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朔良―そのままの君でいい 12 

風が冷たくはないかと、小橋が聞いた。
懐にすっぽりと包まれて、朔良は身体を預けていた。頬に当たる春風に、微かに甘い匂いを感じた。

「不思議だ。朔良君と一緒にこの場所にいると、いつもの場所なのに何かロマンチックな気分になるね。浮かれているせいかな、いつもより空も青い気がする。」
「ふふ……とてもいい眺めだから、ゆっくり見ていたいです。」
「無理をしてこのマンションを買って良かった、と今すごく思ってるよ。僕はきっとここから下を眺めるたび、この光景を思い出すだろうね。」
「来年の桜の頃にも、僕は旭日さんとここにこうしているでしょうか。」
「離さないよ。でも……ほら駐車場に車が入って来ただろう?あれね、きっとぼくの上の階の住人なんだ。ここを通るはずだけど、良君を見せたくないから、部屋に行こう。よっ。」
「あっ。」

小橋は軽々と朔良を抱き上げた。

「思ったより軽いな。」
「足に負担がかからないように、太らない方が良いと、リハビリの最初に言われました。」
「そうだけど。困ったな……壊してしまわないように、慎重に扱わないと。」

小橋は真顔でそんなことを言う。
仕事を離れると、まるで人が違ったような小橋の態度に、朔良は包まれるような温かいものを感じた。告白されたばかりなのに、ずっと傍に居たかのように大切にされていると思う。
花嫁を抱き上げるように、朔良を抱いたまま小橋は階段を駆け上がった。
小橋の方も振り落とされないように、思わずしがみつく朔良を愛おしく思っていた。

*****

扉の前まで来た小橋は、躊躇していた。

「どうしました。」
「うん。……散らかってるなぁ。やばい……森本先生から電話貰って飛び出たから、片付いてないんだよ。朔良君には見せたくない。」
「洗い物も?」
「そう。コンビニで買ったチーズハンバーグを湯煎にした鍋も、流しにそのまま。」
「洗濯物は?」
「軽くたたんで、ソファに山積み。」

朔良は小橋の腕から、滑り降りた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

このちん、本日体調不良で短めです。根性なくてすまぬ~(´・ω・`)

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