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紅蓮の虹・27 

四郎は大勢の人に囲まれて笑っていなければ、物思いにふけっていることが多かった。

思わずコウゲイが見惚れたのは、どうやら見た目だけではないみたいだ。

小さな村の中を歩くだけで、年寄りから女、子供まで出てきて四郎に手を合わせていた。

「おばあさん、足を診てあげましょうか。」

杖をつく老婆に気が付いて声をかけると、四郎はあばら家に入っていった。



粗末なわらむしろが引かれた寝床で、四郎は丁寧に垢だらけの老婆の足をさすった。

年よりはずいぶん恐縮して、勿体無いと何度も辞退したが、四郎は自分の使用人に「灸」をしてやれと声をかけた。

「働き者の、足です。

何の汚いことが有りましょう。

長年の、無理な労作が腰を曲げてしまって・・・ここが痛いんですね。」

老婆は顔をしかめた。

「腰のここと、足の三里に灸をしてあげてください。」

四郎はおつきのものに、そういった。

「そしてできれば、消化のよいものが有ればいいのだけど・・・甘藷(サツマイモ)はもうなかったのか・・・」

「では、せめて白湯を。少しでも腹を暖めると、腰も楽になりますから。」



出歩いた後の四郎は、自分の無力に押しつぶされそうになっていつも沈んでいた。

薬も、食べ物も何もなかった・・・

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