新しいパパができました・9
まだ未成年なのに、こんなに家事の出来るやつは俺の周囲にはいなかった。
しかも澤田のやることは、どこか年寄りくさい気がする。
ハンバーグしか出来ないのかと思ったら、煮物は上手にできたりする。
・・・かと思えば、沢庵が蛇腹になってるのを見て、クリスマスの飾りみたいと騒いだりもするけど。
「ね。これ、ツリーに飾れそう?」
「におうだろ。」
少し考えれば、俺は甘えすぎだったと気がつくべきだったのに、つい楽なほうへ流れてしまってどさくさまぎれに何もかも、澤田に依存していた。
母ちゃんのお風呂は、なんでも隣の奥さんが、息子さんじゃ頼めないでしょうからと言って身体を拭きに来てくれたそうだ。
遠くの親戚より、近くの他人だね。
ご近所づきあいは、大切だよ、うん。
「柾く~ん。お風呂、沸きましたよ。先に、入っちゃって。」
ノックの後、おずおずと澤田が部屋を覗く。
気のせいか、ちょっと顔色が悪い?
ちょっと思いついて、聞いてみた。
「なあ。おまえ、学校は行かなくて良いのか?」
「まだ、全部の手続きができてないけど、いずれ柾くんの学校に編入するつもり。」
転入生は基本的にとらない学校だから、編入試験難しかったはずだけどと思う。
「前の学校はどこ?」と聞いてみた。
「京都の州難高校です。」
「へぇ・・・すっげぇとこじゃん。」
日本有数の、難関進学校の名前をさらりと告げて澤田は笑った。
「小学校からのエスカレーターだから、実力じゃないよ。」
「亜由美さんのギブスが取れたら、柾くんと一緒に行くから待っててね。」
その時、色々話をするチャンスだったのに俺は結局、気恥ずかしくてまともな会話もしなかった。
じっと見つめられると、人気アイドルの前に出た女の子のように、真っ赤になったかもしれない。
「じゃ、俺、風呂行くわ・・・」
「あ。柾くん。お背中流してあげましょうか?」
「・・・言っておくけど、入ってきたら湯船に沈めるからな。」
「柾くん。スキンシップ・・・やなの?」
だから、そこで悲しそうな顔するのやめろよ。
この年で、スキンシップっておかしいだろ?
何か、俺がすごい意地悪なやつみたいだ。
それなら、いっそジェルと泡で洗ってくれるか?と言ってやろうかと思ったが、素直にうんと頷きそうで怖い。
余りにうぶで清楚な風情なのでそんな軽口も叩けず、澤田をそこに残して俺は無言で部屋を後にした。
あんな見た目で、一緒に風呂なんぞに入ったら俺の正直な本音(下半身)が下手すりゃ、暴走してえらいことになるかもしれない。
母ちゃんが綺麗なものには目がないのは知っているけど、きっと俺も遺伝的にそうだと思う。
それにしても、黙っていれば恐ろしく綺麗なこいつのことは、この先どうなるんだろう・・・
母ちゃんの本音も見えないし、こいつは今ひとつ掴みどころがない。
どんな育ち方をしたんだか、どこか浮世離れした澤田のことが気になっていた。
あんな顔で、あいつは普通に暮らせてきたんだろうか。
頭が良いのは分かったけど、今ひとつ生活感もなく、どこか危うい印象がぬぐえない。
作り物のように、整った顔というのはそれだけで、だれかの危険な嗜虐心を煽る。
それは今日、学校にほんの少し顔を出したときの、周囲の反応でもわかるけど、あいつは自分を分かっているんだろうか。
どこか影の薄い澤田がどうこうじゃなく、たぶんあいつは一人でいるのはよくない気がする・・・泣かせちゃおうかなぁ・・・と、思う俺のこの凶暴な気分が危ない。
台所で、一生懸命慣れない家事をする澤田が、気になって仕方がなかった。
これは、母ちゃんの結婚相手として・・・?
それとも他の理由・・・?
