紅蓮の虹・28
四郎の記憶は、まるで現実味のある公共放送の時代劇のようだ。
流れ込む記憶は、コウゲイから流れてくるものなのか、自分のもののように鮮明だった。
四郎の家は、よそに比べれば裕福で使用人もいたが、他の農民の生活はひどかった。
米など一粒も食べずに、死んでしまう子供達の数も多かった。
栄養失調で、母親の乳も出ない。
それでも乳飲み子は、母の乳房にぶら下がっていた。
目だけ光らせた子供達に、四郎は自分の食事を削って薄い粥を与えたが、状況はひどくなるばかりだった。
自分の無力に、腹を立てて空を見上げても状況は変わらない。
夏なのに、太陽が照り付けない異常気象は、人にはどうすることもできない。
天草の領主が、せめて納める年貢の量を、不作な年だけでも減らしてくれたらよかったのに、搾取はどこよりもひどかった。
ふと顔を上げると、裏手の湖水のほとりだった。
考え事をしながら、ここまで歩いてきてしまったのか・・・
気が付けば、草履は泥だらけになり爪の間も汚れていた。
「何をやっているんだろう・・・わたしは。」
水際にかがみこみ指先を洗う四郎の手の甲に、飛沫がはねた。
流れ込む記憶は、コウゲイから流れてくるものなのか、自分のもののように鮮明だった。
四郎の家は、よそに比べれば裕福で使用人もいたが、他の農民の生活はひどかった。
米など一粒も食べずに、死んでしまう子供達の数も多かった。
栄養失調で、母親の乳も出ない。
それでも乳飲み子は、母の乳房にぶら下がっていた。
目だけ光らせた子供達に、四郎は自分の食事を削って薄い粥を与えたが、状況はひどくなるばかりだった。
自分の無力に、腹を立てて空を見上げても状況は変わらない。
夏なのに、太陽が照り付けない異常気象は、人にはどうすることもできない。
天草の領主が、せめて納める年貢の量を、不作な年だけでも減らしてくれたらよかったのに、搾取はどこよりもひどかった。
ふと顔を上げると、裏手の湖水のほとりだった。
考え事をしながら、ここまで歩いてきてしまったのか・・・
気が付けば、草履は泥だらけになり爪の間も汚れていた。
「何をやっているんだろう・・・わたしは。」
水際にかがみこみ指先を洗う四郎の手の甲に、飛沫がはねた。
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