2ntブログ

新しいパパができました・18 

詩鶴の本当の父ちゃんは、ここにいる澤田天音の父ちゃんと同じやつで、でも戸籍上の父親はベッドにつながれて器械で息をしている男だった。

きちんとした家庭を持ちながら、他の愛も欲しかった欲張りな伯父というやつ。
全ての不幸は、あの男から始まったということなのか。
でも、あいつがいなかったら詩鶴も存在しなかったわけで・・・

その詩津さんという詩鶴の母親と、瓜二つなのがきっと詩鶴の不幸だった。
親に似ている不幸なんて、俺は考えたことが無い。
どこか作り物めいた、詩鶴の綺麗な顔がなんだか気の毒で仕様が無かった。
もっと普通の・・・たとえばどこにでもいるような面だったら、きっと詩鶴は泣かずにすんだ気がする。

「詩鶴、帰ろう。」

全てのややこしいことから、逃げ出すように俺は詩鶴を引っ張った。
この場所から、詩鶴を連れ帰ることが俺に与えられた任務だった。

「だめだよ、柾くん。パパはお仕事が・・・」

南、いらいらするっ!

「仕事って何だよっ!詩鶴は、仕事も持っていない学生だろ?明日も学校有るんだから、さっさと帰るぞ!」

表情を変えないまま詩鶴は、鏡面磨きされた金属のように光る濡れた目を向けた。

「おばあさまの・・・母方の祖母の、一周忌があるんだ。ぼくには、かけがえの無い大切な方だったんだ。」

「だから・・・ぼくは、ここに帰ってきたんだ。父にも会いたかったし。天音さんがぼくを心底憎んでいるのも知っているけど、いつかは、こういうけじめもつけないといけないから。」

苦しそうな詩鶴の表情を眺めても、天音というやつは顔色を変えたりはしなかった。
詩鶴がいうように、あいつは詩鶴を憎んでいるのか・・・?
父親を奪った女の息子だから?
でも、自分の血がつながった異母弟と言うことになるんじゃないのか・・・?
見えない話が多くて、頭が爆発しそうだった。

「一周忌って、いつなの?」

「今日、これからお墓に行くんだよ。柾くんも来て。おばあさまに、きちんとご挨拶して欲しいから。」

**********************************

詩鶴のおばあさんの墓は、これは本当に驚いたのだけど、うちの父ちゃんの菩提寺だったんだ。

「ここ・・・。」

俺の手を、ぐいぐいと引っ張って詩鶴はおばあさんが眠る場所へと案内した。
ちらと、澤田天音に目を振ると片手を上げて、行って来いというふうに合図をした。

「患者が待っているのでね、又、後で話をしよう。」

結局のところ、こいつがいいやつかそうでないのか、分からないままだ。

爽やかな秋の気配は、もう消えうせて風が冷たくなっていた。

詩鶴のおばあさんと、うちの父ちゃんの眠る場所は、庭園樹木葬を行う公園の一角にある。
樹木葬というのは墓石などをおかず、直接土中に遺骨を埋葬して自然に帰し、目印に樹木を墓標にする葬送方法だ。
狭い墓の中に父ちゃんを押し込めるのは悲しいと言って、母ちゃんは桜の木の根元に父ちゃんの遺骨を埋めた。
桜の木の根元に、小さなさらしの袋に父ちゃんのお骨を入れて、母ちゃんは父ちゃんといつか土に返りたいと言った。

「京都の桜の木と、藤棚のあるところに決めたの。柾、父ちゃんはああ見えて、結構繊細な寂しがり屋だったからさ、景色の綺麗なところにしたよ。」

俺はせっかくだから、父ちゃんの眠る桜の木の下の、小さな陶板のプレートを撫でた。
母ちゃんは祥月命日には必ず一人で、デートだと言って出かけていたけど、きっと父ちゃんに会いに来ていた。

「ここに来るってわかってたら、父ちゃんに酒でももってきてやればよかったな・・・。」

詩鶴は俺の横でしゃがみこんで、父ちゃんの眠る場所に向かって、長いこと手を合わせていた。
二人にとって大切な人が眠るこの場所で、母ちゃんと詩鶴は出会ったのだという。

「柾くんには、言っていないことがいっぱいあって、ごめんなさい。でも、一人で泣かない・・・でね・・・。」

だから、泣いてるのはいつも詩鶴で、俺じゃないって。

母ちゃんが一人、余りに寂しくて父ちゃんに文句を言うために墓参りに来たとき、詩鶴に出会ったのだそうだ。
詩鶴は、たった一人の味方を失って呆然と雨の中、立ち尽くしていたらしい。

その手には真新しいカッターナイフがあり、雨に打たれる詩鶴の足元には、血溜りが出来ていた。

*********************************

進展が無くて、説明ばっかりになっています。
ちょっと、いかんなぁ・・・

これまでお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチもありがとうございます。
ランキングに参加しています。
此花、まあ今日もこけずに頑張ったじゃないと思われましたら、どうか一つよろしくお願いします。
くるくる回って喜びます。ぺこり・・・(*⌒▽⌒*)ノノ♪
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ


今日の午後から、二重カウントを止めることにしました。
余り、気にしないで気長に書こうと思います。
どうぞよろしくお願いします。
関連記事

4 Comments

此花咲耶  

NoTitle

Rink さま

実は、一番どう動かそうかと頭抱えている人物です。
此花は単純ですから、表向き理性があってその実、悶々としている人は、ちょっと書くのは苦手かもしれません。
説明ばかり続くので、何か事件を起こしたいです。
・・・純情可憐だから、無理かも~。

きゃあ。・゜゜・(/▽\*)・゜゜・それ、誰~っ?
エチ場面が遠いです。(´・ω・`)

2010/12/05 (Sun) 15:18 | REPLY |   

Rink  

天音さんが一番恨んでるのか

そうですよね。
お父さんが、実の母より愛していた詞津さんの子供が、詩鶴くんなんだから。
健気に耐えてるんですね。
がんばれ詩鶴くん!

2010/12/05 (Sun) 13:55 | REPLY |   

此花咲耶  

Re: 「新しいパパ…」

鍵付きコメントnさま

・゜゜・(/▽\*)・゜゜・きゃあ。毎日楽しみに~!
此花、嬉しくて大喜びです。
励みになります。こけそうだけど頑張ろうと思います。

携帯から読んでくださっているんですか。ありがとうございますっ!
ランキングはバナーを押していただけると反映するものだと思っていました。
(´・ω・`) ごめんね・・・今度調べておきます。

二重カウントって言うのは(分かるのでおお張り切り~)お越しになった方が来てくださるたびに、カウントされるのと一日に何度お越しになっても同じアドレスの方は一回しかカウントされないと言う違いです。
此花は、いっぱい書くので何度も覗きに来てくださる方が多くて、カウンターが読み手様×10くらいカウントされているんです。
だから、どうしたのかしらと心配されないように書いておきました。
回数ではなく、今日、来てくださった方の人数だけが表記されるようになります。

実はパソコン不慣れで、指三本で書いてます。
コメントありがとうございました。頑張ります!(*^ー^)ノ


2010/12/04 (Sat) 23:59 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2010/12/04 (Sat) 21:43 | REPLY |   

Leave a comment