俺は湯船の底で、答えを探すように沈んだ。
********************************************
何となく、二人なじんで来た気がします。
詩鶴くんには色々、ありそうです。
いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
明日も、こけないようにがんばります。 此花
しかも澤田のやることは、どこか年寄りくさい気がする。
ハンバーグしか出来ないのかと思ったら、煮物は上手にできたりする。
・・・かと思えば、沢庵が蛇腹になってるのを見て、クリスマスの飾りみたいと騒いだりもするけど。
「ね。これ、ツリーに飾れそう?」
「におうだろ。」
少し考えれば、俺は甘えすぎだったと気がつくべきだったのに、つい楽なほうへ流れてしまってどさくさまぎれに何もかも、澤田に依存していた。
母ちゃんのお風呂は、なんでも隣の奥さんが、息子さんじゃ頼めないでしょうからと言って身体を拭きに来てくれたそうだ。
遠くの親戚より、近くの他人だね。
ご近所づきあいは、大切だよ、うん。
「柾く~ん。お風呂、沸きましたよ。先に、入っちゃって。」
ノックの後、おずおずと澤田が部屋を覗く。
気のせいか、ちょっと顔色が悪い?
ちょっと思いついて、聞いてみた。
「なあ。おまえ、学校は行かなくて良いのか?」
「まだ、全部の手続きができてないけど、いずれ柾くんの学校に編入するつもり。」
転入生は基本的にとらない学校だから、編入試験難しかったはずだけどと思う。
「前の学校はどこ?」と聞いてみた。
「京都の州難高校です。」
「へぇ・・・すっげぇとこじゃん。」
日本有数の、難関進学校の名前をさらりと告げて澤田は笑った。
「小学校からのエスカレーターだから、実力じゃないよ。」
「亜由美さんのギブスが取れたら、柾くんと一緒に行くから待っててね。」
その時、色々話をするチャンスだったのに俺は結局、気恥ずかしくてまともな会話もしなかった。
じっと見つめられると、人気アイドルの前に出た女の子のように、真っ赤になったかもしれない。
「じゃ、俺、風呂行くわ・・・」
「あ。柾くん。お背中流してあげましょうか?」
「・・・言っておくけど、入ってきたら湯船に沈めるからな。」
「柾くん。スキンシップ・・・やなの?」
だから、そこで悲しそうな顔するのやめろよ。
この年で、スキンシップっておかしいだろ?
何か、俺がすごい意地悪なやつみたいだ。
それなら、いっそジェルと泡で洗ってくれるか?と言ってやろうかと思ったが、素直にうんと頷きそうで怖い。
余りにうぶで清楚な風情なのでそんな軽口も叩けず、澤田をそこに残して俺は無言で部屋を後にした。
あんな見た目で、一緒に風呂なんぞに入ったら俺の正直な本音(下半身)が下手すりゃ、暴走してえらいことになるかもしれない。
母ちゃんが綺麗なものには目がないのは知っているけど、きっと俺も遺伝的にそうだと思う。
それにしても、黙っていれば恐ろしく綺麗なこいつのことは、この先どうなるんだろう・・・
母ちゃんの本音も見えないし、こいつは今ひとつ掴みどころがない。
どんな育ち方をしたんだか、どこか浮世離れした澤田のことが気になっていた。
あんな顔で、あいつは普通に暮らせてきたんだろうか。
頭が良いのは分かったけど、今ひとつ生活感もなく、どこか危うい印象がぬぐえない。
作り物のように、整った顔というのはそれだけで、だれかの危険な嗜虐心を煽る。
それは今日、学校にほんの少し顔を出したときの、周囲の反応でもわかるけど、あいつは自分を分かっているんだろうか。
どこか影の薄い澤田がどうこうじゃなく、たぶんあいつは一人でいるのはよくない気がする・・・泣かせちゃおうかなぁ・・・と、思う俺のこの凶暴な気分が危ない。
台所で、一生懸命慣れない家事をする澤田が、気になって仕方がなかった。
これは、母ちゃんの結婚相手として・・・?
それとも他の理由・・・?
俺は湯船の底で、答えを探すように沈んだ。
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何となく、二人なじんで来た気がします。
詩鶴くんには色々、ありそうです。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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明日も、こけないようにがんばります。 此花
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