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小説・初恋・33 

「星龍号をお使い下さい。」


いつもと違う奏の様子に、白雪が血相を変えて、とにかく急ぐようにと颯を促した。


「芳賀様に、国許に電信を打つように、お伝えしておきます。

あと、県令につながるようなら、電話も。」


「そんなことまで?」


部屋の外を駆けながら、白雪の説明も腑に落ちない。


「何故、聡子さんが襲われる?

如月の周りで、何が起こってるんだ?」


「奏さまが、湖上さまをご友人と紹介したのがいけなかったのです。きっと。」


「奏さまが6つか7つの折、殿様よりも小間使いが好きだと言った時も大変な惨事になりましたから。」


「ああ・・・どうしよう。ここにもきっと来る・・・」


「頼みの湖上さまは、行っておしまいになるし、わたくしだけで奏さまを、お守りできるかどうか・・・」

颯を送りながら、白雪の心臓は早鐘のようだった。

何か、得体の知れないものに急かされるように、颯は普段は決して使わない鞭を、奏の愛馬に当てた。


後事を全て清輝と白雪の手に委ね、星龍号はひたすら駆けた・・・・

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