最愛アンドロイドAU 16
「でも、手術前だからなぁ……。見えないところならって言っても……ないんだなよぁ。」
逡巡する音羽に、ゆっくりとボタンを外すあっくんは、音羽の前から去ったのち吸痕が消えてゆくのが悲しかったと語った。
「自分でちゅっとしようにもね、音羽は……届かないところにいっぱい印を付けたから、駄目だったの。腕の内側だけ、ほら、ちょっとだけ薄く残っているでしょう?でもね、ここもモデルだったらこういうのは駄目って言われて、いつもコンシーラー・ファウンデーションで隠してた。音羽が遠くなるようで、すごく悲しかった。」
「そうか。」
「しばらく仕事にはならないでしょう……?だから、あっくんに音羽のマークを付けて。」
あっくんが胸を開いて、真白い肌を晒した。
そっと触れると吸い付くような、さわり心地の良い肌だった。懐かしいような気持ちで、音羽は唇を落として、首筋にちゅっ……と音を立てた。そのままいくつか胸元にも紅い花が散る。
空気に晒されて色づく木の実のように、薄い胸に紅い実が転がった。
「あっ……ん。」
「あっくん。これまで恋人はいなかったの?」
「そんな……音羽は、ずいぶん意地悪だ。ぼくはひよこの時から、ずっと音羽だけが好きだったのに。日本を離れてもいつも音羽のことだけ考えていたんだよ。」
「あっくん、それは単なる刷り込み(インプリンティング)だ。で……?あっくんがキスまで許した、泡沫の恋人は何人いたんだい?」
「う…キス……は、17人くらい……。」
「そう。じゃあパンツを脱いだのは?」
「8人……。」
「みんなに見せちゃったんだ。」
「でも体は許しても、心は許してないよ。本当だよ。ぼくの初めての人は音羽だったし、あの……本当にに身体をつなぐセクスは誰ともしていない。あの……、それにモデルの舞台裏ってみんな裸で走り回ってるし……。」
音羽は心底笑った。きっと本当なんだろう。目元を朱に染めて、音羽に嫌われないように必死に言い訳するあっくんはとてもかわいかった。
毎日涙ぐんでしょんぼりしていたほわほわ頭のひよこは、今は立派に成長して一人前のモデルとして活躍していた。音羽の背中にしがみついて、涙を我慢していたみにくいあひるの子はもういない。薄く筋肉の乗った細い肢体は、限りなく妖艶で滑らかにしっとりとした肌のせいか、性を感じさせない不思議な生き物のようにさえ見える。
時間の許す限り……と言っても、ほんの数時間しかなかったのだが、音羽とあっくんは忙しなく愛し合った。
指を絡め、愛撫を受けながら長く深く口腔を蹂躙する口づけに、あっくんは「あふっ、音羽……気持ちいい……」と何度もつぶやく。
唾液のこぼれた胸に指を這わせ、脇をくすぐり下肢を探ると、ほんの少し芯を持って勃ちあがった来たあっくんの持ち物が揺れた。そっと握り締めると、声に甘いものが混じってくる。
「んっ……。」
「あはは……あっくん。やっぱりありえないぱんつ、穿いてるのか。」
「だって……音羽が最初に笑ってくれたから……。それに、今はこのぱんつで良かったって思っているでしょう?」
「思う。脱がせる手間が省けた……。今は、このデザインが優れものだってわかる。個人的に優秀デザイン賞を授けたいくらいだ。面倒な工程が省けたね。」
シングルの狭い寝台に重なって、音羽はあっくんの下肢を眺めた。ありえないデザインのぱんつから覗く露を戴いた鈴口の先端を吸い上げる。同性同士、感じるところを外すはずはなかった。つんと固く尖りきった胸を、きつく摘み上げた。
脂肪の弾力の無い、物足りなさが却って音羽の気持ちを煽る。
いつからだろう、恋愛の対象が女性で無いと気付いたのは……。
この子に出会うために、生まれてきたのだと思った。
「あぅ……、お、音羽……そこは、や……。」
やわやわと双球を揉みあげながら、咥えたまま舌を絡めて刺激すると、音羽の下のあっくんが小さくかぶりを振って、シーツに涙が散った。たった一度だけ音羽を受け止めた後蕾は、あの日と同じように頑なに指の侵入を拒み、あっくんは堪らず小さな悲鳴をあげた。
「やっ……!ううっ……。」
音羽の胸に手を当てて、必死に突っ張ろうとする。一本の指の先端が入ったきり、抜き差しならない状態に音羽は手こずりながらも、楽しんでいた。張りつめた腿で音羽を挟み、あっくんは逃げようとする。
唾液を絡めゆっくりと抜き差しされる指先には、やがてほんの少し馴染んで抵抗の無くなった後孔の肉襞がまとわりついてきた。最奥にきっとあっくんの跳ねる場所があるはずだが、今の音羽は決して急がなかった。
あっくんがとろりと少量吐き出した薄い精液を、潤滑油代わりに塗りつけて、決して自然に濡れることの無いきつい場所に、音羽は背後からゆっくりと侵入してゆく。
逃げるあっくんの腰を抱え、薄い膜をこじ開けるように押し当てたまま手を回し、背後から扱くと悲鳴をあげた。
「ああぁーーーーーッ……音羽。音羽……。だ……め。出ちゃう~っ。」
「いいよ。出して。いい気持ちになって、あっくん。」
「あ……ぁんーーーっ。」
小さく悲鳴のように洩れる声を、枕に吸わせてあっくんは達かないようにがんばったが、長くはもたなかった。
音羽の手の甲に爪を立てて、あっくんはひくひくと痙攣したように身を縮め、吐精した。
指先にかかった少量の白い精すら愛おしいと思う。
「困ったな。あっくん、やっぱりアンドロイドAUは、高性能のセクスドールなのかもしれないよ。もう、手放せそうにない、困ったなぁ。」
「音羽。愛してね……ずっと、傍にいてね。」
腕の中のセクスドールは頬を染めて、この上なく扇情的な笑みを送った。
誰よりも愛おしい恋人は、傷の無い身体を見せたくて音羽に会いに来たのだと言う。兄を救うためならと、モデルの仕事を失ってもドナーになりたいとデリンジャー博士に直訴したあっくん。
幾つもの謎が一度に全部解けて、あっくんと音羽は世界で一番幸せになった。
ナデナデ(o・_・)ノ”(*/д\*)
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