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紅蓮の虹・35 

「島原の乱に関する本は、ありますか?」


いかにも、頭の良い子風で俺はカウンターで貸し出しカードに名前を書いた。


「ちょっと待ってくださいね。」


館内検索すると、タイトルがいくつか液晶画面に並んだ。


「何冊か有りますけど、揃えましょうか?」


どこに何があるのか、皆目わからなかったので俺は図書館のお姉さんの手を借りた。


紀行本、ノンフィクション、何冊かを抱えて、俺は館内の一番奥に座った。


コウゲイとのぼった記憶の中に、色鮮やかな陣中旗があった。


確か山田、山田某・・・が描いたと言ってた。


現存するたった一枚の陣中旗は、ただ一人の生き残りが持って投降したのだった。


「南蛮絵師、山田 右衛門作(やまだえもさく)」って、思いきり日本人じゃないか・・・




俺は、見た目は外国人なのに、やたら丁寧な日本語を話す爺さんの姿を思い浮かべていた。


おそらくコウゲイの力を借りて、仮の姿を選んだのだろうが本によると「内通者」とある。


内通者というのは、ようするに裏切り者だ。


・・・だとすると、コウゲイがあれほど執着する四郎を裏切った山田を、許したというのだろうか?


幕府方と交渉するのに矢文を使ったとある。


四郎の側近くに仕える幹部格、南蛮絵師として陣中旗を描き達筆な人。


領主お抱えの、元絵師でもあった・・・


山田は爺さんに間違いなかった。


過去を隠した山田右衛門作。


パズルのピースが一個、完成した。
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