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紅蓮の虹・21 

「まずいよ、コウゲイ・・・」


「神様なのに、あまりに人間ぽくない?」

そう言うと、コウゲイは真剣に落ち込んでいた。

「わたしの浅はかな考えが、四郎を望まない救世主にしてしまったのか・・・」

そうだね・・・そんな気がする。

「好きな女性の目を治してやったら、きっと四郎がすごく喜ぶだろうと思っただけなのに・・・」

「わたしの虹。わたしは、どうすればいい・・?」

いや、聞かれても。

今頃気が付くなんて、いくら何でも遅すぎるだろ。

百年以上も昔の話なので、俺にはどうすることもできません。

それにさ、コウゲイがいまだに一生懸命四郎のことを考えてるってことで、もうちゃらになってるんじゃないの?

「本当に!?」

「いや、がんばってると思うよ。」

まじで。

「引きずってるという方が、正しのかもしれない
な。」

コウゲイは、ほんの少し照れていた。

尻尾を切られても、そこから再生する蜥蜴みたいに、何度死んでもがんばってるじゃん。

コウゲイは、鼻をすすった・・・

「その慰め方は、美しくないぞ。」

「わたしの虹・・・でもわたしは、本当はもう四郎の死ぬ所を見たくないんだ・・・」

黒く焼けた痛々しい骸を抱きしめて、慟哭するコウゲイの痛みは今や俺の痛みでもあった。

コウゲイになっているときは、感情が流れてきてとても辛かった。




  



突然、俺は気づいてしまった。

コウゲイの未来へと続く過去を変えようとする試みは、そもそも間違いなのかもしれなかった。

過去を変えれば、未来はひとつではなくなる。

そんなパラレルワールドの話は、今は薄い文庫のsf雑誌にでも載っているし、勉強嫌いの俺でも知っている。

神獣の世界には、必要なかったのかもしれなかった。

誰でもいいから、教えてやればよかったのに・・・

ずっと頑なに、四郎の命を助けたい一心で、何度も同じ時代に関わってきたコウゲイの懸命さは意外に盲点なのかもしれなかった。

決して変わることのない不可侵な部分、きっとそれは水を司どる神のコウゲイの仕事ではなくて創造主の領域なのだと思う。

だとしたら、これから何度命を懸けても、コウゲイは四郎を助けられないだろう。

西から陽が昇らないように、決して変わらないものは、あると思う。

その度に、暗い顔をして絶望のふちに佇むコウゲイを思うと、俺は何とかしてやりたいと思うようになった。

爺さんとイレーネ、あいつらなら何か知っているのだろうか
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