小説・初恋・32
「奏さま・・・奏さま・・・」
忠義な白雪は、辺りを片付けることも忘れて震えながら、小さく奏の名を呼んだ。
「いつかはこうなると・・・ああ・・・」
「分かってた?犯人に心当たりがあるのか、白雪。」
「殿様は・・・いつも。
いつも、奏さまを苦しめるのです。」
白雪の話は、抽象的で颯を混乱させた。
如月候の仕業なのか・・・?
まさか。
しかし、白雪は言葉を重ねた。
「殿様は、狂っておいでです。」
百合の花弁のような白い指が伸びて、白雪の言葉をさえぎった。
「し・・ゆき。よせ・・・。」
「君は、少し外してくれないか。
白雪と話がしたい。」
「そんな顔で何を言う。
医者が来るまで、付き添う。」
奏は、ほうっと大きな息を吐いた。
「迷惑だと言っているでしょう。この部屋は・・・僕の部屋だ・・・」
「どうかしている、如月。何があったか言え!」
「あぁ・・・うるさい・・・うるさい。
白雪、早く薬をくれないか。」
そこにいる颯を完全に無視して、小瓶に入った液体を湯飲みであおった。
度数の高い、洋酒の匂いがした。
傷のあるときに、アルコールを身体に入れると血の廻りが良くなって、出血はひどくなる。
そんなことも知らないのかと、怒鳴る颯を無視して奏は薬を混ぜた酒を、続けざまに何度もあおった。
「いいですか。一度しか言いません。」
「お爺様に関しては、白雪が言ったとおりの事実がある。
表向きは政府に功ある武官だが、実際は何より血を好む性格破綻者です・・・。」
「しかも、自分に似た僕の血を。」
背筋を怖気が走った。
そして奏は、はっと宙に視線を泳がせた後、何かに気が付いて颯を見つめた。
「そうだ・・・そんなことはないと祈るが・・・いや、わからない・・・」
「なんだ?何が言いたい?」
奏は思考をめぐらせ、できうる限りの湖西の動向を予想し思い描いていた。
奏の流す血と涙だけが、湖西を恍惚とさせるのだ。
その為なら、どんなこともしてのける化け物を畏れながら、今だけは気を失っている場合ではない。
「早く。今は何も聞かずに、早く行ってくれ・・・
最悪の場合、あなたの婚約者に危険が及ぶかもしれない・・・。」
「聡子さんが・・・?何故?面識もないのに。」
「僕が、あなたに興味を向けたから・・・」
「如月!どういうことなんだ!?分かるように、説明しないか。」」
思わず、詰め寄って激しく肩を揺すった。
「ううっ・・」
怪我をしていたのを思い出して、手を離したが考えがまとまらなかった。
忠義な白雪は、辺りを片付けることも忘れて震えながら、小さく奏の名を呼んだ。
「いつかはこうなると・・・ああ・・・」
「分かってた?犯人に心当たりがあるのか、白雪。」
「殿様は・・・いつも。
いつも、奏さまを苦しめるのです。」
白雪の話は、抽象的で颯を混乱させた。
如月候の仕業なのか・・・?
まさか。
しかし、白雪は言葉を重ねた。
「殿様は、狂っておいでです。」
百合の花弁のような白い指が伸びて、白雪の言葉をさえぎった。
「し・・ゆき。よせ・・・。」
「君は、少し外してくれないか。
白雪と話がしたい。」
「そんな顔で何を言う。
医者が来るまで、付き添う。」
奏は、ほうっと大きな息を吐いた。
「迷惑だと言っているでしょう。この部屋は・・・僕の部屋だ・・・」
「どうかしている、如月。何があったか言え!」
「あぁ・・・うるさい・・・うるさい。
白雪、早く薬をくれないか。」
そこにいる颯を完全に無視して、小瓶に入った液体を湯飲みであおった。
度数の高い、洋酒の匂いがした。
傷のあるときに、アルコールを身体に入れると血の廻りが良くなって、出血はひどくなる。
そんなことも知らないのかと、怒鳴る颯を無視して奏は薬を混ぜた酒を、続けざまに何度もあおった。
「いいですか。一度しか言いません。」
「お爺様に関しては、白雪が言ったとおりの事実がある。
表向きは政府に功ある武官だが、実際は何より血を好む性格破綻者です・・・。」
「しかも、自分に似た僕の血を。」
背筋を怖気が走った。
そして奏は、はっと宙に視線を泳がせた後、何かに気が付いて颯を見つめた。
「そうだ・・・そんなことはないと祈るが・・・いや、わからない・・・」
「なんだ?何が言いたい?」
奏は思考をめぐらせ、できうる限りの湖西の動向を予想し思い描いていた。
奏の流す血と涙だけが、湖西を恍惚とさせるのだ。
その為なら、どんなこともしてのける化け物を畏れながら、今だけは気を失っている場合ではない。
「早く。今は何も聞かずに、早く行ってくれ・・・
最悪の場合、あなたの婚約者に危険が及ぶかもしれない・・・。」
「聡子さんが・・・?何故?面識もないのに。」
「僕が、あなたに興味を向けたから・・・」
「如月!どういうことなんだ!?分かるように、説明しないか。」」
思わず、詰め寄って激しく肩を揺すった。
「ううっ・・」
怪我をしていたのを思い出して、手を離したが考えがまとまらなかった。
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