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ずっと 君を待っていた・1 

物心もつかないうんとちびのころから、何故だかぼくは「長いもの」が大嫌いだった。

嫌いと言うよりも、殆ど畏れ(おそれ)に近かったかもしれない。

どれだけ嫌いかというと、幼稚園の遠足で行った動物園の爬虫類展示室の前で、ストレス性の過呼吸で倒れたこともある。
薄れ行く意識を手放す寸前に覚えている風景は、引率の先生が、ぼくを抱えて名前を叫びながら、ひたすらおろおろしていた姿だった。

稲田久志(イナダヒサシ)。

それが、戸籍上の俺の名前。

ちびのころは女の子みたいだったせいか、昔から知っているやつは「クシちゃん」「クーちゃん」と呼ぶ。
歌手の「こうだくみ」には、似ていません。
中学からの知り合いは「ヒサシ」って呼び捨てで呼んでるから、友人関係は端から見てもすごく分かりやすいはず。
双子のお姉ちゃんがいたけど、うんと子供の頃に病気で死んでしまった・・・だから、今はひとりっ子。

「長いもの」嫌いのぼくは、運動会の綱引きのロープさえ、手に取る事は出来なかった。
あの太くて「長い」のが怖いから、いや。・・・そういって、担任を困らせたらしい。

最後尾の上級生が、身体に巻きつけて仁王立ちしているのを見て、卒倒しかけた。
ぼくには、大蛇が巻きついたように見えたから。

張りぼてだと分かっていても、歌舞伎の道成寺などただ券くれても絶対いかない。
玉三郎の女形・・・?とか、そりゃうんと綺麗だと思うけど。

一体、何のトラウマなんだろうと思って、小学生の頃、親に聞いたことがある。
その時、いつも陽気な母親が、一瞬で涙ぐんで俺を抱いた。

「ごめんね・・・」

それで、ぼんやりと思った。

『ああ、これはお母さんに聞いちゃいけないことなんだ・・・・。』

きっと何かあるのは確かだった。
でないと、こんなに激しい動悸はしないと思う。

でも理由を知るのも、本当は少し怖い気がした。
知ってしまえば、何かもう元には戻れない気がして。

「お母さん、あのね・・・」

その後に言おうとした言葉は、どこかに消えた・・・





4月に書いた作品です。
加筆、校正が多くてほとんど新しい作品を書くほど時間がかかっています。なるべくがんばりますが、時々サボっているのを見かけたら『あ、此花力尽きてる』と、思っていただきたいです。
山陰に旅行に行ってから、しばらく古代にはまっていたのです。
お昼の更新は、続く限り過去作品を読み直しながら挙げてゆくつもりです。
ただ、お昼なのであんまりBL風味が乗り切っていなくて・・・・(//▽//)← 夜のも、ぜんぜん乗っていないぞ!
アフリカゾウが雄雄しくぶつかる様子を、そばで見ているように書けるようにそのうちがんばります。←だから、自分でハードルあげるのやめなさいって。

拍手、ポチありがとうございます。
がんばれよ~!と、言っていただいているようでとてもうれしいです。    此花
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