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小説・初恋・30 

白雪の思いつめた眼に気が付いて、清輝は話題を変えた。


「君も、ここにお座りよ。

僕らの小姓というわけではないのだし、友人で良いじゃないか。」


何だか、ただの会話のはずなのに、白雪を詰問しているようで居心地が悪く、颯は立ち上がって窓を開けた。


「・・・公家華族ってのは、何かと面倒だねぇ。」


「・・・・」


しょんぼりとうつむいてしまった白雪に、清輝が慌てた。


「白雪。今のは君に向けた言葉ではないから。」

「颯さまったら。」


清輝に視線で叱られて、颯は正面から白雪を覗き込んだ。


「どうやら僕は、真っ直ぐにものを言いすぎるみたいだね。

如月にも泣かれてしまったし、気に障るならそういってくれて良いよ。」


膝の上にきちんと揃えた手が、くっと思いつめたように小さな拳になった。


「湖上様は、奏さまの亡くなられたお父様と、お声がよく似ておいでになるそうです。」


「・・・そうなのか?」


「ええ。そんな風に、相手を気遣ってお話されるところも、奏さまには気になるんです、きっと。」


「あの・・・。御気を悪くされたなら謝ります。」

「いいから、続けて。」


白雪は、奏と乳兄弟なのだという。


白菊は湖西が反政府軍の討伐に行った折、拾ってきた孤児だそうだ。


「白菊は一緒に、育ちました。

わたくしの兄弟は6人いまして、大勢が楽しかろうと、父が言いましたので。」


「白雪の父上は、如月の使用人なのか?」


「はい。本宅の執事を拝命しております。」


行儀のよい白雪は想像通り長男で、身の回りの世話をする条件で、奏と共に学ぶのを許されたという。
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