新しいパパができました・7
昼休み。
澤田が持ってきた弁当を開けて、俺は絶句していた。
めまいすら感じる・・・
「うわ~、なんだ、これ。」
「あの野郎・・・嫌がらせか。」
朱里が覗き込んで、爆笑していた。
何か、動物を模したらしいそれは、弁当箱の中央にでんと座りうずらのゆで卵を半分に切った目が、こっちに向かってガンを飛ばしていた。
「キャラ弁かな?何か、すごいがんばって作ったのがよく分かるね。」
「こんなので分かるのか?」
「これまで、数多くの女子に弁当を貢がれた俺に言わせると、この一生懸命な不器用さは最高に愛おしいね。」
「食えるのか、これ。見た目、ひどいぜ。」
ためらっていると、横合いから朱里がぱくりと一口食って、けっこう旨いぜと言った。
「食ってやれよ。おまえのために一生懸命作ったんだぜ、あの子。いじらしいじゃないか。」
指先に新しい絆創膏が、いくつも貼ってあったのを、見なかったのかと朱里が言う。
「ああ。」
こっちは、野郎の裸エプロンに気をとられてそれ所じゃなかったんだよっ。(心の声)
怪獣みたいなハンバーグらしきものは、中まで火が通っていない赤いところがあったけど、それ以外は不思議とまあまあ味はよかった。
付け合せのにんじんのグラッセはバターで甘く煮てあって、これは正直好きな味だ。
朱里が言うには、横に隠し包丁が入ってるから味がよくしみて、冷めても美味しいということだった。
「愛だな。」
いらね~・・・
そういえば、あいつ・・・昨日は俺と挨拶するつもりだったと思うけど、いきなり怪我人になった母ちゃんの世話で大変だろうなぁ・・・
しかも、連れ子の俺の機嫌まで必死で取って・・・連れ子・・・?うわ~・・・冗談じゃないぞ。
「俺、これを食ったら、何か感想言わなきゃならないんだろ?なんていえば良い?」
「ありがとう、がんばったね。おいしかったよ。とかでいいんじゃないか?」
たらしの朱里くん、その台詞はきっと女の子相手にだったら、手をとって言えると思うよ、俺も。
だけど、あいつには無理っ。
思考回路が、普通じゃない。
****************************************
帰宅して、台所でレシピ本を片手に悪戦苦闘している澤田の横を通って、空の弁当箱を置いた。
「あ。お帰りなさい。」
学校へ来て泣いてしまったことを意識して(たぶん、すごく気にして)、明るく振舞う澤田はどこかいじらしい。
そして、こちらを向いた、あの大きな瞳は、俺が弁当の感想を言うのをきっと待っている。
「あ・・・のさ、オオアリクイの形のハンバーグ?旨かった。ちょっと生の所もあったけど。」
「(´・ω・`) ・・・ぺんぎん・・・。」
「ぺんぎん・・・?あっ、ごめん、てっきり俺、オオアリクイか、ナウマンゾウか、マレーグマかと・・・。」
想像通り、その場にしゃがみこんで澤田が泣いた。
泣かせるつもりは無かったのに、失敗した。
「そん・・・な、マニアックなもの、作るわけないじゃない・・・柾、くんのいじめっこ。」
「がんばったのに~・・・え~ん・・・」
そりゃ、確かにそうだよな。
ここは、俺が悪い。
********************************************
柾くん、どうしていいかわからず困っています。
いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
明日も、こけないようにがんばります。 此花
澤田が持ってきた弁当を開けて、俺は絶句していた。
めまいすら感じる・・・
「うわ~、なんだ、これ。」
「あの野郎・・・嫌がらせか。」
朱里が覗き込んで、爆笑していた。
何か、動物を模したらしいそれは、弁当箱の中央にでんと座りうずらのゆで卵を半分に切った目が、こっちに向かってガンを飛ばしていた。
「キャラ弁かな?何か、すごいがんばって作ったのがよく分かるね。」
「こんなので分かるのか?」
「これまで、数多くの女子に弁当を貢がれた俺に言わせると、この一生懸命な不器用さは最高に愛おしいね。」
「食えるのか、これ。見た目、ひどいぜ。」
ためらっていると、横合いから朱里がぱくりと一口食って、けっこう旨いぜと言った。
「食ってやれよ。おまえのために一生懸命作ったんだぜ、あの子。いじらしいじゃないか。」
指先に新しい絆創膏が、いくつも貼ってあったのを、見なかったのかと朱里が言う。
「ああ。」
こっちは、野郎の裸エプロンに気をとられてそれ所じゃなかったんだよっ。(心の声)
怪獣みたいなハンバーグらしきものは、中まで火が通っていない赤いところがあったけど、それ以外は不思議とまあまあ味はよかった。
付け合せのにんじんのグラッセはバターで甘く煮てあって、これは正直好きな味だ。
朱里が言うには、横に隠し包丁が入ってるから味がよくしみて、冷めても美味しいということだった。
「愛だな。」
いらね~・・・
そういえば、あいつ・・・昨日は俺と挨拶するつもりだったと思うけど、いきなり怪我人になった母ちゃんの世話で大変だろうなぁ・・・
しかも、連れ子の俺の機嫌まで必死で取って・・・連れ子・・・?うわ~・・・冗談じゃないぞ。
「俺、これを食ったら、何か感想言わなきゃならないんだろ?なんていえば良い?」
「ありがとう、がんばったね。おいしかったよ。とかでいいんじゃないか?」
たらしの朱里くん、その台詞はきっと女の子相手にだったら、手をとって言えると思うよ、俺も。
だけど、あいつには無理っ。
思考回路が、普通じゃない。
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帰宅して、台所でレシピ本を片手に悪戦苦闘している澤田の横を通って、空の弁当箱を置いた。
「あ。お帰りなさい。」
学校へ来て泣いてしまったことを意識して(たぶん、すごく気にして)、明るく振舞う澤田はどこかいじらしい。
そして、こちらを向いた、あの大きな瞳は、俺が弁当の感想を言うのをきっと待っている。
「あ・・・のさ、オオアリクイの形のハンバーグ?旨かった。ちょっと生の所もあったけど。」
「(´・ω・`) ・・・ぺんぎん・・・。」
「ぺんぎん・・・?あっ、ごめん、てっきり俺、オオアリクイか、ナウマンゾウか、マレーグマかと・・・。」
想像通り、その場にしゃがみこんで澤田が泣いた。
泣かせるつもりは無かったのに、失敗した。
「そん・・・な、マニアックなもの、作るわけないじゃない・・・柾、くんのいじめっこ。」
「がんばったのに~・・・え~ん・・・」
そりゃ、確かにそうだよな。
ここは、俺が悪い。
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柾くん、どうしていいかわからず困っています。
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明日も、こけないようにがんばります。 此花
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