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朔良―そのままの君でいい 6 

小橋は驚いていた。
この綺麗な青年には、何故ここまで自分に自信が無いのだろう。
小橋は朔良の過去を知らなかった。

じっと小橋は、朔良を見つめた。

「そうか。では話してみようかな。……例えば……君の見た目はとても端整で優美だけど、僕が惹かれたのはそこじゃないんだ。」
「え……。」

口にはしないが、誰かが自分を認める場所は、そこ以外何もない気がする。
朔良は動揺していた。

「朔良君の中身は、相当の負けず嫌いで……頑固だと思う。誰かに弱みを見せる事は無いし、内側に入られるのが嫌いだ。だからかな、誰かを信用するのに時間がかかる気がする。斜に構えて世間を見ているような所もある。……でも、僕が一番惹かれた所は、僕の知らない誰かの為に、君が辛いリハビリを頑張っているところなんだ。妬けるほどいじらしいよ。愛おしくてたまらなくなる。」

朔良は主治医に向き直った。

「先生。申し訳ないんですけど、席を外していただけますか?」
「あ……うん。邪魔者は去ろう。気にはなるが午後の患者も来るころだ。」
「すみません。ちょっと気恥ずかしいので……」
「気にしなくていい。でも、うさぎやのシュークリームは一つ残しておいてね。」

片目をつむって見せて、森本は部屋を出て行った。

*****

森本の淹れたコーヒーの、馥郁とした香りだけが揺らぐ静かな空間だった。

「小橋先生は、僕をとても良く見てくださっていると思います。でも、僕は……先生の期待を裏切ると思います。周囲から何て噂されているか、僕も知っていますから……本当に見た目だけの冷たい氷の王子さまですよ、僕は。」
「なぜ、そんな風に言われると思う?」
「恋愛をまともにしたことがないからだと思います。僕はずっと……一つ上の従兄弟以外、誰も欲しくありませんでした。他の誰かに興味を持ったことが有りません。」
「それは失恋したと言う相手の存在が、それだけ大きかったと言う話だね。後ね……僕は毎日朔良君と話をして、分かったことが有る。」
「何ですか?」
「僕は朔良くんを虐めているのは、朔良君本人じゃないかと思えるんだけど……って、以前に言ったよね。今もその考えは変わらない。君は誰もが羨む容姿をしていながら、自分の事を愛される価値のない人間だと思っているんじゃないかな……?自分に自信が持てない?」

痛いところを突かれて、朔良の胸がツキンと痛んだ。

「……そうですよ。見返りを求めないで僕を愛してくれるのは、血がつながった両親だけです。本当に愛してほしい人には愛されたことがない……なぜなら……僕は穢れて……いる……から……誰も僕を見返りなしには愛してくれま……せん……」
「朔良君……?」
「……自信なんて……ない……」

ぐるりと視界が回り、動悸が激しくなってゆく。

朔良の様子がおかしいと小橋は気付いた。





本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

零れ落ちる朔良の本心……つか、朔良たん、だいじょぶ……?(´・ω・`)


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