アンドロイドSⅤは挑発する 1
世界中の耳目を集める、超絶美形のユニセクスモデルのATUSHIこと上田厚志は、最愛の恋人、秋月音羽と結ばれてアメリカで暮らしている。
厚志は大好きな音羽の傍に居たいという幼い頃からの願いを叶えて、誰よりも幸せだった。
秋月音羽は肝移植の権威でもあり、長い間肝臓の病気で闘病していた厚志の兄も助けてくれた。
厚志のお腹には、兄への生体肝移植でできた手術跡、メルセデスベンツ・マークと呼ばれる大きな傷がある。
生体肝移植で、兄に自身の肝臓の35パーセントを贈った厚志は、体に大きな傷をつけた事でモデル生命を失う覚悟をしたが、世界的服飾デザイナー、マルセル・ガシアンは厚志を手放さなかった。
マルセル・ガシアンは、全世界に放送されたオートクチュールのキャットウォークで、専属のトップモデルとして、何があっても変わりなく厚志を起用すると、堂々の宣言をし世間をあっと驚かせた。
トップモデルとして忙しくしている厚志の唯一の悩みは、壊滅的に家事ができない事だ。
今日もリビングの床にワックスをかけていた厚志が、音羽に救いを求めて叫んでいた。
「音羽。動けなくなってしまったの。助けて」
「あっくん……何で、部屋の真ん中で困っているの?」
「端っこからワックスを掛けようと思ったの。そうしたら、なぜだか孤島ができてしまって、あっくんは取り残されてしまいました」
あっくんは悲しそうだったが、音羽はいつものことなので微笑んでいた。
「困ったな。どうやってあっくんのところへ行けばいいかな?まだ乾いていないけど、床を踏んでも構わない?」
「……せっかく、頑張ったのに……くすん」
あっくんを救出した音羽は、結局ワックスをかけなおす羽目になったが、二人は幸せだった。
「そういえばね、あっくん」
「なぁに?」
「兄の音矢が、お手伝いロボットのモニターをしませんかって言って来たんだ。」
「ロボット……?」
音羽の兄、音矢はロボット工学の権威で、人工知能の研究においては世界でも数本の指に入るほど、優秀な人物だった。
「正確にはアンドロイドだろうね。新しい会社のサービスとして、家事全般と話し相手のできるロボットを開発するんだって言ってた。返事はまだしていないけど、あっくんさえ良かったら、頼んでみようか?」
「……ぼくと音羽だけのこの家に……」
あっくんの目から、ぽろぽろと透明な雫が零れ落ちる。
ついこの間も、あっくんはやらかしたばかりだ。
音羽が風邪をひいて熱を出したときに、頭を冷やそうと思って濡れタオルを用意したのはいいのだが、絞らないでそのまま額に乗せたせいで、パジャマがびしょ濡れになり音羽は風邪をこじらせ肺炎になってしまった。
しかもあっくんは気づかず、そのまま仕事に出かけてしまった。
「お仕事があるから、ぼくは出かけます。音羽は温かくして、いい子でお留守番していてね♡」
「あ……(あっくん。びしょ濡れだよ~)」
「何かあったら、電話してね、ダーリン」
高熱で動けないダーリンは電話もできず、ぐっしょりと濡れたパジャマと布団をやっと交換できたのは、あっくんが次の日、仕事から帰ってきた真夜中……から、ひと騒ぎした数時間後だった。
「ただいま~……きゃあああぁっ!いやああぁあっ!音羽っ!音羽が死んじゃうっ……」
うなされる音羽を見つけ、狼狽したあっくんは、慌てふためいて警察と消防署に電話をしたのだが、きちんと説明ができず殺人事件と誤解されてしまったのだった。
「音羽ーーーっ。あっくんを一人残していかないで。うわああぁん~!ぼくも一緒に死ぬ~~!喪主の挨拶なんてできない~!」
「あっくん……まだ死んでないから……」←掠れて声にならず……
「先生、家じゃ結構苦労されてるんですね。いくら絶世の美人でもちょっとな~……」
緊急搬送される蒼白の音羽に応急処置を施しながら、知り合いの救急隊員が憐憫と同情の目を向けていた。
電話を掛けたのが、葬儀会社じゃなかっただけましだよと、音羽は笑った。
相変わらずやらかしているあっくんです。
余りにお久し振りすぎて、作者も忘れかかって……━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ
