちゃん~♡ちゅう~。」
が~ん……
「仕方ないわね~。双葉はママに似て面食いだものね。パパみたいな大人の男の良さは、大きくなってからわかればいいわ。」
「ちゅんちゃん~♡」
数万人をまとめる墨花会のトップが、愛娘に拒絶されてまじでへこみ、その様子を眺める朱美は手繰り寄せた幸せをかみしめていた。
大人げない周二が、幼児を相手に本気で切れるのもそう遠くない。
「あとがき」
本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)
一歳になった双葉ちゃんを抱っこしている隼ちゃんです。
周二の小さなころにそっくりという設定の双葉ちゃんなので、想像してみてください。 ヾ(〃^∇^)ノ
このシリーズの作品はたくさんあって、初めて書いたBL作品でもあり、此花もとても思い入れがあります。
当時、周囲にエチ場面が書けないという話をしましたら、いっそ何もないまま進んでゆくのもいいかもしれない……とアドバイスをいただき、そのままです。(`・ω・´)←堂々。
ちっとは成長しろよ~!■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノきゃあ~
双葉ちゃんには来年になったら弟が生まれます。
双葉ちゃんが、実は女の子だったなんて、BLにはらしからぬ展開になってしまいましたので、すこしだけ含みを持たせています。うふふ~ ヾ(〃^∇^)ノ
たくさんの拍手、コメントありがとうございました。とても励みになりました。
また、新しいお話でお目にかかりたいと思います。またね。
※コメントくださった方々に、感謝の意味を込めました。勝手にお名前使わせていただきました。
「なんで、お前泣いてるの?」(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚+「周二くんが、お名前呼び捨てにしちゃってごめんなさい……。」
此花咲耶
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