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朔良―そのままの君でいい 5 

立ちつくしたまま、朔良と主治医の顔を交互に見る小橋の姿に、朔良はとうとう吹きだしてしまった。

「なんなんですか、もう……小橋先生、まるで草原のプレイリードッグみたいですよ。ああ、おかしい。」
「小橋君……毎日会っていたのに、本当に何も言ってなかったのか?」
「ええ。余りに毎日が楽しくて、うっかりしていました。僕にとって朔良君とのリハビリは、幸福な逢瀬のようでしたから。」

主治医はあきれ顔だった。

「ばか。そこについている君の頭は飾りか?それとも、脳みそまで筋肉でできているのか?」
「ひどいなぁ。これでもちゃんと計画を立てて、本気でリハビリしましたよ。朔良君を見れば分かるじゃないですか。……久し振りに恋をしたんで、ちょっと舞い上がってしまっただけです。」

小橋は口をとがらせた。

「それに、臆病にもなりますよ。この前も、勇気を振り絞って話を振りかけたんだけど……30超えたらおじさんだと言われて、萎えてしまったんです。だけど、朔良君はもうすぐ受験勉強を始めるでしょう?そうしたら、もうリハビリにも来なくなるに決まっている。しかも大学に入ってしまったら、若いぴちぴちがいっぱいいて、綺麗な朔良君を狙うに決まっているんだ。そうしたら、おっさんの僕には勝ち目がなくなる……」
「ぴちぴち……って。もう死語ですよ、それ。」
「だから、接点がなくならない内に何とかしたかったんだけどなぁ。朔良君、おじさんは本気だよ?」
「すねないでください。……先生の事、誰も本気でおじさんだなんて思っていませんよ。」

小橋は大きく息を吸った。

「この勢いで正直に言う。君と一緒にいて毎日が楽しかった。君には迷惑かもしれないが、年甲斐もなく、本気なんだ。突然だけど、僕の事を恋愛対象として考えてみてくれないか?」
「えっ……!?」

朔良は小橋の告白に戸惑っていた。
この展開は想像していなかった。

「突然ですね……。それに一応断っておきますけど……僕、男ですよ?いいんですか?」
「わかっている。経験上、軽蔑されることも、打ち明けたらこれで完璧に終わりになるかもしれないことも覚悟した。悩まなかったと言ったら嘘になる。これまでにもノンケ相手に挫折を味わったことは何度もあるんだ。」

小橋は真っ直ぐに朔良を見据えて、真剣に語った。

「君に関わった一人の理学療法士として、お別れ出来れば良かったのだろうけど……このまま打ち明けずに別れたら後悔するのは目に見えている。朔良君、玉砕は覚悟のうえで敢えて聞く。正直に言ってほしいんだ。もし受け入れられないと言うなら、それでもいい。無理強いをする気はない。朔良君。君は男同士の恋愛はありえないと思う?」

小橋は真摯だった。
朔良は応えて首を振った。

「いいえ、そんなことは。……僕の初恋の相手は、男性です。もっとも、ついこの間まで彼が僕には生涯ただ一人の相手だと思っていたので、他の相手は考えたこともありません。残念ながら彼には僕とは正反対のタイプの恋人が出来て、つい先日、失恋したばかりです。」
「それだけ聞けば十分だ。」
「先生は僕のどこが気に入ったんです?僕は恋人にするには、とても不向きだと思うんですけど……」
「どこと言われても……それは、説明した方が良いのか?」
「はい。聞きたいです。僕は誰にも好意を持たれるとは思っていませんから。」

きっぱりと朔良は言い切った。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

プレイリードッグの告白……(*/∇\*) キャ~
自分に自信のない朔良は、小橋の言葉をどう思うのでしょうか。
届けばいいと思います。

(´-ω-`) 「別に~。」


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