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朔良―そのままの君でいい 4 

普段自分が接する二人とは、まるで印象が違う気がする。
自室に招き入れて、たしなめる主治医の森本も笑顔だった。

「あの……小橋先生……?」
「驚いた?朔良君。君が来るって先生に教えてもらったんだ。君が進路を決めるのに、僕でも何かの役に立つかなって思って。」
「……ありがとうございます。」
朔良はいつもの如く、そっけなかった。
小橋は、さっさと部屋の片隅からパイプ椅子を持って来て、朔良の傍に寄せると腰掛けた。
にこにこと屈託のない笑顔を向ける。

「森本先生は、君の主治医だそうだけど、僕の主治医でもあったんだよ。それと、うんと昔は家庭教師だったんだ。仕事を離れるとこんな風なんだよ、知らなかっただろう?」
「ええ。僕はお二人の仕事中の顔しか知らないです。」

個人的なことに興味が無いとはさすがに口に出来ない。

「息子がどうしようもないバカで、このままだとスポーツ推薦が駄目になるかもしれないんです~って、小橋の母親に泣き付かれたんだよ。家が近所だったんで、うちの親が断りきれなくてね。おかげでそれ以来の腐れ縁だ。」
「だって推薦が来た高校って、どこも文武両道の偏差値の高いところだったんですよ。先生のおかげで助かりました。」
「あのころ、偏差値は30前後くらいしかなかったんじゃないかな。入学してから苦労するのが見えているから、せめて普通にしてやってくださいって言われても、何しろ基礎学力が無いから大変だったんだよ。因数分解すらできなかったんだから。」
「そうなんですか?」

余りのレベルの低さに、朔良は素直に驚いてしまった。
それでよく理学療法士になどなれたものだと思う。

「今じゃ、こんなに立派になりました~。」
「お前が言うな。」
「でも、入学してからは勉強も頑張りましたよ。」
「家庭教師が良かったからな。」
「勿論です。」

小橋は悪びれない。
朔良はやっと納得した。
主治医には友人と紹介されたが、自分と余り年も変わらないように見える小橋とは、どういう友人なのだろうと不思議だった。
口にこそしなかったが、小橋から33歳だと聞いた時、内心では主治医は恐ろしいほどの老け顔なのかも……と、とんでもないことを考えていた。
しかし、小橋が中学生のころに、大学生の森本が家庭教師をしていたと言うなら理解できる。

「それより君、今日は勤務じゃなかったのか?抜けて来たのか?」
「そうだったんですけど、相手が体調崩したと電話が有ったんです。ほら、朔良君も知っている石泉園のおじいちゃん。」
「大丈夫なんですか?」
「心配ない。軽いぎっくり腰だそうだよ。数日お休みしたら、またお願いしますと言っていた。……それより、先生。朔良君にいい学校を紹介してあげてくださいと、頼みに来たんだった。」

主治医は分厚い茶封筒を取り上げた。

「君と同じ大学を勧めようかと思ったんだが、朔良君には県外よりも自宅から通える方が良いかと思い直してね。ほら、ここなら県外だけど車で通えると思う。教授も知らない仲じゃないから話も聞ける。下宿するとなると、朔良君のお母さんが心配しそうだからね。」
「ああ、そんな感じだなぁ。下宿したら、付いて来てそのまま一緒に住みそう。」
「僕もそう思います。学校にまで付いてこなければいいんですけど……来るでしょうね。暇さえあれば、きっと毎日、授業参観ですよ。僕は、勉強よりもそこが不安です。」

二人は朔良の言葉に顔を見合わせて笑った。どうやら朔良の母親の過保護っぷりは、有名なようだ。

「先生、朔良君って打ち解けて来ると面白いでしょう?」
「自慢げに言うな。僕が先にいい子だと教えてやったんだろう。」
「そうなんだよな~。だから余計に離れたくないんだけどなぁ。あのね、朔良君。先生ったら僕の患者には絶対手を出すなって、怖いんだよ。」
「当たり前だろう。毎日のように電話して来て朔良君、朔良君とうっとおしい。それに、小橋は一番重要なことを忘れている。」
「なんです?」
「朔良君にちゃんと話をしてないだろう?」
「あー……っ!!」

小橋は素っ頓狂な悲鳴を上げた。

「しかも、朔良君の気持ちはおかまいなしだ。朔良君には少なくとも選ぶ権利があると思うんだが?」
「そうだった……どうしよう……朔良君。」
「あの……?何でしょう?僕が何か……?」

主治医の言葉に、小橋は色を失くして呆然としている。
朔良も二人のかみ合わない会話に、どう言葉を返していいかわからない。
小橋は朔良に何を告げていないというのだろう。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

 ( -ω-)y─┛~~~~「小橋君。君、朔良君にちゃんと言ってないだろう?」

Σ( ̄口 ̄*)「あー……っ!」

(°∇°;) 「ん~……?」

色っぽい展開になるには、もう少し時間がかかりそうです。
でも、エチになったら朔良はきっと……ね~(*´・ω・)(・ω・`*)そこが心配よね~

( *`ω´) 「ぶっとばす!」

主治医の先生の名前は森本先生でした。タイミング悪くて書けなかったのです。すまぬ~(´・ω・`)


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