……どうぞよろしくお願いします。 此花咲耶
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厚志は大好きな音羽の傍に居たいという幼い頃からの願いを叶えて、誰よりも幸せだった。
秋月音羽は肝移植の権威でもあり、長い間肝臓の病気で闘病していた厚志の兄も助けてくれた。
厚志のお腹には、兄への生体肝移植でできた手術跡、メルセデスベンツ・マークと呼ばれる大きな傷がある。
生体肝移植で、兄に自身の肝臓の35パーセントを贈った厚志は、体に大きな傷をつけた事でモデル生命を失う覚悟をしたが、世界的服飾デザイナー、マルセル・ガシアンは厚志を手放さなかった。
マルセル・ガシアンは、全世界に放送されたオートクチュールのキャットウォークで、専属のトップモデルとして、何があっても変わりなく厚志を起用すると、堂々の宣言をし世間をあっと驚かせた。
トップモデルとして忙しくしている厚志の唯一の悩みは、壊滅的に家事ができない事だ。
今日もリビングの床にワックスをかけていた厚志が、音羽に救いを求めて叫んでいた。
「音羽。動けなくなってしまったの。助けて」
「あっくん……何で、部屋の真ん中で困っているの?」
「端っこからワックスを掛けようと思ったの。そうしたら、なぜだか孤島ができてしまって、あっくんは取り残されてしまいました」
あっくんは悲しそうだったが、音羽はいつものことなので微笑んでいた。
「困ったな。どうやってあっくんのところへ行けばいいかな?まだ乾いていないけど、床を踏んでも構わない?」
「……せっかく、頑張ったのに……くすん」
あっくんを救出した音羽は、結局ワックスをかけなおす羽目になったが、二人は幸せだった。
「そういえばね、あっくん」
「なぁに?」
「兄の音矢が、お手伝いロボットのモニターをしませんかって言って来たんだ。」
「ロボット……?」
音羽の兄、音矢はロボット工学の権威で、人工知能の研究においては世界でも数本の指に入るほど、優秀な人物だった。
「正確にはアンドロイドだろうね。新しい会社のサービスとして、家事全般と話し相手のできるロボットを開発するんだって言ってた。返事はまだしていないけど、あっくんさえ良かったら、頼んでみようか?」
「……ぼくと音羽だけのこの家に……」
あっくんの目から、ぽろぽろと透明な雫が零れ落ちる。
ついこの間も、あっくんはやらかしたばかりだ。
音羽が風邪をひいて熱を出したときに、頭を冷やそうと思って濡れタオルを用意したのはいいのだが、絞らないでそのまま額に乗せたせいで、パジャマがびしょ濡れになり音羽は風邪をこじらせ肺炎になってしまった。
しかもあっくんは気づかず、そのまま仕事に出かけてしまった。
「お仕事があるから、ぼくは出かけます。音羽は温かくして、いい子でお留守番していてね♡」
「あ……(あっくん。びしょ濡れだよ~)」
「何かあったら、電話してね、ダーリン」
高熱で動けないダーリンは電話もできず、ぐっしょりと濡れたパジャマと布団をやっと交換できたのは、あっくんが次の日、仕事から帰ってきた真夜中……から、ひと騒ぎした数時間後だった。
「ただいま~……きゃあああぁっ!いやああぁあっ!音羽っ!音羽が死んじゃうっ……」
うなされる音羽を見つけ、狼狽したあっくんは、慌てふためいて警察と消防署に電話をしたのだが、きちんと説明ができず殺人事件と誤解されてしまったのだった。
「音羽ーーーっ。あっくんを一人残していかないで。うわああぁん~!ぼくも一緒に死ぬ~~!喪主の挨拶なんてできない~!」
「あっくん……まだ死んでないから……」←掠れて声にならず……
「先生、家じゃ結構苦労されてるんですね。いくら絶世の美人でもちょっとな~……」
緊急搬送される蒼白の音羽に応急処置を施しながら、知り合いの救急隊員が憐憫と同情の目を向けていた。
電話を掛けたのが、葬儀会社じゃなかっただけましだよと、音羽は笑った。
相変わらずやらかしているあっくんです。
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